ラオスにユニコーン企業が誕生する日

毎年経済発展を遂げているものの、スタートアップエコシステムの活発化が滞っているラオス。同国にユニコーン企業が誕生する日はくるのだろうか。3つの障害を軸に今後の課題について解説する。
HR マーケティング VC/CVC

近年、東南アジアのテック系スタートアップ市場が注目されている。世界的な投資家がこぞって市場参入を試みており、中でもインドネシアのデジタル決済市場の勢いはすさまじい。

一方、デジタル決済市場が保険・融資などの他ハイテク産業の一部を構成するに過ぎないことを考えると、投資家の興味が「分野」よりも「地域」に向けられていることが分かる。

これまでの投資対象は、シンガポールやインドネシアなどの主要経済国に集中してきていたが、今後の成長性を考慮すると、スタートアップエコシステムが発達していないラオスなどのメコン地域の国々は隠れた宝石と言える。

隠れた宝石

メコン地域の国々は、エンジェル投資家が言うところの「フロンティア・マーケット」に該当する。大きな可能性を秘めた国々で構成されているが、経済成長の見通しを語る際にはあまり着目されてこなかった。

特にラオスは、その成長性に見合った脚光を浴びていないと言える。 World Bankの調査によると、2015年までの10年間でラオス経済は平均7.8%/年で成長し、年間成長率は7.0%を下回ったことはなかった。

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結果、一人当たりのGDPは2005年の476ドルから2015年には1,812ドルに増加した。ラオスは実は、アジアの中で最も急速に経済成長している国の一つなのである。

3つの障害

Emerging Markets Consulting の調査によると、ラオスのスタートアップ企業の発展は、3 つの障害に阻まれている。(1)事業登録の複雑さ(2)資金調達の難しさ(3)労働者のスキルギャップである。

各ステップを分析することで、なぜラオスではスタートアップの数が少なく、エコシステムが活発になっていないのかを理解することができる。

(1)事業登録の複雑さ

ラオスでは事業を登録するだけでも、少なくとも3つの異なる省庁を訪問する必要がある。

近年、プロセスの合理化が検討されているが、まだまだ手続きは複雑であり、多くの起業志望者が不満を持っている。

登録にかかる労力の多さのため事業登録を諦めてしまう起業家志望者も多い。

(2)資金調達の難しさ

煩雑な事業登録プロセスを通過した少数の起業家が次に直面する壁が資金調達である。

経済が拡大しているにもかかわらず、なぜスタートアップエコシステムが発展していないのか。この問題を社会的・制度的なレベルで探っていくと、問題点が見えてくる。

アジア開発銀行の調査」によると、ラオスは所得あたりの金融リテラシーがベトナム並みに高いにもかかわらず、事業資金を確保するための金融知識や採用度が低いことが明らかになっている。

金融機関側からすると、若い起業家の保有する担保価値が低く、債務不履行リスクが大きいことから融資には消極的である。一方、状況改善のための取り組みも行われている。

世界銀行は、地方銀行に長期的な資金源を提供することを主な目的として、各銀行が中小企業に長期的な信用を提供できるような施策を展開している。まだ十分な効果は見られていないものの、世界銀行のこの動きが起業家の参入障壁を減らし、成功の機会を増やすことに貢献することを期待したい。

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(3)労働者のスキルギャップ

事業の成功には適切な人材の確保が必要不可欠である。特に、余裕のないスタートアップ企業では、チーム全員が高いレベルの生産性を持っていることが求められる。

残念ながら、ラオスはこの点でうまくいっていない。労働市場を分析すると、根本的な原因が現地の教育システムと技能訓練の枠組みにあることに気づく。高等教育レベルでは、学生が勉強していることと雇用者が求めていることの間にミスマッチがあ。大学を卒業してビジネスの学位を取得した学生が余っており、工学などの技術的な職業訓練を受けた学生が不足している。

職業訓練に対する学生人気がないのは、職業訓練やブルーカラー職の地位の低さと、国内に質の高い職業訓練がないことが反映されている可能性が高い。労働市場はビジネスマンで飽和状態にあるが、一方でエンジニアが不足している。

適切な人材とスキルがなければ、ビジネスのアイデアは、机上の空論で終わってしまうのである。

希望はある

東南アジアのスタートアップエコシステム全体が繁栄していることを考えると、ラオスが他の国々に追いつくのは時間の問題である。しかし、これには政府レベルでの改革が必要である。

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政策を合理化し、教育制度を充実させ、将来の地域経済の需要と連動させて、必要な人材を輩出する必要がある。現実的には、このような取り組みの効果を十分に評価できるようになるまでには、10年か20年はかかるだろう。

ただし、その頃にはラオス国念願のユニコーン企業が誕生しているかもしれない。

翻訳元:Will Laos be home to a unicorn some day?

記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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