コロナで変わるイベント業界: オンライン展示会やバーチャルパーティーの可能性

COVID-19の影響でイベント業界が驚くべきスピードで変化している。感染症拡大の懸念から人々が外出を控える中、企業は参加者数を維持するためにイベントのオンライン化を進めている。イベント業界の現状と今後について解説する。
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COVID-19によってイベント業界が驚くべきスピードで変化している。

感染拡大を懸念して人々が物理的に隔離された中、世界はデジタルソリューションへと一斉にシフトした。バーチャルバースデーパーティーからバーチャル音楽フェスティバル、FacebookのOculus Connect 7のような大規模な業界会議、サンノゼの年次会議をオンライン化したものまで、イベントはバーチャル化してきている。

果たしてこのデジタルシフトは単なる流行であり、パンデミックが終わる頃には元通りに戻るのであろうか。

バーチャルイベントの台頭がアナログイベントの終わりを意味していないことは確かである。コロナ禍において、私たち人間が社会的な生き物であることがより一層明確化され、対面で会ってネットワーキングすることの喜びがバーチャル環境で補えないことも分かってきた。

一方で、パンデミックの影響でイベント会場が閉鎖され、人々がソーシャルディスタンスを確保せざるを得ない環境で生活をしている中、出会いとは何かを再考することが急務となっている。

ハイブリッドが「Next Normal」になる

アナログイベントは今のところ実施しづらい状況であるが、パンデミック後もイベントの形の一部として残るだろう。一方で、健康と安全に関する懸念が根強く残ることも懸念される。2020年5月にSACEOSが実施した調査によると、安全対策を講じずに10月のイベントに参加しても大丈夫だと答えたのは、回答者のわずか5%に過ぎない。

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イベント会場は定員割れで運営されているため、参加者数を維持するためにデジタルでの開催も視野に入れなければならない。

最もデジタルに抵抗していた前近代的な企業でさえも、デジタル・ソリューションの採用と適応を余儀なくされている。デジタル・イベントに関する意識調査では、回答者のほぼ60%が、デジタル・カンファレンスが将来的にアナログカンファレンスの一部になると考えていると回答した。

ライブ・ストリーミング・イベントから、会場外での遠隔視聴者、オンライン視聴者と会場内の参加者との交流を促進するチャットルームまで、現在試行錯誤されているデジタル要素は、その価値が証明されつつある。これにより、アナログイベントへの導入が進み、双方の長所を融合させたハイブリッド・イベントが誕生しつつある。ハイブリッド・イベントは「Next Normal」となると予想される。

デバイスに依存しないポータブルイベント

シスコの2020 Global Networking Trends Reportによると、ライブストリーミングは2022年までにビジネスインターネットトラフィック全体の約82%を占めるようになると予測されている。さらに、2023年までに世界人口の70%以上がモバイル接続を持つようになるとされている。

このデジタルシフトを受け入れることで、イベントへの参加方法や場所が大きく変わることが分かる。現代のストリーミング技術を使えば、イベント会場にどこからでも参加可能となる。もちろん、これらのボーダレスなイベントを可能にするためには、異なるオペレーティングシステムやデバイス上で互換性を確保するための技術が必要である。

「ストリーミングプラットフォームが、AndroidとAppleの両方の携帯電話で同じように動作するか?」「ランディングページが、異なる解像度で表現できるかどうか」などの要素に取り組まなければならない。

新たなチャンス

当社のアンケート結果によると、89.2%の回答者がチケット1枚1,000米ドルのアナログイベントの代わりに、オンライン・カンファレンスに支払う意思があると回答した。

しかし、その中の82%の回答者は、アナログイベントと比べて価格帯は10~40%程度にせざるを得ないと答えている。

デジタルイベントで同等の対価を払ってもらいたいのであれば、顧客体験に付加価値をつける必要があることが分かる。

イベントの付加価値については「フリーミアム」モデルが参考になる。例えば有名な基調講演者が主宰するメインセッションは参加者全員が見て学ぶことができ、有料のブレークアウトルームでは、より深い知識や講演者とのネットワーキングの機会を求める参加者が参加する。「フリーミアム」モデルは新しいものではなく、SaaSソフトウェアで広く利用されてきたが、アナログイベントに導入するのは非常に難しく、すべてのブレイクアウトルームの外にチケットブースを設置する必要がある。

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イベント業界の枠を超えて

デジタルイベントとハイブリッド・イベントは、COVID-19の前から存在していた。この大流行がイベント業界に前例のない規模とスピードで導入され、多くの経験豊富なイベントマネージャーを不慣れな領域に追い込んだ。この流れが新種のデジタルイベントマネージャーという職種を生み出したのである。

デジタルスペースを最大限に活用するには必要なスキルを身につけると同時に、eコマースやゲームなどの他業界で活躍しているベテランのデジタルイベントマネージャーを見習う必要があるだろう。

例えば、当社がGEVME Liveのオンライン展示会の企画を立案した際には、展示会をどのようにデジタル化するかを考えなければならなかった。今までと同じ感覚を踏襲し、単にアナログイベントをそのままオンラインの世界にマッピングしただけでは、デジタルツールを最大限に活用できない懸念があった。

デジタル展示会の利点は、スペースや時間に縛られないことである。参加者や出展者は、いつでもどこからでも参加することができる。これを最大限に活用するために、eコマースからインスピレーションを得て、出展者が1年間の展示会を開催し、ライブストリームやネットワーキングセッション、ショーケースやセミナーのようなその他の機能で参加者を魅了することができるオンラインマーケットプレイスを作る発想に至った。

また、ゲーム業界からも学ぶべきことがたくさんある。ゲーマーは、ビデオストリーミングによるオンラインエンゲージメントの方法を知っている。Youtubeの最も多く購読されているチャンネルの上位5つのうち2つがゲーム関連のコンテンツを提供している。

効果的なゲームストリーマーは、高いエンゲージメント率を維持しバズを生み出す手法を知っている。

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上記のようにあらゆる業界のベストプラクティスを取り込んでいくことで、この業界は今後も発展し続けるだろう。果たしてハイブリッド・イベントは「Next Normal」になるのだろうか。イベント業界の今後が楽しみである。

翻訳元:The future is hybrid: What will events look like post-COVID-19?

表題画像:Photo by Joshua Hanson on Unsplash (改変して使用)‍

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記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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