コロナが多くのビジネスにとってチャンスである理由

新型コロナウイルスは多くのビジネスに影響を与えている。しかし、このパンデミックは、いくつかの誤った考えを正し、あらためて自社サービスやプロダクトの価値を見つめ直す絶好のチャンスでもあるだろう。
マーケティング

コロナ禍で業績低迷に苦しむ事業者は数えきれない。しかし、客足が遠のき、あらゆるものがオンラインに移行しているこの状況は、ビジネスに関わるあらゆる人が忘れがちなことや誤って認識していることをあらためて教えてくれる良い機会である。

(翻訳者解説)

1. 顧客の目的は「購入」ではないことを忘れがち

あらゆるビジネスにおいてまず第一に必要な要素は「顧客」である。顧客がいないと売上は上がらず、売上がないとビジネスは成立しないからだ。

昨今、デジタル化の波に伴って、多くの新しいアイデアが実現可能になり、様々なビジネスが誕生している。しかし、実際には良いアイデアと技術を持っているだけでは成功できるとは言えない。製品やサービスを売り込むためには、顧客に対して明確なメリットを提案する必要があるからだ。

ここで言う提案とは、顧客の問題を解決したり、ニーズを満たしたり、何かの転換を容易にしたりするような、顧客にとって直接的な「価値」を生み出せるようなソリューションの提案である。

ほとんどの人は、製品AやサービスBを購入することが目的ではなく、それらを使って何かしらの問題を解決したいと考えているだろう。この考えは1960年に当時ハーバード大学に在籍していたセオドア・レビット教授の有名な言葉にも現れている。

「Don’t find customers for your products, find products for your customers - 製品にあった顧客を見つけるのではない。顧客のための製品を作り出すのだ。」

これは事業に取り組む人々にとって非常に重要な考えである。実際のところ、スタートアップの失敗理由として上位に来るのが「そもそもその会社の製品やサービスの市場(需要)が存在していなかった」と言うものであるとの研究結果もいくつか報告されている。おそらくだが、その製品やサービス自体が消費者のニーズを満たしていなかったか、もしくは企業側がそのメリットを十分に伝えられなかったのだろう。

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2. デジタル化はコロナに対する万能薬ではない

世界各地でロックダウンが実施されて以降、多くのビジネスがオンラインに進出してきた。このような時代で生き残るためにビジネスのオンライン化が必要であることは言わずもがなだが、とはいえ「デジタル化」自体がこの状況下における即効薬やワクチンとなるわけではない。

長年、多くのコンサルタントがDX戦略(デジタルトランスフォーメーション)について語ってきた。そしてその主張の多くは、最新のテクノロジーがいかにしてクライアントの事業を助け、改善し、リテンションをあげるかというものであった。

この主張は言うだけなら誰でもできる単純なものである。しかし一方でこの考え方には様々なリスクも付随しているということを忘れてはならない。

まず、デジタル戦略を立案する上で大きな部分を占めるのが「カスタマージャーニー」である。これをマッピングするために、製品やサービスの提供者は、顧客が広告を見てからサービスの購入に至るまでの導線とそこで得られる体験について詳細に分析してきた。

しかし残念なことに、多くの企業はコロナ禍において今までと同じやり方では不十分であるということに気づいていない。コロナによって状況は変わり、これまでの業務プロセスやカスタマージャーニーの立て方を続けることは建設的ではなくなっているのだ。

これは、コロナウイルスの蔓延を防ぐために各国で行われた対策(ソーシャルディスタンスなど)が、公共の場での人々のあらゆる活動を一瞬にして変えてしまったからだ。

そして、新型コロナウイルスの拡大は、単にデジタル化を行うだけでなく、それに伴う顧客との関係性を見直し、新しい関わり方を発見する機会になっていると言えるだろう。

コロナ禍のビジネスで大切なこと

今後のビジネスにおいては、まずは「なぜ」を意識することが大切だ。なぜ顧客は今日取引をしたいのか、なぜ試着もせずにその服を欲しがるのか、なぜ人々は友人も仲間もいないレストランでお気に入りのメニューを注文し続けるのか、なぜこれまでの病院ではなくオンライン診断を信用してくれているのか?まずは問いを立てることが大切だ。

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サービスの提供者として、顧客は自分たちに何を期待しているのかをまずは考えるべきなのである。その中で思いついたアイデアを書き出し、新しい提案や顧客との関わり方を考え、これまでの経験の置き換えと改善を試していくことが、この状況下でできる最もシンプルかつ最も効果的なソリューションである。

ここで言う「ソリューション」も「ワクチン」ではない。この文脈におけるソリューションとは、いわゆるニューノーマルの時代に寄り添うためにはどうすれば良いかという話である。ぜひ協力的なクライアントと共にブレインストーミングやテストを行うといいだろう。

失敗を恐れてはいけない。誰もが同じ状況にあるという事実を忘れてはならない。この状況下での新しいチャレンジは、きっと企業を次のステージに前進させるだろう。

翻訳元:https://e27.co/a-pandemic-is-a-good-time-to-experiment-and-innovate-on-behalf-of-your-customers-20200806/

記事パートナー
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執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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