Jul 16, 2020
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南アフリカの「Voyc」は自社のAIコンタクトセンターシステムをどのようにしてアフリカ全土に拡大したのか?

南アフリカの黒人女性起業家が創業し、AIを活用したコールセンター向けシステムを手がける「Voyc」。アフリカ全土での事業拡大に至るまでのストーリーやポリシーと、そして今後の展望をまとめる。
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この記事は翻訳転載であり、配信元または著者の許諾を得て配信しています。
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コールセンターに電話すると「この通話はサービスの品質向上のため録音させていただいております」というアナウンスを聞くことがある。これは、多くの人が企業や団体に電話をかける時に耳にしたことのあるフレーズだろう。

これらのコールセンターは、私たちの通話を通して、そこで得たデータや測定の為の数値基準などを利用してカスタマーエクスペリエンスの向上に役立てている。しかし、それらの作業はほとんどのコールセンターにおいて手動や不完全なソフトウェアで行われていることが多いのが実情でもある。

50人のコールエージェントが毎日5時間電話対応を行うとしよう。このコールセンターでは、1日で250時間、1週間で1750時間、1ヶ月に7,000時間ものコールを処理しなければならないことになる。

数字を考えると、このケースにおいては何らかの高性能なソフトウェアを使わない限り、あまりにも非効率な作業になってしまうだろう。手動などで分析していては、貴重なインサイトは得られず、多くのコールが無駄になってしまうのだ。

この問題に対して、Lethabo Motsoaledi氏とMatthew Westaway氏は、コンタクトセンターの業務をモニタリングし、有効なインサイトを提供するAIソフトウェア「Voyc」の開発を決意した。

Google LaunchpadでのLethabo Motsoaledi氏(Voyc共同創業者兼CTO)。画像提供:同社提供写真

このVoycを通して提供されるインサイトは、顧客の潜在的なリスク、各エージェントのパフォーマンス改善、そして企業や顧客に対する公平性の確保など、その用途は多岐に渡る。

品質保証の担当者をサポートすること

Motsoaledi氏がtechpoint Africaに語ったところによると、この2人がスタートアップを始めたのは今回が初ではないとのことだ。実際、この2人は起業家として5年以上も仕事を共にしてきており、このVoycは3回目のビジネスになるという。

彼女によると、Voycはコールセンターの通話モニタリングという目的でスタートしたわけでないという。2016年から2017年にかけて、speech-to-textの技術と自然言語処理技術を使ったインタビュー解析のソフトウェアを探していた2人は、その時点でいい製品が見つからなかったことから、自分たちでVoycを開発するという選択肢にたどり着いたという。

「そして私たちはマーケットに挑戦することにしたのです」とMotsoaledi氏は述べた。

当初、2人の製品を購入しなかった企業の中に、2人の技術の使用例としてインタビューの解析というのは不向きだと逆提案する企業があった。そして、それこそがコールセンター業界の会社であった。

これらの声に耳を傾けたMotsoaledi氏とWestaway氏の2人は、コンセプトの設計に立ち返ることにした。とはいえ、コールセンターをビジネスのターゲットにすることは特に南アフリカにおいては課題も大きかったという。なぜなら、同国ではすでに通話録音の分野における10年以上の経験を持った企業が多数存在していたからである。

Motsoaledi氏が指摘するところによると、当時、南アフリカの大手企業の中には月間で200万件もの通話録音を行いながら、録音保存だけで終わってしまっているケースもあったという。しかし、保存だけでは意味がないと気づいた企業達は、Voycが得意とするような音声分析の導入へと舵を切りつつあったのだ。

当初こそ不安もあったが、結果的に、多くのコールセンターに働きかけるとその不安は和らいだという。それは、多くの企業が音声分析が普通のやり方では非常に複雑で時間がかる作業であるということを理解し始めていたからである。一部の大手企業では分析を完璧に実行するだけで半年以上かかるような場合もあったという。

「95%以上の場合、顧客の問題で苦情が入っても、企業はそれよりも後になってようやく問題に気づき始めるのです。そこで私たちのビジネスは、AIによって通話を100%モニタリングし、過失や問題に繋がりそうな会話部分にフラグを立てるというサービスを提供しています。」

Voycのウェブサイトより

同社のCTOであるMotsoaledi氏はVoycがどのようにAIと機械学習を用いているかを説明してくれた。

それによると、まず、Voycは通話をテキストとして書き起こす。そしてその過程で通常とは異なる会話、例えば脅迫などがあった場合は、その時点で会話が特定される。

次に、会話の丁寧さフラストレーションの度合い、怒り、悲しみなど、コールエージェントと顧客双方の感情を分析する。これによって、例えば顧客が希望しない商品を無理に買わせるといった行為があったかどうかや、どのエージェントが顧客の不満を募っているかということがわかるようになる。

そして、実のところこのVoycが印象的なのは、上記のようなAIによる学習能力というよりも、一連の通話解析をとてつもないスピードで処理しているという点にある。

Motsoaledi氏はこのことについて以下のように述べている。「Voycでは1日250時間分もの電話が、ものの数分で処理されてしまうのです。企業はどの電話がマニュアル通りに進まなかったか、注意が必要か、折り返しの連絡が必要か、といったことをすぐに確認できるのです。そもそも、品質保証担当者が同じ業務を手作業で完遂することはできないでしょう。しかし、私たちのシステムでは、何時間分ものモニタリングと解析処理を常に行なっており、それが機械学習の効果に繋がっています。」

