アグリテック企業が気候変動から農家を守る方法【農業とテクノロジー】
アジアにおける4億5,000万人の零細農家は、地域で消費される食料のおよそ80%を生産しており、増え続ける人口に対応し、栄養価の高い食料を供給する必要性に迫られている。
しかし、気候変動による不規則な天候の影響により、農家は拡大する需要に追いつくことが難しくなっている。インドにおいては、農業にとって必要不可欠となる地下水の供給量が数年間減少し続けている。
さらには、不安定なモンスーンシーズンや干ばつとも相まり、何億人もの人々の生活と食の安全が脅かされつつある。特に、東南アジアの農家は熱帯地域であるため、降水パターンの変化や気温の上昇に対して弱い立場である。
作物保護製品とAIなどのデジタルツールを組み合わせることにより、農家が気候変動の課題を克服し、世界の食料安全保障に貢献できる可能性がある。
なぜテクノロジーが重要となるのか
1960年代の「緑の革命」以降、植物科学の発展により作物保護製品が開発され、農家は害虫や病気に対応し、干ばつや気候変動による洪水などの困難な状況下においても農業を続けることが可能となった。現在では1960年と比較し、わずか13%の土地で150%の食料を生産している。
作物保護製品がなければ、米やトウモロコシの年間収穫量の40%が失われ、果物や野菜においては50～90%が損失するといわれている。
そこで、農業業界では、農家支援のためのAI開発が進んでいる。農家がより健康的な作物を収穫するために、害虫の駆除や土壌及び生育状況のモニタリング、農家のためのデータ整理、作業支援、フードサプライチェーン全体における農業関連の業務改善など対象は幅広い。
気候変動は、巨大洪水や厳しい干ばつ、熱波、激しい暴風雨を引き起こし、大きな脅威となっている。農業を真に持続可能なものにするためには、土壌の健全性を高め、水や肥料の使用を適切に管理する再生可能な農法が必要である。
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AIと植物科学分野への継続的な投資は、持続可能なソリューションとなる新しい作物保護製品の開発を促進し、農家のニーズを満たすことができる。
従来、農業研究開発は公的機関が担ってきた分野であるが、多くの国においては予算縮小政策のためにその発展が鈍くなっている。このギャプを埋めるために、民間企業の活躍が顕著なものとなっている。
現在においては、農業改革への民間投資により、生産性を大幅に向上させる新技術や生産技術が生まれている。
アグリテック企業の開発をどのようにサポートするのか
アグリテックソリューションの促進は、Syngentaの持続可能性の目標である「グッドグロースプラン」の重要な基盤のひとつである。同プランではアグリテック企業の開発を促進し、作物保護製品の改善のための20億ドルの投資を通じて、農家が気候変動に適応し、その影響を緩和することを目指している。
この投資の一環として、Syngenta Crop Protectionは2020年に世界的な生物製剤企業であるValagroを買収した。Valagroは植物の栄養やケアのための革新的なソリューションを提供する業界のリーダーであり、そのソリューションはバイオスティミュラントやバイオコントロールの製品に活用される。現在、両社は効果的でエコフレンドリーな製品を開発するという目標の達成に向け取り組みを行っている。
また、Syngentaは先日、香港のAI・DL企業であるInsilico Medicineを発表し、作物を病気や雑草、害虫から守る効果的なソリューションの発明及び開発を行っている。
SyngentaはイノベーションによりAPACの農家に新しいソリューションをより早く・効率的に提供することで、生産性の向上や、低コスト高品質な食料への需要などの農家が直面する課題の継続的な対応を行えるよう支援していく。
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COVID-19の影響により、農業における課題はさらに深刻化している。この状況を打開する方法としても、テクノロジーはこれまで以上に重要なソリューションとなるだろう。
生物保護製品の開発以外にも、精密農業やデータ駆動型農業、さらには残留物の少なく高品質な食品を求める消費者にこたえるためのツール開発など、テクノロジーに対する注目は高まりつつある。
表題画像：Photo by wilsan u on Unsplash (改変して使用)