デジタル技術が教育分野で十分に活用されていない理由

教育分野ではデジタル技術の導入が遅れていたが、COVID-19の発生により引き起こされた様々な課題によって、今、デジタル技術を用いた革新的な解決策が求められている。
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教育分野ではデジタル技術の導入が遅れていたが、COVID-19の発生により引き起こされた様々な課題によって、今、デジタル技術を用いた革新的な解決策が求められている。

これまでの世代とは異なり、今日の学生は、デジタルに囲まれた世界で生まれ育ってきた。デジタル・プラットフォーム、ツール、そしてそれらによって作られたハイパー・コネクティビティの利点を完全に受け入れた世界である。

これを受け、学校をはじめとした教育機関は、学生にとって身近なプラットフォームやデバイスを使って、学習、コラボレーション、コミュニケーションを促進することが期待されている。これは、学生や教師にとってただただ便利なだけではない。学習体験を大幅に改善し、教育をより身近なものにし、教育環境外に身を置く学生の将来にも良い影響を与えられるのだ。

教育分野において、デジタル化の進んだ未来がなかなか受け入れられない理由

他のセクターとは異なり、教育は変化やイノベーションを受け入れるのが遅い場合がある。その理由の一つは、資金源にある。教育セクターの多くのレベルにおいて、資金の大部分を提供しているのは政府であるため、デジタルプロジェクトのための資金確保は、長年、必ずしも優先事項だと捉えられていなかった。

政府自身の大規模なITプロジェクトの経験もその理由の一つと言える。1990年代から2000年代初頭のIT・デジタルプロジェクトは、必ずしも成功したとは言えない結果であった。多くの場合、政府部門のデジタルイノベーションは、巨額の予算とタイムスケールの超過によって頓挫し、教育セクターやその他政府の資金提供に依存する多くのセクターに打撃を与えた。

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特にヨーロッパでは、世界的な景気後退の影響により、教育部門に長期的な予算の圧迫が生じた。英国やその他の欧州諸国において、政府はやむを得ず緊縮財政を実施したのだ。

その結果、学校や大学は、デジタルトランスフォーメーションや学生の学習経験・学習成果を向上させるために必要なその他のITプロジェクトを実施するために必要な資金を確保することができなかった。

学校は現在もなお、予算のバランスをとるのに苦労している。だが、多くの国では、教室にタブレットを設置したり、スマートホワイトボードを設置したり、保護者や生徒に学校で何が起こっているのかを知らせておくためのコミュニケーションプラットフォームを提供したりするための資金が、長年かけて徐々に準備できるようになってきている。

しかしながら他の地域では、生徒が学び、成長するための必要最低限の環境を作り出すのにさえ苦労する学校機関も見られる。こういった学校では、文房具などの必需品や清掃員の給料などの必要経費を見繕うことさえ困難だ。それゆえ、学校がデジタル・ITプロジェクトのためにもっと多くの資金を投入し、科学・技術科目の教育を改善させるようなポジティブな環境を作ることは簡単でない。

大学や専門学校では、教育者の予算は多めに設定されているが、意志の強さや変化を起こそうとする意欲は必ずしも強いものではなかった。 ビジネスケースが意味を持つようになるまでに時間がかかり、そして、高等教育におけるデジタルシステム導入の価値・メリットを適切な人材が理解するまでにも時間がかかった。また、高等教育機関がデジタル技術を一斉に導入し始める前に、これらのシステムが十分に普及し、需要が高まるまでにも多大な時間がかかった。

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デジタルトランスフォーメーションを採用するメリット

学生は今、デジタルプラットフォームやツールに期待を寄せている。

大学生はキャンパスライフを始める前に、ソーシャルメディア(Facebook、Instagram、Snapchatなど)を使ってお互いを知るだけでなく、Google Docsのようなツールを使ってコースや講義のノートを共同で作成する。共同プロジェクトは、Basecampなどのプロジェクト管理ツール内で管理したり、Eメールやメッセンジャーのプラットフォームを利用したりすることができるようになった。

学生たちは自分たちの教育をよりシンプルに、より効果的にする方法を自ら見つけ出し、大学側からデジタルツールを提供する必要はなくなっていた。

このような効果的な草の根のイノベーションと同様に、教育者は効率よく集中管理を維持しつつ、学生と連絡を取り合う必要がある。既製の教育管理のデジタルシステムは、学生にコース教材へのアクセスを提供したり、小論文にフィードバックをしたり、講義ノートやリーディングリストをアップロードしたり、さらには出席できない学生のために講義のビデオを提供したりするのに最適な方法となっている。またこれらを使用することで、物理的な掲示板やメールボックス、電子メールよりも、迅速かつ効果的に学生とコミュニケーションをとることができる。

便利さはさておいても、このデジタル世界におけるリテラシーの高さのようなものこそが会社組織が期待し、必要としていることと言える。

知識とデジタルスキルを学生に教え、与えることで、生徒たちは卒業後に仕事の世界に対応できるように準備することができる。教育のより広い経済的影響を考えた際、これが教育者がデジタル化した未来を受け入れる主な理由の1つと言える。

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会社は、デジタル環境、ツール、プラットフォーム、情報収集の方法、コラボレーション、プロジェクト管理などのスキルと経験を持つ卒業生を歓迎し、また必要としている。ITなどの一部の分野では、コードを書いたり、技術的課題を解決したりする知識や経験など、より明確な分野特有のスキルも必要とされている。

Ciscoの米国公共部門教育担当ディレクターのRenee Patton氏が言うように、「効果的なデジタルトランスフォーメーションは、教育と学習を強化し、ビジネスプロセスをサポートし、効率を向上させるために、継続的かつ進化的なものでなければならない。また共同作業、ビジョンとリーダーシップ、文化、プロセス、方法論も必要となってくる」

デジタルトランスフォーメーションを受け入れることは、教育者、学校、学生、そして社会全体が進むべき道と言える。

配信元: e27 " Why digital capabilities aren’t fully deployed in the education sector"

https://e27.co/why-digital-capabilities-arent-fully-deployed-in-the-education-sector-and-how-to-harness-the-scope-20200429/

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執筆者
武田彩花 / Ayaka Takeda
Contents Writer
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