2020年のグローバル・スタートアップ・エコシステム・レポートによると、ASEANは世界のスタートアップ・エコシステムの30%を占めるほど、スタートアップ企業の勢いが増してきている。しかし、パンデミック以降、同地域のスタートアップ企業も例にもれず資金面と需要面で苦戦を強いられている。
国際通貨基金(IMF)はコロナウイルスが大恐慌以来の最悪の不況をもたらすと予測している。パンデミックの経済への影響が不透明な中で、ボラティリティが急上昇し、場合によっては世界金融危機以上の影響が生じる可能性がある。
移動規制やリモートワーク文化は、デジタルビジネスのブームにつながっている。デジタル決済、電子商取引や物流、テレヘルス、TikTokのようなコンテンツプラットフォームなどの採用が急増しており、このような分野のテック系スタートアップには有利な状況となっている。一方、パンデミックの恩恵を受けない非デジタル企業はどうなるのだろうか。
コロナ禍において一部の業務は停止せざるを得ないが、これは見方によってはチャンスである。浮いたリソースを活用して市場のニーズを精査し、イノベーションを生み出すための時間と捉えることも可能だろう。
Sansanにおいては、東京証券取引所で2019年のIPO最高額を達成した後、市場拡大路線が明確だと思っていた矢先に状況が短期間で変わった。他の企業と同様に、Sansanもコロナに対してピボットせざるを得なかった。
市場変化に適応するためには、機敏さ、イノベーションを起こす力、運用上の柔軟性、流動性を活用する必要がある。また、顧客課題や顧客ニーズを模索することも欠かせない。課題解決に成功できれば、ビジネスを好転させることができる。
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Sansanはクラウド型連絡先管理ソリューションを提供しており、企業内のすべてのつながりを可視化することができる。これらの記録は、従業員がSansanの電話アプリを使って名刺をスキャンするだけで、Sansanのインターフェースに入力される。
しかし、リモートワークの台頭により、これらの企業はどのようにしてコンタクトデータベースを維持し続けているのだろうか?営業パイプラインが軟化し、会議がキャンセルされ、営業サイクルが長くなっている中で、企業はどのようにして効果的にリモートセールスを行うことができるのだろうか?また、ロックダウンにより、名刺文化はすでに薄れつつある。
ビデオ会議システムを提供するOwl Labsが6大陸の3,000人以上の従業員を対象に行った最新のレポート「Global State of Remote Work」によると、アジアではリモートワークを認めていなかった企業が世界平均より9%多かったことがわかった。しかし今はコロナウイルスによるロックダウンの影響で、リモートワークを事業継続の手段として採用する企業が増加してきている。
Sansanはこの変化に対して新たなソリューションを提案している。この地域全域で多数のビジネスパーソンがオンラインで名刺交換を行い、Microsoft Teamsとの統合などの新機能を導入して、遠隔地で会議をする人たちが連絡先情報を簡単に交換できるようにしている。
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どんな危機にも明るい兆しがある。営業イベント、顧客とのミーティング、国際会議がキャンセルされる中、企業は前向きな見通しと下記の3本柱の戦略を持ってこの問題に取り組まなければならない。「新しい生活様式の導入に向けたリシェイプ」、「再活性化のための姿勢」、そして「デジタルコミュニケーションの採用」である。
東南アジアには、コロナ禍に合わせて効率的にピボットしているスタートアップ企業がたくさんある。
デジタル化で急成長中のSaas系スタートアップ - 調査会社のTypeformは、毎月の経常収益がロックダウン前の週1%の成長から、ロックダウン期間中は6%になったと述べている。
イベント業界の混乱を乗り切る - コロナウイルスにより多くのイベントがキャンセルされる中、日本のイベントテクノロジー企業であるEventhubは、今後のビジネス成長の柱として、大規模な会議やウェビナーを開催できるEventHub onlineを4月にリリースした。
物流・食品配送分野でのイノベーション - ライドシェア分野では、ソーシャル・カープールアプリのRydeやライド・ハイリングアプリのTADAのようなスタートアップ企業が、食品配送や宅配サービスに参入し、イノベーションを起こしている。
ヘルスケア分野で急成長 - シンガポールのWhiteCoatは、医療患者のためのオンラインビデオ相談システムを提供しており、現在注目されているテレヘルス系テック企業である。メディア報道によると、WhiteCoatのトラフィックは毎週25%増加しており、海外展開に向けて急成長中である。
一部の3Dプリンターメーカーは現在、医療従事者のための個人用保護具を作るためにプリンターを稼働させており、一方で、オフィス用の電話ブースを作っていたスタートアップ企業は現在、医療施設のためのコロナウイルス検査ブースを作っている。
3月に発表されたEYのレポートによると、経営幹部の4分の3以上が、自動化やデジタルトランスフォーメーションを推進するための施策を練っている。
コロナ禍においてスタートアップが生き残れるか否かは、高い学習型組織を構築し、スピード感をもってピボットする能力にかかっていると言っても過言ではない。
翻訳元:Time to pivot, not panic: The startup advantage to dealing with a pandemic