環境リスクを意思決定に織り込む重要性の認識が政府機関にも広がり、考え方が変わりつつある。
投資ポートフォリオ構築において、環境リスクは主要な考慮事項となっている。現在、世界の大手投資家の中には、ESGE(nvironmental, Social, and Corporate Governance)の要素を投資戦略に組み込むという大きな変化を遂げているものもある。これにより、より強固なポートフォリオを構築し、気候変動による悪影響を受けやすい企業を回避しようとしているのだ。
パンデミックによって資本の分配が根本的に代わり、また気候問題などの取り組みに注目が集まる中、政府機関は政府や民間企業の財務上の意思決定に環境リスクを織り込むことの重要性を認識するようになり、考え方が変わりつつある。
また、気候変動により政府の支出が増大し、国債の価値に影響を与える可能性を認識する資産家も増えている。例えば、気候変動とそれに伴う規制強化への関心が高まり、多くの国が二酸化炭素の排出量削減計画を立てている。
国連の試算によると、このような事業には30年間で年間約1兆ドルの投資が必要でありこの支出の大部分は政府によって賄われる。
このような問題の重要性が認識されているシンガポールでは、持続可能な投資に焦点を当てたさまざまな取り組みがなされている。
シンガポール通貨監督庁(MAS)は、近々、20億米ドル(27億シンガポールドル)の資金を、強固なスチュワードシップポリシーを持つ厳選されたファンドマネジャー集団とともに運用することを公表した。これにより、環境フットプリントの追跡と高い投資収益率が期待できるポートフォリオ形成が促進される。
しかし、中央銀行や政府だけでは気候変動の問題を緩和することはできない。持続可能な未来の確保は複雑な課題であり、政府や民間企業、投資家、個人が共有する未来のために一丸となって協力し合う必要があり、ここに資本の未来がある。
参考記事:アグリテック企業が気候変動から農家を守る方法【農業とテクノロジー】
脱炭素化やその他のイノベーションを活用し、ステークホルダーに対して価値を創造しながら、食料や廃棄物、エネルギー、低環境負荷の輸送手段などの分野に投資して地球に貢献することは投資コミュニティにとって不可能なわけではない。しかしその道のりは決して平坦ではない。
投資家は、より洗練された気候変動リスク評価と管理の技術、また従来とは異なるデータソースを活用し、複数のポートフォリオにまたがる気候変動リスクをより理解する必要がある。例えば、衛星画像や洪水ハザードマップ、干ばつのデータ、大気の質のデータなどの代替データは、より多くの場で取り入れられていくだろう。
これらの問題における知見を知らしめるため、シンガポール投資管理協会(IMAS)とブルームバーグは、2021年3月9日と10日の2日間にわたり、バーチャル会議を開催した。
ここでは影響力のある投資家やオピニオンリーダー、テック企業が集結し、資本の将来を議論し、資産管理業界の状況を根本的に変える新たな革新と課題に迫った。
GIC債券部門チーフ投資オフィサーのLiew Tzu Miは以下のように語る。
気候リスクデータを利用する際には、3つの重要な課題があります。1つ目は、データの入手可能性と質、一貫性、2つ目は、GICの多様な資産基盤を考慮したポートフォリオ全体レベルでのデータ集約、3つ目は、気候変動予測が複数の資産タイプにおいて期待される収益にどのような影響を与えるか、です。
IMASは、2019年にデジタル・アクセラレーター・プログラム(DAP)を立ち上げた。ここでは、アクセラレーター・パートナーと共同で、資産運用業界における様々な課題解決のためのプラットフォームをフィンテック業界に提供している。
DAPでは、主要課題に取り組み、現実的なデジタルソリューションを提供しようとしている。これらにより、資産運用会社は優位性あるサービスを提供しながらも、コスト削減や投資リターンの向上を実現できる。
今回のDAPの提起した問題には、ESGやテクノロジー、データ収集など、さまざまなテーマが含まれる。 しかし、これらの取り組みは、私たちが一丸となってできることのほんの一部でしかない。
参考記事:An open letter to cleantech startups on climate change
私たちは、ESGに対する意識と能力を高め、これらの問題に取り組む新しく革新的な技術的ソリューションを育て、そしてより持続可能で良い未来を共に創造するために資本を誘導する必要がある。
表題画像:Photo by Markus Spiske on Unsplash (改変して使用)