【農業の効率化】タイのアグリテック企業がテクノロジーで農家を救う方法

東南アジアで主要産業と位置付けられる「農業」に変革をもたらしたタイのAgriTechスタートアップ・Freshketの躍進について解説する。
農業

e27チームは毎月「Startup of the Month」の投票を実施しており、最も注目を集めるスタートアップを選出している。アイデア、チーム、資金調達、創業者などを考慮して、社内で3つのスタートアップが選ばれる。

10月の選出企業は、バンコクを拠点とするAgriTechスタートアップであるFreshket。同社は、レストランや最終消費者向けにプレミアムレートで農産物を販売することで農家の生活を豊かにすることを使命としている。

バンコク農家の苦境

東南アジア諸国の多くは農業が中心である。タイはその中でも農業が重要視されている国の一つである。農業は「国の骨格」とも位置付けられる。

Freshket創業者、CEOのPonglada Paniangwet氏は、タイ人口の3分の1を農家が占めていると語る。

「彼らは農業には長けているが、物流、梱包、販売面ではサポートを必要としている。」

農家は知識を持っていないがゆえ、利益の少ない価格を提示してくる中間業者を通さなければならない。これらの中間業者は、物流や製品のマージンコストを積み上げて、市場に農産物を届けている。

Paniangwet氏は、生鮮食品の卸売市場で生鮮食品の供給者として働いていたときに、これらの問題点を直接観察していた。彼女は、農家とバイヤーの両方と仕事をしながら、彼らの窮状を体感したという。

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「私は、サプライチェーン全体のプロセスが非常に面倒で非効率的であることを知った。その日以降、私はこの問題を解決して生鮮食品のサプライチェーン全体のプロセスを 効率化したいと思い始めた。」

Freshketのソリューション

Freshketは上記の問題を解決するために、加工センターやサプライヤーをまとめあげ、中間業者に頼りがちな農家との関係性構築を促した。

また、生鮮品の運営コストは相当高いため、複数の注文を一度にまとめて配送するクラスターモデルの利用を考えた。

農家のための加工や物流代行も実施している。同社の倉庫センターでは、注文を選別する前にカット、トリミング、梱包を行い、レストランに配送している。このようにして、同社は農家のために物流全般を支援している。

現在、Freshketはプラットフォーム上の農家の数を公表していないが、Paniangwet氏は2020年末までにネットワークをさらに拡大する計画を表明している。

最近では、シンガポールのVC Openspace Venturesが主導するシリーズAファンディングラウンドで300万ドルの資金調達に成功した。

教訓に基づくピボティング

2017年の創業当初、Freshketはサプライヤーと農家をつなげる「マーケットプレイス」という位置づけでしかなかった。

最初のモデルでは、サプライヤーは自分たちで料金を設定し、配送を自分たちで行うことを前提としてた。しかし、それが価格設定や納期の問題につながっていることに気づいた。

会社を立ち上げてから数ヶ月後、自分たちの価値提案が顧客の役に立っていないことを知ったという。

農家は価格設定や納期のコントロールができないため、買い手と売り手の価値観がぶつかり合ってしまっていた。

その後、チームはプラットフォームを単なる「マーケットプレイス」ではなく、物流と配送を自社で行う完全な「サプライチェーンプラットフォーム」へと発展させた。

COVID-19の影響

2020年になって、同社は再びピボットを余儀なくされた。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業がビジネスモデルの再検討を行う中、Freshketも大きな影響を受けたという。

3月22日、タイ政府がロックダウンを発表した際、すべてのレストランが一時的に閉鎖された。それまでB2B中心だったFreshketにとっては大きな痛手であった。

「3月23日に一般消費者向けにプラットフォームを公開することを決定し、24時間以内にモデル転換を図った。私たちはサービス面で先を見越した計画を立案し、一般消費者のための小さなサービスを開発した。」

しかし迅速なピボットは、独自の課題を生み出したという。

「私たちは一般消費者へのサービス面で大きな課題に直面した。コロナ以前までの私たちはレストランのみにサービスを提供していたため、私たちのチームはビジネス言語を基本としていた。しかし、一般消費者に対してビジネス言語は通用せず、感情面での訴求が必要となった。」

この課題も小さいピボットを重ねながら徐々に解決していったという。

結果、ロックダウン後、平均注文額の増加により物流コストが下がり、Freshketの需要は劇的に向上した。

同社はピボットを繰り返していくつもの課題を乗り越えることに成功した。今後は、一般消費者への受注販売も実施し、クラスターモデルをコンドミニアムやマンションなどにも適用していくという。Freshketの今後の成長が楽しみである。

翻訳元:Startup of the Month, October: Bangkok-based agritech startup Freshket

記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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