アムステルダム学生起業家ピッチコンテスト P!TCH XL レポート

アムステルダムの学生起業家に焦点を当てたピッチイベント「P!TCH XL」。テックカンファレンス「TNW 2022」のサイドイベントとして開催された。
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ピッチバトル「P!TCH XL」は、2022年6月15日にテックカンファレンス「TNW Conference」のサイドイベントとして開催された。「TNW Conference」は、欧州の最新テクノロジーやスタートアップに焦点を当てたWebメディア「The Next Web」が主催するスタートアップカンファレンスである。(TNW conference 関連記事:TNW Conference : オランダ発のスタートアップカンファレンス、注目の登壇者とコンテンツを紹介

「P!TCH XL」はアムステルダムの学生が立ち上げたスタートアップ特化のベンチャーキャピタルファンド「ASIF Ventures」が主催している。登壇した6社はいずれも、学生や学校卒業後間もない若手が起業したスタートアップだ。同イベントはピッチバトルだけでなくネットワーキングも目的としており、会場となった「The Student Hotel」には投資家やインキュベーター、アクセラレーター、起業家など、多様な立場の人々が集った。

本記事では、「P!TCH XL」のレポートを紹介する。

写真:P!TCH XL

主催「ASIF Ventures」

同イベントの主催者である「ASIF Ventures」は、アムステルダムの学生起業家とベンチャーキャピタルを繋げることで、アムステルダムにおける起業の気運を高めている。同ファンドは学生や新卒者によるアーリーステージのスタートアップに対して、人脈形成や様々な面からの助言などを通じ総合的な支援を行う。「P!TCH XL」もその一環として開催された。チケットサイズは25kユーロから100Kユーロとなっている(参照)。

登壇企業

宇宙開発や医療、ECなど、様々な分野のスタートアップが登壇した。以下、登壇企業6社を登壇順に紹介する。

Deeplo AI

画像:「Deeplo AI」HPより引用

「Deeplo AI」は、テック人材を育成し、企業とつなげるエドテックプラットフォームを開発している。同プラットフォームでは、雇用機会を平等かつ均等にユーザーに提供することを目材している。

Revolv Space

画像:「Revolv Space」HPより引用

「Revolv Space」は、小型人工衛星キューブサット向けのアクチュエータ(Solar Array Rotary Actuator)を開発している。キューブサットとは、重量数キロ程度の人工衛星で、大学などが小規模な実験で使用する。破棄時の宇宙ごみ削減やエネルギー効率の向上により、より持続可能で多くの人々に開かれた宇宙開発や研究の実現を目指している。

Stamps

画像:「Stamps」HPより引用

「Stamps」は、闘病中の人々と、それを精神面で支える家族や友達などのコミュニケーションをより良いものにするSNS型のアプリを提供している。同アプリ上では、闘病者がその時の気分や身体の状態などを投稿し、近しい人々がそれに励ましのコメントできるほか、ギフトの贈呈もできる。

OASYS NOW

画像:「Stamps」HPより引用

「OASYS NOW」は、遺伝子情報に基づいた予防医学と高精度医療を可能にする情報プラットフォーム「OASYS HEAL」を開発している。ブロックチェーン技術とクラウド技術により、個人情報の保護と大規模な共有を両立している。

YourDesq

画像:「YourDesq」HP より引用

「YourDesq」は、サブスクリプションなどが不要で、1日単位で利用できるオフィススペースをオランダ国内で提供している。オフィススペースは、部屋などを持て余している企業などから提供され、Wifiや印刷機など、通常のデスクワークに必要なものが揃う。

Robin Retail

画像:「Robin Retail」HPより引用

「Robin Retail」は、アムステルダム内のブティックの商品をオンラインで購入できるプラットフォームを運営している。注文した商品は自転車でアムステルダム市内の住所にすぐに届けられる。

結果

審査員賞とオーディエンス賞にそれぞれ一社ずつ、計2つのスタートアップが選ばれた。オーディエンス賞は、現地で携帯から投票を行い、リアルタイムで投票結果が確認できる仕組みとなっていた。「OASYS NOW」が審査員賞として4,500ユーロを、「Stamps」がオーディエンス賞として3,500ユーロ獲得した。

写真:P!TCH XL

会場には学生起業家や起業に興味のある若者が集まり、各企業のピッチや審査員からの総評に真剣に耳を傾けている点が印象的であった。また、学生起業家に焦点を当てたイベント、且つ起業家同士の繋がりや、投資家、アクセラレーターと知り合うことのできる機会ということもあってか、会場は若者が多く、観客席がほとんど埋まっている状態であった。結果発表などで会場が盛り上がる瞬間は、コロナ禍であることを忘れてしまうほどの熱気が感じられた。


表題画像:Photo by P!TCH XL (改変して使用)

執筆者
山崎悠介 / Yusuke Yamazaki
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