ECスタートアップが東南アジアのサプライチェーンに革命をもたらすであろう理由

ECスタートアップが東南アジアのサプライチェーンに革命をもたらすであろう理由
EC 物流

日々のビジネスはコロナウイルスのパンデミックによって中断され、企業はスクランブル状態となっている。東南アジアの多くの企業にとっても、現在の状況は会社の生き残りがかかった「真の闘い」と言えるだろう。先の見えない「新しい日常」に対しての適応を模索し、物流などの別業種への参入で経営を多角化しようとしている企業も現れはじめたほどだ。

この状況にはいくつかの然るべき理由があると言えるだろう。そもそも、東南アジアは市場が急発展している。人口の増加は消費者の増加を意味し、最早世界の製造業の中心地であるのだ。

一方で、この東南アジアという地域は新規事業の立ち上げが簡単な地域というわけではない。競争は激しく、郵便番号がなかったり、インフラが発展途上であったり、そして先進国に比べてディジタル化が進んでいなかったりと、この地域独特の課題がビジネスにおける障害となっているからだ。

このギャップを埋めるため、「Quincus」のように新規事業に挑戦する企業が増加している。この2ヶ月間で、私たちは物流業界への進出を検討している企業から、定期的に問い合わせを受けているのだ。彼らは皆、東南アジアにおいてサプライチェーンが持つ独特な課題に対して、当社の技術や経験、専門的な知識などを求めている。

なぜスタートアップの存在がサプライチェーンの手助けになるのか

スタートアップはシステムの問題を発見し、改善するスペシャリストとも言える。起業家のPaul Graham氏が「最高のスタートアップとは、緊急で解決すべき課題に取り組んでいる企業のことだろう」と鋭い考察をしているが、これはまさしく先述の「スペシャリスト」の概念に相違ない。今、東南アジアではこの緊急の課題への対処という側面が顕著に表れているのだ。

今日の状況下において、スタートアップはサプライチェーンを前進させるための適切なツールやノウハウを持ち合わせていると言えるだろう。EC業界に参入しようとする企業は、このイノベーションの最前線に立っているのだ。コロナウイルスのパンデミックによって、非接触型の配送システムや、ペーパーレスの決済の導入を促進させた彼らの存在は、感染リスクの低減を実現し、物流業界に最高の経験と革命をもたらすことになるであろう。

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加えて、このようなイノベーションは混乱を抑制し、デリバリー数を増加させ、そして従業員や顧客の健康と安全を保証することに繋がるだろう。

新しいテクノロジーイノベーションに対するスタートアップの意志を超え、彼らのユニークな価値やカルチャーが私たちにイノベーションや創造性という形で活力を与えてくれていると私は考えている。「過去10年間の輝かしいアイデアの多くがスタートアップから生まれたのはなぜか?」というForbesの有名な問いかけも挙げるべきであろうか。

スタートアップのチームは往往にして、アイデアに溢れており、問題解決の能力を存分に発揮する機会を持っている。そしてまた、カスタマーエクスペリエンスとその満足度を向上させるためのプロセスをより簡略化するための方法を常に探し続けているのだ。

データがサプライチェーンを紐解く鍵となる

データの有効な活用は、東南アジアにおけるサプライチェーンのポテンシャルを引き出すためのカギの一つである。しかしながら、データ活用を推進している物流業者の多くの現場では、情報に基づいた戦略的な意思決定を行うための必要データの収集に関して、現場では「手間取っている」と言わざるを得ないだろう。

そして、多くの場合において、企業はそのデータの必要性を認識していても、どのようにデータを収集すべきか、そしてどのように活用すべきか、という点について明確な理解のないままデータ収集を行なってしまっている。

適切なデータ収集とその活用の例として、ドライバーの事例を考えてみよう。(現状としては)複数のドライバーがシェアすべき情報が不足しており、そのことが大きな誤りを生む可能性があるのだ。

私が先述の「Quincus」でしばしば見てきた例として、ドライバーが倉庫で荷受けをするベストタイミングを把握することの価値の大きさが挙げられる。私たちのパートナーによって、この情報が、ドライバーが自身のノルマを達成するか、もしくは顧客の幸せを生み出すかの違いに繋がっているということをよく実感するのだ。

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ECの世界におけるモットーとして「交通はイノベーションをもたらす」という言葉を紹介したい。東南アジアの国々は、渋滞を引き起こすほどの交通量の増加に対応できない同地域の貧弱なインフラに苦戦しているのだ。

(この問題に対しても)ECスタートアップであれば、ドライバーや道路からのデータをもとに、最適なルートや所要時間を割り出すという方法で、ドライバーの遅延回避を実現し、目標を達成できるだろう。

生き残りをかけたイノベーション

コロナウイルスの流行は東南アジアのサプライチェーンの脆弱性を露呈させた。そして短期的に見ても同地域の経済の健全性は脅かされることとなるだろう。パンデミックによって明らかになった課題に不可能なものはないが、サプライチェーンが今後も発展してゆくためには、コアとなる能力を見直し、新たな能力獲得に向けたスキルや経験、技術の習得、そしてそれらをすでに持っているスタートアップとのパートナーシップが必要不可欠なのだ。

全体の中でどの程度の成熟度に位置しているかにかかわらず、サプライチェーンに新たなイノベーションの潮流が巻き起こることは、各企業が業界のリーダーになるチャンスを与えることに繋がるだろう。

画像出典: Sikai Gu on Unsplash

翻訳元:Why e-commerce startups will revolutionise the supply chain in Southeast Asia

記事パートナー
アジア各国のスタートアップシーンを世界に発信するオンラインメディア
執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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