テックスタートアップがオンラインマーケティングで気をつけるべき法律課題

オンラインで製品やサービスを販売するスタートアップが知らなければならない法的課題の入門的まとめをお送りする。
マーケティング 法律

※本記事における法律情報は翻訳元記事ライターが調査した日本国外の情報を元にしています。また各国の法改正等により今後状況が変わる可能性があります。

オンラインマーケティング、特にソーシャルメディアを使ったキャンペーンの重要性は、テックカンパニーやスタートアップが新しい顧客を開拓し成長を牽引するための手法として誰もが知るところである。

いわゆるグロースハッカースやSEOの専門家がこれまで以上に求められていることは現在では何ら不思議なことではない。

もしあなたが、スタートアップやテックカンパニーでオンラインを通じて製品やサービスを売っているのならば、この記事を「オンラインマーケティングにおける法律課題の入門書」として読むことで、あなたのオンラインマーケティングがイリーガルになるのを防ぐことができるだろう。

己のビジネスを知るべし

あなたがオンラインマーケティングにより注力しなければならないかどうかを知る簡単な基準は、まずあなたの領域が規制産業であるかどうかという点にある。

フィンテックやヘルステック、フードテック、そしてECのような領域で活動するスタートアップは、大抵の場合マーケティングや広告における追加規制に従う必要がある。

これらの法律は規制する側が詐称や不当な広告から大衆を守るためにつくられており、人々がその製品やサービスを購入する際に適切な情報に基づいて意思決定できるようにしている。

そこで、もしあなたがすでに規制産業にいる立場であるならば、インターネット場でスタートアップを起業する前に、本当にやるべきこととやってはいけないことを知っているのかどうかについて、時間をかけて確認すべきである。

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ソーシャルメディアポリシーとブランドガイドラインを策定すべし

全ての企業はソーシャルメディアポリシーやブランドガイドラインを策定すべきである。

ソーシャルメディアポリシーは大抵の場合、機密保持規定を課される全ての取締役、従業員、そしてあなたが一緒に仕事をする外部の請負業者に対して適用される。

ブランドガイドラインは、ソーシャルメディアチームがオンラインで何らかのコンテンツを投稿する際の、ロゴや公式のフォント、書式などを定めたものである。

これはチーム内の一貫性を保つだけでなく、外部のパートナーと協力して仕事を進める際にも役に立つだろう。

そしてまた、企業の資料やデジタル形式の資産が第三者のオンラインマーケティングやソーシャルメディアコンテンツ、インフルエンサーなどによってどのように使用されるのかという点について、明確な推定を行うのにも役立つはずである。

個人情報保護法を知るべし

現在、あらゆる企業は、個人情報保護法を遵守する必要がある。

基本的にこれらの法律は、個人情報の保護方針や個人情報の保護通知書に記載されている通り、それぞれの顧客のパーソナルデータが規定通りに使用されるようにしなければならないという、一連の規制となっている。

今日、多くの国で独自の個人情報保護法が施行されている。東南アジアでもカンボジアとバングラデシュを覗く全ての国々で、個別の法律を制定しているのだ。

あなたのオンラインプラットフォームやモバアイルアプリのためのプライバシーポリシーを作成するときは、個人情報保護についてより理解を深めるためにも、専門の弁護士を雇うことが好ましいだろう。

また、あなたは少なくとも「データユーザー」(例えば、フルネーム、生年月日、連絡先などのデータ取得を行う企業)と、個人のデータを提供する顧客、つまり「データ対象者」の違いを知っておくべきである。

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さらに、EU域内の企業や顧客との取引においては、いわゆる"The General Data Protection Regulation"(一般的情報保護規定)に準拠できているかどうかも確認する必要があるだろう。

また、ソーシャルメディアでオンラインコンテンツを投稿する場合は、常識とも言える知識が役に立つかもしれない。例えば、顧客の明確な同意なしに、個人情報が含まれている可能性のあるコンテンツを投稿してしまうことは、(当然ながら)個人情報保護法に抵触する危険性があるので注意すべきである。

製品販売においては消費者保護法も知るべし

もしあなたのビジネスが、ECプラットフォームであり、製品やサービスのプロモーションにも関連がある場合、(個人情報保護法と同じく)消費者保護法にも気を配る必要がある。

