スタートアップの人事コンサルタントである私は、ファウンダーからこの質問をよくされる。
スタートアップの初期段階においては、ファウンダーは通常製品開発や営業販売、マーケティングに重きを置いているため、採用が後付けとなることは多々存在する。
スタートアップの成長には才能のある人材が必要だが、才能のある人材を引き付け、維持することには会社の成長が必要となる。彼らの多くはある時点において、このジレンマに直面することとなる。
そのサイクルから抜け出すために、私はファウンダーに対し、スタートアップの人事力をつけるようアドバイスを行う。
社内の人事をいつ採用するかについての厳密なルールは確かに存在しないが、一般的にPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成したのちに考慮すべき、チーム規模毎の経験則がいくつか存在する。
この段階においてはリソースがかなり制限される可能性がある。ファウンダーにとって、最初の数人の従業員を自ら採用することはそれほど難しくはないが、ビジネスが拡大・加速を始めると、それに応じチームも拡大する必要がある。
採用とオンボーディングのプロセスを社内で管理するために外部の人材を採用することは、人事問題がマインドシェアを占めないようにするために非常に重要なこととなる。
採用担当の専任を雇うことなくこの段階に到達した場合、人事部門は採用だけでなく企業の維持も行わねばならないため、専任の人を雇うことが賢明であるかもしれない。どのスタートアップにおいても人員削減は当たり前となる中、貴重な時間とリソースを浪費して代わりの人材を雇うよりも、既存の従業員を維持することの方が圧倒的に安価である。
スタートアップに30人以上の従業員がいて、まだ人事担当がいない場合は、できるだけ早く採用を検討する必要がある。求人掲示板の運営や職務記述書の編集、面接の進行、オンボーディングなどのプロセスは、資金調達や製品・事業開発などの重要なプロセスのパフォーマンスを低下させる可能性がある。
ファウンダーの多くは、初期段階における人事の採用を「大企業ではないスタートアップにおいては不必要である」と考え、行わない傾向がある。スタートアップの規模が拡大し、それに伴いチームの規模も大きくなるにつれ直面する人事問題等に、ファウンダーの多くは気づかない、または気づいても過小評価してしまうのだ。
スタートアップの初期段階においてはリソースが限られているため、幅広い専門性を持つジェネラリストを雇うことも多い。しかし会社の規模が拡大し始めた際には、それらのタスクは分割する必要がある。つまり、ジェネラリストではなく、専門性に特化したスペシャリストを雇う必要性が発生する。
例えばフルスタックエンジニアは、初期段階のスタートアップでは一般的であるが、それらは組織が成長するにつれ、フロントエンドエンジニアやバックエンドエンジニアに置き換えられていく。
才能ある人材を引き付け、維持することは、雇用主のブランド構築や特定の求人マーケティングからの人材の調達、報酬・福利厚生及びワークライフバランスの調達のすべてが必要となる。
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労働法は国により複雑なものとなる可能性があるため、ファウンダーは自らの会社が訴訟沙汰とならないよう、基本的な雇用と解雇の法的な知識を備えている必要がある。
ビジョン、使命・価値観の決定は非常に重要である。これらは会社の文化・目標を作り上げ、従業員が組織をゴールに導くのに役立つからだ。しかし、残念ながら多くの企業においては創設メンバーが他の業務に専念し、初期段階でこれらの重要な要素は決定されていない状態となっている。
報酬と業務評価は大量のリソースが必要となるが、成長を続けるスタートアップにとって重要な要素となる。
ある程度の規模では、スタートアップは外部の才能を探す必要は必ずしもない。代わりに社内の才能を育て、内部からリーダーを育成するために人材育成を行うことができる。
しかし、従業員の能力を適切に評価し、彼らの育成プログラムを用意した経験があるファウンダーは決して多はくない。
会社規模が拡大し、事業の安定のため専門家を雇う際、いくつかの問題に直面することとなる。それは初期段階のスタートアップでよく見られる人事担当には、2つのタイプが存在するからである。
この役割は従業員の採用、維持、育成、管理だけでなく、雇用に関する法律問題や給与、福利厚生など幅広い職務と責任を担う存在となる。
リクルーターは、個別に採用されることが多く、重要かつ時間がかかるタレントソーシング、採用担当者の選択肢を広げるための強力な人材のプールを構築する存在である。また、組織のニーズの理解、正確な職務記述書の作成、様々なチャンネルでの職務記述書の投稿、さらには採用イベントなど数多くの役割を担当する。
また、人材を採用担当者に受け渡す前に、一次選考の面接や求人のオファー等の入社までのプロセスの管理も行う。
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ある時点で、組織に人事の専門家が必要となることは間違いなくニーズがあり、予算が許す場合は人事チームに少なくとも1人のHRコーディネーターと採用担当者を配置するのが理想ではある。
しかし、予算の都合上、1人しか採用できない場合は、マルチタスクが可能な人材、すなわち競争の激しい業界で人材を獲得するための、マーケティングとセールスのスキルを備えたHRコーディネーター、または社内での人材管理や育成で必要とされる高いコミュニケーションスキルを備えた採用担当のどちらかを探す必要がある。
そのどちらを選択するかは各スタートアップのニーズにより左右されるが、どちらにせよファウンダーはバックオフィスの業務に追われることを望んでいないのは確かである。
先行投資は確かに必要であるが、質の高い人事の専門家を雇うことで、ファウンダーの時間やリソース、不安の種を取り除くことができる。
翻訳元:When is the right time for a startup to hire an HR person?
表題画像:Photo by Charles Deluvio on Unsplash (改変して使用)