Startup Grind Bangalore の共同代表Umeysh氏が語る、インド版シリコンバレーの呼び声高いバンガロールの魅力

2016年から2019年の間にバンガロールで誕生したテックスタートアップの数は5541社と、インドの大都市ムンバイとデリーの合計より多い。バンガロールで生まれ育ち、現在はStartup Grindの共同代表、そしてアドバイザー・メンター・投資家として多数のスタートアップに関わっているUmeysh Ramalingachar氏にインタビューを行った。
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インド国内全体を通して、スタートアップの勢いは加熱している。そんなインドにおいて、バンガロールの存在感は大きい。インド版シリコンバレーとも呼ばれ、名だたるIT企業が集まり、多数のスタートアップが誕生している。

Bengaluru Innovation Report 2019によると、2016年から2019年の間にバンガロールで誕生したテックスタートアップの数は5541社と、インドの大都市ムンバイとデリーの合計より多い。また、同期間のバンガロール企業への合計VC投資額は$20Bに達しており、インドの都市で最高額を記録している。

バンガロールで生まれ育ち、現在はStartup Grindの共同代表、そしてアドバイザー・メンター・投資家として多数のスタートアップに関わっているUmeysh Ramalingachar氏にインタビューを行った。

- ご自身について教えてください

私はUmeysh Ramalingacharです。 バンガロール出身ですが、インド国内の他の地域や米国の西海岸、東海岸にも住んでいたことがあります。私がスタートアップに関わる仕事をしながら、さまざまな場所で暮らしてきました。

これまで、世界各地のスターアップエコシステムに15年以上携わってきました。仕事内容は、営業からマーケティング、戦略的パートナーシップの提携など様々です。基本的に資金調達に成功したスタートアップに関わってきましたがこれからはアドバイザリーや投資にも積極的に関わる予定です。

私は特定の業界に特化しているわけではなく、様々な業界に横断的に携わってきました。例えば、eコマース 、AI、機械学習やIoT、最近では廃棄物管理にも取り組んでいます。

- バンガロールのスタートアップエコシステムについて

COVID-19の流行前は、バンガロールのスタートアップの多くが資金調達に成功し、非常にうまくいっていました。しかしCOVID-19の流行により、多くのスタートアップが資金調達ができなくなったり、利益が出なくなったりしました。2021年2月現在、少しずつ生活は元に戻りはじめていますが、多くのスタートアップが倒産を余儀なくされました。

全体を通しては、バンガロールのスタートアップエコシステムは優れています。なぜなら、技術面では、シリコンバレーのスタートアップと比較しても勝るとも劣らないからです。事実、バンガロールでは、Eコマースにおいて成功している多くのスタートアップが誕生しています。特に「Flipkart」は、最も早く誕生したEコマーススタートアップで、急成長したECスタートアップのケーススタディの題材としても注目されています。

Razorpay」や「Byju's」のようテクノロジーの領域において活躍しているユニコーン企業も、バンガロールでローンチしています。「Razorpay」はペイメントゲートウェイを提供しており、技術的に優れています。

- バンガロールのスタートアップエコシステムが持つ特徴や他との違いとは

バンガロールの人々は、ニューヨークや、シリコンバレーのスタートアップエコシステムに追いつこうとしています。

また、バンガロールが他地域と異なる点は、人々の性格です。前向きやフレンドリーな人が多いだけでなく、先見の明がある人も多く、起業家精神もすばらしいです。物事への対応が素早く、設定したマイルストーンを迅速に達成することができる人が多いです。行動が早いため失敗を早く経験し、その経験を次の機会に活かしながら、物事を達成するために熱心に取り組んでいます。

他の地域でも似たような人々がいるかもしれません。しかし、これらの要素は私が実際にバンガロールで生きてきて、スタートアップの成長に大事だと思う要素です。

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- バンガロールのスタートアップエコシステムのサポート環境について

以前は支援的、協力的なエコシステムがありませんでしたが、現在はスタートアップエコシステムが成熟し、政府からの助成金や、アクセラレーターとインキュベーターも積極的にサポートしています。

多くのスタートアップが4人〜10人程度のチームで、政府からの補助金を利用し、コワーキングスペースを使用しています。また、インキュベーターは多くのメンターやアドバイザー、資金へのアクセスを利用してサポートしています。

- バンガロールの協力的な環境はどのように実現されるのか

- ネットワークのようなものがあるのだろうか?

