コロナ禍でスタートアップの資金調達はどうなる??【ニューノーマル】

新型コロナウイルスの脅威により在宅勤務(WFH)が主流となりつつある中、スタートアップの新たな資金調達の形にはどのようなものが考えられるのであろうか?ニューノーマル時代における効率的な資金調達手段について解説する。
VC/CVC

世界中の企業が在宅勤務(WFH)を取り入れる、新時代に突入している

ソーシャルディスタンス確保のための様々な施策が打ち出された結果、2020年4月時点で49.2%もの就業成人が在宅勤務になったと報告されている。

世界中の企業の55%以上がリモートワークに適した職場環境を提供しており、結果、在宅勤務者の77%がより生産的になったと報告している。従業員にとっては、通勤費が大幅に削減されるし、雇用主にとっても間接費が浮くことで従業員一人当たり平均11,000ドルの節約になっているという。

以上の事実からWFHはメリットが大きいことが分かるし、統計からもリモートワーカーの99%がWFHを継続したいと考えていることが分かっている。

しかし、WFHはスタートアップ企業や事業を拡大中の成長企業などの「資金調達を志向する企業」にとって弊害とならないのだろうか?

スタートアップの資金調達の方法の多くは、足をつかってエンジェル投資家やベンチャーキャピタリストを見つけることが常套手段とされてきた。

新型コロナウイルスの脅威により経済情勢がより不確実となっている中、スタートアップの新たな資金調達の形にはどのようなものが考えられるのであろうか?

2020年第2四半期の米国におけるVC投資額

全米ベンチャーキャピタル協会によると、今後スタートアップ企業の生存率は減少し、さらにVC投資も大幅に減少するとの厳しい予測を続けている。

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以前までは投資意欲が旺盛だったVCも、この状況では消極的にならざるを得ず、コロナ禍の期間を使ってポートフォリオの再評価に時間をあてる傾向にある。

しかし、一方で、数多く存在するスタートアップの中には、投資家の支持を上手く獲得できている企業も出てきている。

WFH時代のスタートアップの成功率は、第一に新市場を開拓する能力、第二にスタートアップの新しい資金調達方法をどれだけ把握できているかの2点にかかっている。

本記事では、スタートアップがWHF体制の中、どのようにして投資家の支持を獲得していくべきかについて解説する。

投資家のリスク選好度に合わせる

WHFが主流となっている昨今、投資家に対してアイデアの売り込みをかけ、資金調達を成功させることが困難になってきている。

経済の不況下において投資家は、次のいずれかのスタンスを取る。

「保守的になるか、評価額の低い新しい機会を探して冒険的になるか」である。

コロナ禍において投資を確保するための鍵は、投資家のリスクに対する許容度を理解することが重要である。

投資家のリスク選好度が高いのであれば、ビジネスの野心的な目標を全面的に推し出すのが良い。一方で、投資家のリスク選好度が低い場合は、緻密なマーケット情報やニューノーマルにおいてどのように利益を上げていくのかのシナリオを多数用意しておく必要がある。

コミュニケーションが鍵

自宅で仕事をしているのはスタートアップ創業者だけではない。ほとんどの投資家は自宅に縛られていることが多く、資金調達の成功には効率的なコミュニケーションが鍵となる。WFH期間中に出てきたテクノロジーを有効に活用しない手はないだろう。

Zoom、Slack、Join.meなどのサービスは、投資家へのアプローチやピッチングに適した手段である。

市場の不安定さと不確実性が高まる中、自宅で仕事をするということは、スタートアップにとって大きな脅威とチャンスをもたらしているといえる。投資家とはオープンで透明性のある関係を築くのが良いだろう。

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会社の状況、会社が直面している課題、市場の変化、そして最も重要なことは、WFHが会社の長期的な成長にとってどのように有益であるかを説明することが大事である。

コミュニケーション手段がリモートであったとしても頻繁に連絡を取り合っていれば、投資家はスタートアップが困難な時期にどのように持ちこたえているかについて、重要な洞察を得ることができる。

これが投資家の安心材料となり、更なる資金提供やサポートの提供の呼び水となるのである。

投資家をチームの一員として扱う意識が大事である。

ニッチなクラウドファンディング・プラットフォームの台頭

クラウドファンディングのプラットフォームは、典型的には、資金調達者と「群衆」との相互作用を可能にするウェブサイトとして活用されてきた。ここでいう「群衆」とは、スタートアップに投資する手段としてインターネットを好むが、必ずしもインターネットに縛られているわけではない人々によって構成されてきた。

一方、WFHが主流となりつつある昨今、インターネットへの接続が加速されたことで「群衆」の中に世界中の投資家が参加するようになってきた。

クラウドファンディングという概念は、この10年間で、スタートアップの重要な資金調達手段に格上げしてきた。Kickstarterのようなプラットフォームは、業界を超えて何千ものスタートアップの資金調達をサポートしてきたが、コロナ禍においては「ニッチベース」のプラットフォームが注目されつつある。

コロナ禍においては「選択と集中」がより重要になってきている。そのため、スタートアップとしてもニッチな業界に特化したクラウドファンディングプラットフォームを活用した方がブランディングにも活かせるし、業界特化型の投資家との成約率を高めることもできる

翻訳元:The future of startup financing in the WFH age

記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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