私たちは、インターネットが不可欠な世界に生きている。国連(UN)でさえ、インターネットは贅沢というよりも権利であると述べている。しかし、アフリカでは依然として数十億人もの人々がインターネットにアクセスできず、良くても低品質のインターネットを持っているか、またはそれを買う余裕がないかのいずれかの状況である。
問題は山積みであるが、多くの専門家が問題解決の最初の一歩は「インターネット・インフラの深化」であると述べる。Seacom、Glo、MTN、MainOneなどの企業が海底インターネットケーブルの敷設に取り組む背景には圧倒的なインフラ不足がある。
2020年5月、Facebookは37,000kmにおよぶ約10億ドル規模の海底インターネットケーブル建設を進める計画であると発表した。これは良いニュースのように思えるが、果たしてそうなのだろうか?現状分析を基に考察する。
海底ケーブル、世界の大陸を横断して通信信号を伝送し、各国をインターネット環境で接続する機能を成す。
「海底ケーブルは、陸上に敷設されているファイバーケーブルのようなものだが、水中に長期間にわたって存在しなければならないため、他素材で保護されている」と、通信業界のトップ企業のSimon氏は説明する。
海底ケーブルは、インターネットへの高速アクセスを可能にする。サービスプロバイダーが海底ケーブルに接続することで、多くの人々がインターネットへのアクセスが可能になるのだ。
「海底ケーブルはインターネットの容量と信頼性を提供し、各国の4G、5G、固定ブロードバンドアクセスのさらなる成長を支えている」と、Verrakki社のテクノロジー・メディア・テレコム(TMT)ビジネスディレクター、Ifeanyi Akosionu氏は述べる。
「これらのケーブルが損傷するとネットワーク障害を引き起こす可能性がある。接続速度が大幅に低下するか、ネットワークがオフラインになる可能性がある」と追加した。
海底ケーブルがあれば、インターネットの容量が増えるわけではない。サービスプロバイダーは、競争が激化して接続料金を安くするだけかもしれない。普通に考えられ場エンドユーザーのデータコストが削減されるはずだが、必ずしもそうとは限らない。
Akosionu氏によると、各国が必要なインフラを活用すれば、十分な国際的キャパシティを確保できなくなるという。
アフリカのインターネット網(出典:Many Possibilities)
Akosionu氏は、アフリカのインターネットケーブル容量の地域間格差を指摘している。よくよく見ると、この格差は大規模である。
Many Possibilitiesのデータによると、西アフリカと東アフリカの海岸には、それぞれ少なくとも100Tbpsのインターネット容量を持つケーブルがある。2021年末までには、その数は2倍になる可能性がある。
それに比べて、cable.co.ukの2019年のデータによると、アフリカのどの国も平均10Mbpsまでのインターネット速度を持っていない。マダガスカルは例外だが、同国は海底ケーブルの恩恵を受けており、平均22Mbpsの速度を実現している。
東海岸と西海岸で利用可能な1億Mbps(100Tbps)のうち、多くのアフリカ諸国は平均10Mbpsしか利用していない。
これらの国のほとんどは無線 2G/3G ネットワークに依存しているが、一部の国では世界標準よりも遅い 4G ネットワークにアクセスできるようになっている。
ラゴス、ナイロビ、ケープタウンなどの大都市では、まともなネットワーク速度が確保されているが、農村部では、まだ通信が届かなかったり、サービスが行き届いていなかったりする。
MainOne CablerのCEO・Funke Opeke氏は、10年前の創業時に販売開始したMainOneケーブル(10テラビット)は10%の稼働率しか出していないことを明らかにしている。
Facebookはアフリカの現在の通信容量を180Tbps増強するために海底インターネットケーブルを建設する予定である。一見すると上述の課題を解決する良い手段のように思えるが、果たしてそうなのであろうか。
Analysys Masonのレポート「THE IMPACT OF FACEBOOK'S CONNECTIVITY INITIATIVES IN SUB-SAHARAN AFRICA」(PDF)には、Facebookの取り組みはアフリカに最大500億ドルの利益をもたらすだろうと書かれている。
一方で、Facebookがインターネットインフラをラスト1マイルまで深化させるためにどれだけの投資をしているのかは明らかになっていない。
Akosionu氏は、GoogleやFacebookの動きは、該社が提供するプラットフォーム上での大量のデータトラフィックをスムーズにするためであると述べている。同氏によれば、これらの展開は、ケーブル容量の不足を適切料金でヘッジし、ルートの多様性を担保することが目的である。
Akosionu氏は、GoogleやFacebookの動きがアフリカの人々の快適なインターネット環境の構築に貢献しないと批判している。
Opeke氏は、GoogleやFacebook等のビッグテックが提供するOver-The-Top(OTT)サービスが、長年にわたって通信事業者の音声収入をゆっくりと蝕んできたという事実を指摘している。
データトラフィックが増加していると思われるにもかかわらず、音声収入の減少はデータ収入の増加によって相殺されていない。
「もし、通信事業者の利益率が徐々に侵食されていくとしたら、通信事業者はどうなるのだろうか?GoogleやFacebookの存在を考え、ラストマイルのインフラを構築するインセンティブを失ったらどうなるのだろうか?」
Facebook は通信事業者との提携を検討しているが、これらのインフラを展開する際に直面するであろう運用や規制上のハードルを考慮すると、通信事業者がどのような利益を得るのかは明らかではない。
例えば、ナイジェリアのいくつかの州を除いては、通信事業者が光ファイバーケーブルの敷設許可を得る前に高額な料金が請求される。現に、最近まで南アフリカの Telkom SAはブロードバンドを独占していた。
FacebookやGoogleの動きは今後も注視していく必要があるが、上記に鑑みると、アフリカ市民にとって手頃な料金でインターネットに接続するためにはまだまだ大きなハードルがありそうだ。
翻訳元:Slow Internet, expensive data, and the burden of sub-sea Internet cables in Africa