2021年12月1, 2日にヘルシンキ・エキスポ&コンベンション・センターで開催されたSlush 2021。同カンファレンス、Day1のメインセッションとして、Slush100のセミファイナリストに選ばれた20社によるピッチコンテスト「Slush100」が行なわれ、ファイナリストに選ばれた3社が発表された。
参考記事:Slush2021:ピッチコンテスト・セミファイナル出場20社紹介
Day2全てのセッションの最後にSlush100のファイナリスト、「Vitroscope」「Hormona」「Helppy」の3社がピッチを行った。本記事は各スタートアップのピッチ内容を審査員からの質疑への応答と併せて紹介する。
画像提供:Esa-Pekka Mattila, Slush2021
「Vitroscope」は、生物学者向けの実験支援ツールを開発しているスタートアップである。特許出願中のプラットフォームにより、研究者は、あたかも人間の患者の血流を見るかのように、生きた細胞をライブで観察することができる。このプラットフォームには、細胞の健全な環境を維持するために必要なすべての技術が含まれており、データはクラウドにライブでストリーミングされている。同社のテストユーザーは、従来の生物学実験では観察できなかった4つの新しい創薬ターゲットの可能性をすでに発見している。
Q. 市場戦略や販売戦略をどのように考えていますか?
A. 医薬品の市場は非常に保守的です。医薬品開発の出発点は大学における博士課程やポスドクの学生の研究であり、彼ら彼女らが私たちの最初の顧客ターゲットです。将来的には、トップ20の製薬会社と共同でのワークフローの確立や、例えばマウスモデルの廃止といったような製薬会社の長期的な戦略に合致するような議論を行うことも視野に入れています。
Q. 毒性を判断したり、特定の薬剤の有効性を判断したりするために、どのようなデータソースを利用しているのでしょうか?
A. 今は外部の情報源は一切使わず、自分たちで開発したデータに基づいてモデルをトレーニングしています。
画像提供:Esa-Pekka Mattila, Slush2021
「Hormona」は、ホルモンバランスのトラッキングアプリを提供しているスタートアップである。独自のテストとアプリにより、全ての女性が知っておくべき重要なホルモンバランスの情報の追跡、洞察、アドバイスをリアルタイムで提供可能なプラットフォームを提供している。
同社によると、80%の女性がホルモンバランスの乱れに悩んでおり、また75%以上の女性が自身のホルモン状態について理解していないと感じているという。一方、ホルモンバランスは、エネルギーの代謝や血圧、体温、メンタルヘルスや体の健康に影響を与え、実際に45種類もの症状がホルモンバランスと関連している(同社調べ)。具体的に、ホルモンバランスの乱れを放置すると、不安障害や自律神経失調症のような病気に発展してしまう恐れや、PMS(月経前症候群)や生理不順、不正出血、不妊、更年期障害などの婦人科系の疾患、抜け毛やニキビ、性欲低下などといった症状として現れることもある。
そこで同社は、科学的なデータに基づいたアプローチでホルモン状態をトラックできる環境を整備し、また正しい知識を提供することで、女性の健康課題を解決しようとしている。
Q.正確なところ、御社のテストでは何を計測しているのでしょうか?
A. 私たちのテストでは、エストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモンの3つの主要なホルモンを測定することで、女性の健康、精神状態を把握することを目的としています。
Q. 女性はどれくらいの頻度で測定を行うのですか?
A. 週に1回の測定を推奨しています。私たちのテストにより、体内で何が起こっているのか、どのように生活を最適化すればよいのかなど、十分な洞察と予測を得ることができます。
画像提供:Esa-Pekka Mattila, Slush2021
「Helppy」は、高齢者介護問題の中でも特に、家族介護の問題に焦点を当てて解決に取り組んでいる。同社によると、ヨーロッパでは高齢者介護が逼迫しており、看護師は700万人不足しているという。また、介護分野におけるイノベーションが限られていることと、小規模なプレーヤーによる非常に断片的な市場になっていることで、従来の高齢者介護のシステムとモデルはその拡張性に乏しいという課題に直面している。そこで「Helppy」は、書類作成から、介護、家事、買い出しまで、家族の視点から高齢者介護を再設計し包括的なサポートを提供している。
Q.販売先についてもう少し詳しく教えてください。
A. 販売先は、民間企業と政府機関です。私たちのようなスタートアップで、迅速にスケーリングしたい場合、まずカスタマードリブンに開発することができる民間企業への展開を試みることになります。私たちも同様の戦略をとっていますが、今後は政府機関にもコンタクトをとっていく予定です。
Q. 様々な業務のうち、どの部分を自社で行なっているのですか?
A. 私たちはプラットフォームモデルを採用しています。何百人もの看護師、理学療法士、足専門医、在宅医とパートナーシップを結び、高品質なサービスを提供できるように、各分野のプロフェッショナルを集めて管理しています。
Q. 実際にサービスを利用する主体になるのは誰かという点についても、少しお話いただけますか。 A. 実際にサービスを利用するのは、個人の開業医と、企業の両方を想定しています。また、オフラインとオンラインの部分を統合することも、私たちの重要な提供価値です。
また、高齢者介護のためのIoTプロバイダーやコンテンツプロバイダーはたくさんありますが、多くのIoTプロバイダーが存在するため、誰かがそれらを調べて、どれがベストなのか、どのように統合すればいいのかを検証する必要があります。例えば、患者の家族は介護に必要な10個のセンサーの中からどれを選ぶのが最適か分からないからです。
ピッチコンテストSlush100のファイナルを制し、優勝を勝ち取ったのはフェムテックスタートアップ 「Hormona」だった。SUNRYSEによる「Hormona」への独占インタビューはこちら。