現在、世界各地でパンデミックの影響が続く中、多くの組織、企業、スタートアップ企業がビッグデータやAIに目を向け、その発展を加速させている。
IDCのレポートによると、2020年の世界のAI市場は1,565億ドルで、成長率は12.3%に達し、そのうち80%がソフトウェア分野に帰属するという。またIDCは、一部ではブルーオーシャンとみなされているAI産業の市場規模は年率17%で成長し、2024年までに3,000億ドルを超えると予測している。
さまざまなAIの取り組みやアプリケーションが発展するためには、データやトレーニングモデルの保存、IaaS(情報提供型サービス)、PaaS(プラットフォーム型サービス)などのクラウドサービスをサポートするためのデータセンターを整備する必要がある。
最近、GoogleやMicrosoftなどの国際的なクラウドプレイヤーは、AI産業の発展を拡大させるべく台湾のAIインフラへの投資を進めている。
昨年9月、Googleは雲林に3番目のデータセンターを建設すると発表し、Microsoftは10月末に台湾初のAzureデータセンターを設立すると発表した。
台湾のクラウドインフラが実現すると、開発者は海外のデータセンターを経由してサービスを構築する必要がなくなる。これによって、特に金融などデータの主権に大きな影響を受ける分野では、現地チームによるAIイノベーションやアプリケーションが加速することになる。
AppWorksは半年に一度、最新の台湾AIエコシステムマップを発表しており、最新のトレンドや開発状況を明らかにするとともに、この分野をリードする様々な企業にスポットを当てている。エコシステム全体の変化を見直す過程で、2020年後半には以下のようなトレンドが観測されている。
(画像引用元:翻訳元記事より。『Taiwan's AI Ecosystem Second Half 2020』はAppWorksが制作し、半年ごとに更新される。この日本語翻訳記事は、許可を得て翻訳、画像を引用しています。無断転載厳禁。)
パンデミックは経済効率性と投資家の投資意欲に悪影響を与えたが、医療分野でのAIイノベーションを加速させたのは間違いない。 2020年前半はやや不毛な投資状況であったにもかかわらず、医用画像AI開発サービスとAIデジタル病理学システムを提供するaetherAIは、Quanta Computingが主導する600万ドルのシリーズAラウンドの出資を得ることに成功した。
2020年後半には、医療スタッフのコンピュータ断層撮影(CT)を支援し、脳出血のAI画像解釈システムを提供するDeep01が、ASUS Capitalが主導するシードファンディングで270万ドルの資金調達に成功した。また、AI聴診器やスマート呼吸器モニタリングシステムなどの革新的な医療機器を開拓したHeroic-Faithも、2020年に400万米ドルのシリーズAラウンドの資金調達を完了している。
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台湾のヘルステックとAI産業の次のステップはグローバル化である。医療AI関連製品の主な市場は、いまだ日米欧などの先進国に集中している。そのため、台湾の知名度向上とパンデミックの影響が相まって、国際規模で影響を及ぼすことになるだろう。これらの革新的なスタートアップが海外進出を成功させてスケールアップできるかどうかが今後の注目ポイントとなる。
多くの伝統的な台湾企業にとって、ビッグデータとAIは、デジタルトランスフォーメーションの取り組みや、次の成長エンジンを探すための探索活動の肝となっている。2020年には、英連邦誌と欧州のIMDが共同で、台湾と欧州間の初のデジタルトランスフォーメーション調査を発表した。
同調査によると、台湾企業の最大52%がまだデジタルトランスフォーメーションを行っておらず、デジタルトランスフォーメーションの目標を達成した企業はわずか4%に過ぎないと指摘している。多くの企業は、社内にビッグデータやAIのプロジェクトチームを作るのか、もしくはスタートアップのパートナーを探すのかという意思決定の岐路に立たされている。
最も直接的なモデルは、戦略的価値のある新しいベンチャーに投資するためのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を設立することだろう。投資以外にも、台湾の大手企業は他の協業モデルを模索している。例えば、IoTシステムの世界有数のメーカーの一つであるアドバンテックは、アクセラレータを確立するためにStarFabと協力した。
一方のWistronは、スタートアップとのパートナーシップを通じて業界のアップグレードを促進するだけでなく、将来の変革を積極的に打ち出している。同社はNCTUと組み込み型AI研究センターを設立し、今後10年間の成長機会を見つけるために、嘉新文化財団やタイムズ財団と共同でWistron Lab @ Garage+を計画した。
台湾政府と全国民・全住民のパンデミック対策の成功により、台湾のAIエコシステムは2020年下半期も引き続き隆盛を極めたと言える。スタートアップアクセラレーター側では、AppWorks Acceleratorが2018年8月からAIスタートアップに特化した募集を開始し、台湾内外から合計84チームを育成した。
他にも、Microsoft for Startups、SparkLabs Taipei、Taiwan AI x Robotics AcceleratorなどのコミュニティパートナーもAI関連のスタートアップを多数募集し、台湾のAIエコシステムに新たなエネルギーを注入している。2020年後半は、コロナウイルスへの適切な対処方法により、台湾でリアルイベントを開催することは比較的安全であったため、最大規模のスタートアップイベント2020 Meet Taipeiを開催でき、そこでは、AIやビッグデータを活用して、より付加価値の高いサービスを生み出すスタートアップが多数紹介された。
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台湾AIアカデミー、台湾AIラボ、人工知能基金会は、AI教育・研究分野における台湾を代表する機関であり、台湾におけるAIの発展のための支援を継続している。政府、機関、エコシステム全体からの支援を受けて、台湾は今後も様々な産業へのAIの導入を促進し、伝統的なビジネスにイノベーションを統合する方向で発展していくだろう。
翻訳元:Where is Taiwan’s AI ecosystem headed?
表題画像:Photo by Isaac QuesadaHire on Unsplash (改変して使用)