私は失読症の起業家である。失読症者は一般の人と比べて学習力に劣る側面もあるが、ビジネス上で優位性を発揮することもある。実際にRichard Branson氏やJamie Oliver氏などの人物は、失読症を克服してビジネスを大成功させた。失読症の人たちが起業家として不利とされているのはあくまで感覚論に過ぎない。
専門家によると、失読症者は問題解決力に優れ、より広い視野で物事を捉えることができる。この指摘は、失読症とともに生きる起業家として、個人的にも納得できる。私は幼い頃から、文字が読めないがために、書かれた命令に従うのが困難な生活をしてきた。ただし、このような生活を経て多くの人々の失望を買っていたことから、かえって失敗を恐れないメンタリティを手に入れることができた。
失読症は私に失敗に対する免疫力と創造的な学習能力を与えてくれた。この状態であったがゆえに私は優れた起業家になることが出来たと考えている。
失読症は読み書きを困難にする。私が育ったシンガポールは、学校の成績がそのまま将来の職業を左右する教育システムであり、このシステムに多くの機会が奪われたのは間違いない。
失読症の人は基本的に、書き言葉を介したコミュニケーションが不得意である。読み書きの際に単語を聞き逃してしまうことも多々ある。例えば、"b "と "d "を混同してしまうことも多い。そのため、学校での勉強が必要以上に難しくなっていた。同級生が1時間以内にできる勉強を5時間から8時間かけて勉強しなければならないこともあった。
私には、失読症の同級生が数人いるが、彼らのほとんどが生まれつき愚かで無能だと教えられてきたという。しかし、彼らが情熱を注いでいる分野について話を聞くと、彼らが非常に才能豊かで優秀な人達であることが分かる。
失読症の人たちは、単に脳の配線が一般人と異なるだけで、他には何も違わない。実際、一般の人ができないようなことができるようになることもある。例えば、私は非常に視覚的な方法で物事を考える。これにより、私はスタートアップ経営の選択において複数のシナリオを「見通せる」ようになり、会社の成長につなげる先見性が強化された。
失読症は私に失敗を恐れない精神力を与え、強靭な起業家として成長させてくれたと言える。
失読症が起業の妨げになっていると表現するのは正しくない。私のような失読症の人間は、実際に上司になることで成功している。
私の経験では、失読症の人たちは情報の視覚化により、複数のビジネスシナリオを創出する能力に優れている。私たちはこれらを文章に変換することはできないが、ビジネスにおいて複数の視点と複数の可能性を考慮することに長けている。
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ロンドンのCass Business Schoolの名誉教授であるJulie Logan氏によると、英国の起業家の20%がこの症状を持っているという。Logan氏が米国市場を調査したところ、35%の起業家が失読症であるのに対し、一般人口失読症はわずか15%であるという。
ここまで失読症者の長所を述べてきたが、私が失読症者として常に幸せだったかというとそういう訳ではない。しかし、失読症が私のキャリアの道を切り開き、今に至るまでの私の決断を形作ってきたことは確かである。
私は今、自分の失読症を才能だと思っている。失読症のおかげで、仕事上の問題や個人的な問題に対して、独自の解決策を見つけることができてきた。そのおかげで、今日の私は、与えられたシナリオに順応し、柔軟に対応できる起業家になった。
個人的には、失読症がなければ、起業家として成功することはできなかったと思っている。私の起業家精神は、この「障害」が私に与える思考法によって彩られてきた。失読症は私の経験を後押しし、間違いなく私をより良い起業家にしてくれたと感じる。
翻訳元:Why dyslexia makes me a better entrepreneur