アジア太平洋地域に住む人は、ほかの地域に住む人と比べて5倍も災害に襲われる確率が高くなっている。2005年以降、50万人以上の命が失われ、14億人が影響を受け、9000億ドルの経済損出を出している。
シンガポールに住む私は、幸いなことにアジア太平洋地域の隣国で発生する災害から逃れられているが、この問題はより早急に対処されるべきと考えている。
対応や救援、復興作業を提供するうえでの高度化が進んでいるにもかかわらず、現場でのソリューションはそれが持つ潜在能力を十分に発揮するには程遠いものとなっている。Center for Disaster Philanthropy(CDP)とCandidは、2018年の災害支援への資金調達の際に、レジリエンスの構築にはわずか2%、災害への備えには4%しか配分されていないことを明らかにした。この現状は災害への準備や予防策を支援する具体的なメリットが、救援や復興の取り組みほどすぐに明らかにならないことが主な理由である。
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アジアにおける資金調達のギャップを埋めるため、Prudence Foundationは自然災害時に人命を救う革新的な技術ソリューションを発見し、資金調達及びサポートを行うための「SAFE STEPS D-Tech Awards」を創設し、資金提供を行っている。私は過去2年間、Prudence Foundationと協力を行い、防災テックソリューションを見分け・成長させるための資金提供者やアクセラレーターのコミュニティを活性化させ、支援が不十分な防災技術分野への関心と意識を高めるための活動を行ってきた。しかし、資金調達だけでは、この分野が直面しているシステミックな課題のすべてに取り組むことはできない。
起業家との会話を通じて、私は起業家が直面する4つの共通の課題を見つけ出し、サポートの必要ないくつかの分野を特定した。
1.常に売り込みに備える
他の製品やソリューションと同様に、起業家は自社の製品やソリューションが、存在する課題に対しどのように対処するのかを明確にすることが重要である。私は、起業家が既存のテクノロジーを適応または改変してアワードに応募しているのを見てきたが、その多くは改変の理由やインパクトのある成果を投資家に具体的に示すことができずにいた。
SAFE STEPS D-Tech Awardsの参加者がより明確にソリューションを示すことができるよう、アワードの戦略的パートナーであるTech for Impactは、セミファイナリストに対し、ストーリーテリングとメディア対応力に関するコーチングを行っている。
2.スケールアップの機会を見つける
テクノロジーは変革をもたらす可能性を秘めているが、インパクトを与えるためにはスケールアップを行い提供する必要がある。
現在多くの企業は、技術革新者を長期的に支援することで、その場しのぎではない企業の社会的責任プログラムに目を向けている。同アワードのテクノロジーパートナーであるLenovoは、ファイナリストに対し、メンターシップとテクノロジーコンサルティングを通じてハードウェアやサービス、コンサルタントを提供し、テクノロジーのスケールアップの支援を行う。また、アワードは他の適切なパートナーを招き、ファイナリストが必要に応じてスケールアップを行えるよう支援する。
3.リーダーシップとパフォーマンスを次のレベルへ引き上げる
すべてのスタートアップの背後には、善いビジョンを持ったリーダーが存在する。しかし、彼らは情熱を欠いているわけではないが、ビジネス運営上の経験が不足している可能性がある。ベンチャーキャピタル企業は、その幅広い経験をもとにコーチとして参加し、健全なビジネスモデルの構築、説得力のあるピッチの開発、クライアントのナビゲートなど、起業家にアドバイスを行うことができる。2つのベンチャーキャピタルパートナーであるAntlerとJubilee Capital Managementはファイナリストに対し、特定のニーズに対応するための1対1のコーチングを提供する。
4.有意義なパートナーシップを築く
今日の社会問題に対応するためには、単一のソリューションでは対応しきれない。たとえそれが優れていようとも、組織が影響力を拡大し、持続させるためには分野を超えたパートナーシップを構築する必要がある。
そこで、人道的パートナーであるIFRCは、災害現場での活動から得た知見を提供し、ネットワークやインキュベーター、アクセラレーターなどのエコシステムビルダーがパートナーシップを特定し、ナビゲートを行えるよう支援する。同アワードのファイナリストは、AVPNのDeal Share Platformでも紹介され、助成金提供者や投資家、シンクタンク、政策立案者などへ紹介することができる。そして、紹介されたソリューションへ関心を示す資本提供者やリソースプロバイダーは、パートナーシップの提携に踏み出すことができるようになっている。
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翻訳元:https://e27.co/why-disaster-tech-in-asia-holds-great-potential-and-how-to-scale-the-field-20210219/