例えば、マレーシアでは1999年から消費者保護法が存在しており、アンフェアな行為から消費者を保護し、最低限の製品基準が課されることとなっている。この法律の対象範囲はEC市場の拡大に伴って改定が行われ、(オンラインにおける)アンフェアな取引から消費者を保護するための規定追加がなされた。

その結果、現在マレーシアにおけるオンライン製品の販売者は以下の情報を必ず記載しなければならなくなっている。

  • オンラインビジネスの運営会社や屋号

  • 企業や事業者の登録番号

  • 連絡先(E-mail、電話番号、企業もしくは事業主の住所)

  • 提供する製品やサービスの説明

  • 製品やサービスの正確な価格(送料、税金、その他の手数料なども含めて記載)

  • 支払い方法

  • 販売規約

  • 場合によっては配送オプションに配送予定時刻を明記しなければならない

もし、これらの要件を満たさないままでいると、会社は犯罪行為を犯していると見なされてしまうのだ。もちろん虚偽情報や誤解を招くような情報を記載した場合も同様である。そしてペナルティはどの企業に対しても等しく課せられ、スタートアップであってもそうでなくても平等に適用されるのだ。

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(この制度上では)もし消費者が被害にあった場合、クレームを裁判所に提出することができる。クレームが認められれば、そのECカンパニーは裁判所よりペナルティを課され、責任を負う必要が出てくるのだ。

地域ごとのオンラインコンテンツ規制を知るべし

今日、テックカンパニーやスタートアップはその運営場所によっては、現地のオンラインコンテンツ規制にも従う必要があるだろう。

マレーシアでは、マレーシア通信・マルチメディア委員会(MCMC)が、情報技術と通信産業の規制を行う機関として存在している。簡単にまとめると、彼らはオンラインスピーチを規制し「コンテンツアプリケーションのプロバイダもしくはコンテンツアプリケーションサービス自体の利用者は、いかなる人間を困惑させ、虐待、脅迫、虚偽、威嚇、嫌がらせ、わいせつ、そして攻撃的な性格を持ったコンテンツを配信してはならない」と定めている。

また、マレーシアの「通信・マルチメディア・コンテンツフォーラム」は、独自のコンテンツコードを策定し、施行している。これは攻撃的であったりわいせつを含むコンテンツの取り扱いを規制するコンテンツプロバイダー向けの業界自主規制的なガイドラインである。

もしすでにソーシャルメディアチームが存在しているのであれば、外部のデジタルエージェンシーを含めて、関係者の誰もがそのコンテンツコードを熟知している必要があり、これらの規制に違反することは確実に避けるべきである。

オンラインマーケティングの外注にも気を配るべし

もしあなたのビジネスでオンラインマーケティングを外注するのであれば、インフルエンサーやオンラインマーケッターに対して正式な署名を持ってエンゲージメントを確保すべきである。

この場合の業務委託契約書(=engagement letter)は当事者間の期待事項を定める正式な契約書類であり、その範囲や料金などを記載することができるだろう。

ビジネスでは、業務委託契約書は以下のような要素を含んでいる必要がある。

  • ソーシャルメディアエージェンシーによる業務範囲の明確な規定

  • 投稿とコメントの許容基準とガイドライン

  • ソーシャルメディアアカウントへのアクセス権付与の同意

  • ロゴやブランドの限定的な利用許可

  • 不測の事態が発生した時の行動プラン

  • インシデントの報告義務

  • 業務終了時のアカウントやマテリアルの引き継ぎ

  • 過失や故意の不正に対する損害賠償規定

オンラインマーケティングの洗練により、企業は行動や活動、人口統計を含む多くの変数に基づいて顧客をターゲティングすることができるようになった。そのような状況において、オンラインマーケティングに関連する諸法の数々は、あらゆる人々が公正な競争を行えるような環境の促進のために存在しているのである。

画像出展:Tingey Injury Law Firm on Unsplash

翻訳元:What tech startups need to know about the legal aspects of online marketing

記事パートナー
アジア各国のスタートアップシーンを世界に発信するオンラインメディア
執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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