消費活動の際、痛みや嫌悪感に関連する脳の領域が刺激される。そして面白いことに、支払いの形態によって、この刺激の度合いは異なるという。
(画像:翻訳元の記事より引用)
最近、BNPL(Buy Now Pay Later)の話題に触れる機会が劇増し、2020年後半は特に店舗型ビジネスと通販の両方でこの形態での決済が見られようになった。BNPLのコンセプトは、カスタマーの返済に対する信頼と柔軟な支払いプランによる手頃な価格での購入の引き換えにある。Klarna、Afterpay、SezzleなどのBNPLプラットフォームの市場価値は、2027年までにCAGRで21.2%まで世界的に上昇すると予測される。
東南アジアでは、人口6億7,000万人のうち銀行口座を持つのはその27%に過ぎない。すなわち約4億3800万人が銀行口座を持たないため、クレジットカードやデビットカードの利用率は低く、借入ができない人も多い。
並行して、負債が避けられることとその使いやすさから、特に若年層では銀行口座やクレジットカードではなく、BNPLを利用する動きが見られる。
BNPLの概念自体は新しくないが、COVID-19に伴うオンラインショッピング増加も含め、様々な要因により普及が進んでいる。
原則として、BNPL人気の理由となる2つの主要な行動・心理要因には、損失回避と現在志向バイアスがある。
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研究によると、消費活動の際、痛みや嫌悪感に関連する脳の領域が刺激されるが、その支払いの金額と形態によって不快感の度合いは異なることがわかっている。すなわち、クレジットカード払いの消費者は、現金払いの消費者よりも感じる不快感が少なく、それゆえより多くの消費を行う傾向にある。現金は価値の物理的表象であり、支払いの際相手にその価値が渡ることが目視できるため、より大きな不快感を生み出す。
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クレジットカードとBNPLにおいては、前者では合計金額を後日支払うという点が唯一の相違点であり、クレジットカードもBNPLの一種と考えることができる。クレジットカードを利用すると、支払いがスムーズになり、現金を失う苦痛を和らげられる。MITの研究では、バスケットボールの試合チケット購入の際、カード払いの学生は現金払いの学生に比べ2倍の出費をする傾向にあることがわかった。クレジットカードでの支払いは、金銭的感覚を鈍らせるという結果だ。
どちらの場合も、苦痛と損失回避行動は相関関係にある。EC企業はこの心理に精通しており、期限付き割引やキャンペーンなどによりFOMOを高めるなどして、購買につなげている。
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要するに、自然と不快感を避けようとする意識が、より少ない不快感を生む後払いを人々に促しているということだ。
私たち人間は、現在に近く得られる価値ほど過大評価する傾向にある。例えば、明日得られる100ドルよりも今日得られる100ドルの方がその価値を高く評価するといったことだ。これを現在志向バイアスと呼ぶが、これに基づけば人々は商品や収入はできるだけ早く得ようとする。
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支払いのタイミングは、プロダクトに対して感じる価値を左右する。例えば、ジムにおいては会費を月払いしている人の方が、年払いしている人よりもより頻繁にジムに通い、またメンバーシップを更新する可能性が高くなる。これらのサービスによって、カスタマーがプロダクトに見出す価値と支払いへの苦痛の均衡が取られている。より少額での分割払いの方が魅力的でより手頃な価格であるとする認識が分割払いを後押ししているのだ。有形の現金が無形になった結果、BNPLは節約心を低下させている。
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BNPLのビジネスモデルは、様々な業界で将来の返済に大きく依存している。アジアの観光をサポートするホテルパッケージ「今買って、あとで泊まる」から、自動車メーカーの自動車販売促進のための後払いプラン、さらには航空旅行パッケージ「今飛んで、あとで払う」まで、フレキシブルなオプションが人気を集めている。
研究では、損失回避行動と現在志向バイアスの両方がビジネスにおいて利用されると、カスタマーの支出を増やせることがわかっている。