スウェーデンで今何が起きているのか?スタートアップ創業者からみた新型コロナウイルス感染症への内部の視点
新型コロナウイルス感染症の対策をめぐって、独自の路線を進むスウェーデン。同国のスタートアップ経営者は国の現状や施策をどのように捉えているのか。具体的な政策と取り組みについて解説する。
Nov 22 2020 IN Translation
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他国とは大きく異なる新型コロナウイルス感染症の戦略を用いて権力を握るスウェーデン政府のことを、現在欧米の国々は非常に魅力的にみている。特に国際的なメディアは、ほとんどの学校やカフェ、レストランやジムがまだ営業している中で、スウェーデンの人々は相対的に正常な生活を送っていると報道している。

スウェーデンの政府の規制がどのように成功するかしないかについては誰もわからないし、確かに私はこの問題を推測するような者ではない。

しかしスウェーデンの起業家として、感染の大流行下においてスウェーデンでスタートアップを経営するとはどういうことなのかという、あまり議論されていない分野について言及したい。またスタートアップにどういったサポートが提供されているのかについても共有しよう。そして同様に重要なこととして、スタートアップやビジネス、そしてVCのエコシステムが一丸となって感染の大流行に関連した問題の一部を解決するための新しいソリューションを生み出している例をいくつか紹介したい。

危機に先駆けて在宅環境を整えてきたスウェーデン

「Bokio」という私の会社はGothenburg(ヨーテボリ)拠点のテック系スタートアップで、会計や簿記のためのAI駆動のソフトウェアツールを作成している。ユーザーの大部分が私たちのような中小企業やスタートアップで占めており、私たちは常にこのコミュニティーについて正確に把握している。そして新型コロナウイルス感染症とスウェーデンへの起業家への潜在的な影響に関する質問が私たちに殺到していることにすぐに気付いた。

新型コロナウイルス感染症による危機が起きるずっと前から、スウェーデンのほとんどの企業は手厚いWFH政策(在宅勤務政策)を実施しており、フレキシブルな労働時間を提供していた点は特筆すべきだろう。スウェーデンが優れた接続性に恵まれていることも重要な要因の一つで、通信ネットワークは山の頂上まで届き、多くの遠隔地をカバーしているため、オフィスの外でも仕事がしやすい。感染の大流行に対応した完全なリモート様式への移行は、ほとんどの場合比較的スムーズに行われてきた。

しかしながらキャッシュフローの問題やサプライチェーンの混乱、スタッフの効率的な配置など、世界中のスタートアップが直面しているような問題はスウェーデンのスタートアップにも影響を与えている。

スウェーデン政府のスタートアップへの支援策

多くのスタートアップを含む企業に提供されている政府の国家支援パッケージの主要な側面を、ここではいくつか紹介したい。

・税金の支払いの延期

大幅に減額された利子の猶予に加えて、新型コロナウイルス感染症の危機により影響を受けた企業は、納税猶予を申請し、納税の一部を最大1年間延期できる。

・社会保険料の減額

30人までで一定額の給与にのみ適用されるが、事業主は2020年3月1日から6月30日までの間、チームメンバーに対して雇用者の社会保険料を一時的に減額できる。

・短期的な一時解雇のための新規制と手当て

正社員のこれ以上の削減を防ぎ企業活動を維持するために、政府は従業員の給与の一部をカバーするために企業に介入している。労働時間が60%に短縮された場合でも、従業員に月収の最大約90%を受け取る権利を与える。

・失われた収益の補償

スウェーデン政府は4月30日、新型コロナウイルス感染症の影響で失われた収入の打撃を和らげるための財政支援策を発表した。前会計年度に少なくとも25万スウェーデンクローネ(約280万円)の収益を申告した事業者で、2019年と比較して2020年の3月〜4月間に30%以上の収益の減少を証明できる事業者に適用される。補償額は失った収益の規模に応じて異なる。3月と4月の企業の固定費(給与を除く)の22.5~75%で、1事業あたりの最高額は1億5000スウェーデンクローネ(約17億円)となる。

上記のこういった支援は確かに救済になるだろう。しかし中には対象外の企業もあるため、特に極めて小さい企業や創業間もない企業に対してのより一層の支援を期待している。

コロナ禍で生まれたスタートアップなどの新たなサービス

スウェーデンのVCやスタートアップ、そしてビジネスコミュニティは違いを生み出すために力を発揮し、とても素晴らしい取り組みやプロジェクトの立ち上げに向けて迅速に動き出している。少し例を挙げておきたい。

・バーチャルハッカソン「Hack the Crisis」

4月の初めに開催されたバーチャルハッカソン「Hack the Crisi」はスウェーデン政府による取り組みだが、私たちの国の最も優秀な開発者やデザイナー、イノベーターたちによって行われた。誰もが参加できるこのイベントの目的は、人命やコミュニティー、そしてビジネスを救うためのデジタルソリューションを開発することだった。弊社のデザイナーのFredrik Andersen氏が開発したものを含む受賞したソリューションは、ここからアクセスできる。

・研究費用のサポートを行う「Action Against Corona」

ノルスケン財団がスウェーデンの金融紙「Dagens Industri」と共同で3月中旬に設立した「Action Against Corona (AAC)」は、感染の大流行に関する問題の解決策に向けた取り組みのための資金と助成金を提供している。新型コロナウイルス感染症に関するプロジェクトに現在取り組む学術機関の研究者からの助成金申請は、なんと48時間以内に審査される。承認された最大50万ドルの助成金は、ほぼ即時に支払われる。

・医療従事者への無料乗車サービス

車の呼び寄せサービスの「Bolt」は4月にVCの「Creandum」や「EQTVentures」と提携し、スウェーデンの医療従事者が安全に通勤できるように無料乗車サービスを提供すると発表した。この困難な時期に介護者が保護され、見守られるようにするための非常に重要な取り組みである。

・新型コロナウイルス感染症の検査

感染症の大流行に直接対応するため、数週間で設立されたスウェーデンの医療技術スタートアップの「ABC Labs」は、遠隔医療スタートアップの「Kry」と協力して、スウェーデンの家庭が自己診断キットを確保できるように迅速に動いている。スウェーデンのスタートアップやビジネス界で最も聡明な人々が、共に会社を支援するのは素晴らしいことだ。前述の「AAC」のほか、「Mojang」の共同創業者のCarl Manneh氏や「Creandum」のジェネラルパートナーであるJohan Brenner氏、そして「H&M」の後継者であるCarl Tham氏、「Kry」の共同創業者でありCEOであるJohannes Schildt氏を含む個人投資家からの資金調達がすでに確保されている。

翻訳元:https://startupuniversal.com/whats-going-on-in-sweden-insider-view-on-covid-19-from-a-swedish-startup-founder/

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Author
土橋美沙
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