ネットワークもありますが、単純に人々が友好的で他の起業家を助けようとする文化が根付いているように思えます。

私自身も経験がありますが、得た知見を周囲に共有したいと考えます。同じ船に乗っている仲間をサポートするようなものです。誰かを助ければ、良いカルマとして自身に還元されるかもしれません。良いカルマは長期的には自分を助けると私は考えます。そのようなメンタリティをバンガロールの人々は持っていていて、それはスタートアップや起業家に対する態度を示しています。

- 教育はスタートアップのエコシステムやシーンにどう影響するか

- Umeysh Ramalingacharさんは教育分野にも関わっている

スタートアップは経済面において重要な役割を果たしています。8~18歳の学生が起業家スクールで学び、若い起業家になっています。仕事の進め方や起業家精神を学び、スタートアップを始められるよう支援しています。幼いうちからこのような環境に身を置くことはとても大事です。経験を通してアイデアをブラッシュアップさせ、サポートを受け、実際に取り組むことができます。

私自身は25人の若者と協同し、約18のスタートアップアイデアを創出しました。若者たちは知的好奇心に溢れていて、わたしも多くのことを学びました。

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- インド政府からの支援について

- 教育の面でも、若い起業家を支援するという意味でも

はい、十分な支援があります。政府は前向きで、若い起業家を支援しています。

私もYTBC(Young Turks Business Challenge)のメンターとして参画しています。起業家エコシステムにアクセスできない起業家と協働します。若い起業家と一緒に仕事ができるのはとても光栄なことです。

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- バンガロールにユニコーン企業が多い理由

たくさんの要因があります。1つは、良いチームを雇っているということです。ユニコーン企業になるためには、たくさんの良い才能に恵まれる必要があります。資金へのアクセスも重要ですが、資金を調達できるかどうかは、良いチームありきです。

リーダーの明確なビジョンも大事です。目標を達成するためには、目標を明確に示し、何を実行するか検討しなければなりません。実行の段階は、個人の作業ではなくチームで行う必要があります。そのチームを先導するため、リーダーが明確なビジョンを示す必要があるのです。そのようなコミットメントがあれば、目標を実際に達成することができるはずです。

これらのスキルが実際にユニコーンを構築するために必要なスキルだと思いますし、バンガロールで私が見てきたものです。

- 日本のスタートアップや企業がバンガロールに進出するメリットとは

バンガロールとインド全体に共通して言えますが、インドは日本と積極的に提携してきました。インド、日本間の国を跨いだコラボレーションは以前にみられました。日本企業にとって、市場を獲得するためのインド進出には大きな意味があると思います。

企業が他国に進出するためには、その国に海外企業を歓迎する文化やマインドセットという地盤があることが大事になります。インド政府はそのような受け入れに前向きなのでぴったりなのです。

日本の企業がインドに進出する際は、サービスを微調整する必要があるかもしれません。日本で人気なサービスが、インドで必ずしも機能するとは限りませんからね。よって、インドに実際にきて、商習慣や人々の考え方などインドのシステムに慣れることが大事だと思います。

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- バンガロールのスタートアップエコシステムを示すキーワードと動向とは

「最先端技術」「革新性」「タレントのプール」でしょうか。

注目しているスタートアップは、「Iamhere」「Eco Emarket」 「The Talking Canvas」です。私はこれらのスタートアップと、戦略的パートナーのアドバイザー・メンターとして密接に仕事をしています。

「Iamhere」はAI技術を利用して、フレンドリーな人々と出会えるサービスを提供しています。「Eco Emarketha」は廃棄物管理に関わるスタートアップで、インド国内の廃棄物を0にすることを目指しています。「The Talking Canvas」はアートを通して、子どもたちの想像力を発達させるサービスを提供しています。

- COVID-19の影響について

ロックダウンによって学校が閉鎖され、全てがデジタル化されたことはスタートアップに大きな影響を与えました。学生はZoomで授業を受け始め、パソコンを使用する時間が大きく増えました。その結果、ビデオ会議アプリやプラットフォームの多くがビジネスの機会を得ました。

家で働く人が増えたのも大きいです。家での仕事の効率を上げるための、ソフトウェア・ハードウェア・アプリが新しく開発されました。

また以前はフードデリバリーに懐疑的な人が多かったですが、現在は全てのものが玄関先まで届くのが当たり前です。この変化により、eコマースに関わる企業はより利益を上げられるようになりました。

ロックダウンにより運動ができない人も増えましたが、そのような人々が運動を無料で楽しめるサービスにも人気がありました。多くのジムが閉鎖されましたが、アプリを通してロックダウン中も運動が楽しめたのです。

- 日本の読者へ

今回のようなインタビューの機会に感謝いたします。バンガロールのスタートアップエコシステムやインド起こっていることを日本の皆さんに共有できとても嬉しく思います。

私はこれまでにたくさんのスタートアップと働木、今後は日本の企業や日本のスタートアップエコシステムとも何らかの形で関わりたいと考えています。インド国内だけでないグローバルなネットワークを持っていますので、そのネットワークを活かしたいです。

日本のスタートアップ・インキュベーター ・アクセラレーターと働けたら嬉しいです。今後は、インドと日本の架け橋をもっと強固なものにしていかなければならないと思います。お互いを歓迎し合い、協力し合う、双方向のコミュニケーションを期待します。

CONTACT: Umeysh Ramalingachar

umeysh.ramalingachar@startupgrind.com

表題画像:Photo by Prasad Bhalerao on Unsplash (改変して使用)

執筆者
夏目 絢太 / Kenta Natsume
Writer
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