アフリカはVoycにとって理想の市場ではなかった

2018年、2人はVoycで全面的に市場に乗り出したが、CTOのMotsoaledi氏によると、製品が市場にフィットするまで、実に1年以上もの歳月がかかったという。

当初、Voycはその対象をコールセンターサービスを持つあらゆる企業に設定していた。銀行、通信事業、保険、小売などである。しかし、マーケットへのフィットを考えると、ビジネスモデルの変更も含めて、実際に何ができるかという点にフォーカスする必要があったのだ。

保険業界において、電話経由での保険加入というのはごく一般的なモデルである。むしろ、多くの先進国においては実際の店舗に足を運んで契約する保険というのはあまり多くはないだろう。また、保険会社は皆、品質保証(QA)のための専任部署を設置しており、電話対応を含めて顧客サービスの品質を保証するために、それなりの予算を割いている。Voycが現在「保険会社」を主なターゲットとしているのはこのような理由があるからだ。

しかし、アフリカのほとんどの地域では、そもそも「保険」関連のビジネスはまだまだ発展途上の業界である。それはつまり、Voycのパートナーとなり得る企業が少ないという問題に繋がるのだ。

Motsoaledi氏はこう説明する。「私たちがアフリカの金融・保険業界で解決しようとしている問題は、他の市場と全く同じようなわけではありません。南アフリカの市場は特殊ですし、マラウイやナイジェリアなどの例もそれぞれで特殊性を抱えています。とはいえ、アフリカの人口のその大半が保険に加入せず、営業もコールセンターを介したスタイルが主流になっていることはあ共通です。」

また、Voycに対してはさらなる課題が待ち構えていた。南アフリカ発のスタートアップであるVoycは、はじめは1時間毎の従量課金制を採用していたが、後になってそれをクライアント毎に金額を変化させる形にせざるを得なくなった。結果的に、この変更はアフリカ全体での事業収益に悪影響を及ぼすものであった。

この点についてMotsoaledi氏によると、最初に請求していた1時間毎の料金はエージェントの最低賃金より高いケースが多く、一部のクライアントが支払い継続の難しさを感じていたという。

国際市場への拡大

もしあなたが大陸全体的な問題以外に取り組む、アフリカの国内スタートアップであるとして、一体何をすべきだろうか?それは、グローバルな課題への挑戦と国際市場への進出である。

Voycはアフリカの全体市場にチャレンジしたが、現在はリブランディングにより英国、オーストラリア、米国などの市場も視野に入れた国際的な業務拡大方針を進めている。

Voycのダッシュボード

Motsoaledi氏によると、これら欧米諸国の保険業界は南アフリカのそれによく似ているという。南ア、英国、米国、豪州のうち、少なくとも2ヶ国には同じようなその地域特有の有力な保険会社が存在しているという事情もあるのだ。

このような考え方で、Voycは1Life Insurance、Bryte Insurance、Momentum、Stangen Insuranceなどを含む、実に12社もの契約を獲得することができた。今回は、1企業あたりの支払い料金は月2,000ドル、年間25,000ドルからというモデルを採用している。

国際市場での足がかりとして、この南アフリカのスタートアップはオランダのあアムステルダムに本社を置き、南アフリカにもオフィスを設置している。Motsoaledi氏によれば、オランダを選んだ理由は同社のターゲット市場に近いからだという。

多様性、オンラインでの顧客獲得、そしてリブランディング

Voycが誕生したばかりの2019年初頭、同社はGoogle Launchpad networkの一環としてナイジェリアで時間を過ごした。その間、この若いスタートアップは通信業者、MTN、その他いくつかの企業から話を聞くことができたが、いずれも大きな収穫はなかった。また、南アフリカにおける顧客の一つであったStandard Bankの紹介で、ケニアにあるいくつかの関連会社へのアクセスを得たこともあった。

逆にいえば、Voycはフリーの企業としてマーケットにアプローチするという選択肢をあまりとらなかった。そしてこのことが、迅速なスケールアップの阻害になっていたのである。さらに言えば、コロナウイルスが大流行したことで、スタートアップにとってもオンラインでの顧客獲得がますます重要になっている。

「既存の大手企業と違って、私たちはクラウドソフトウェアという形でサービスを提供しています。当社のソフトウェアは設定も簡単で、顧客はすぐに自社コールセンターのシステムとリンクできることから、オンラインでの顧客獲得にも向いていると言えるでしょう。」

Lethabo Motsoaledi氏(Voyc共同創業者兼CTO)[中央]、Matthew Westaway氏(Voyc共同創業者兼CEO)[右]
出典: 同社提供写真

保険業界にソフトウェアを提供する大企業がすでに存在している中での競争という課題はさておき、現在Voycが克服しようとしている課題の一つは「多様性」であるとMotsoaledi氏は述べている。

南アフリカの黒人女性起業家という肩書きを持つMotsoaledi氏は、その重要性を身をもって理解している。「多様性は私たちが解決すべき重要課題の一つです。私たちは黒人エンジニアという属性の人々だけでなく、黒人の女性も雇用するようにしています。まだチャレンジ段階ではありますが、私たちはすでに最善の方法を見つけ、その方法がとるべき方法だという確信のもとで活動しています。」

これまで、Voycはエンジェル投資家やシードアクセラレータのTechstarsから多額の資金調達に成功している。とは言え同社は、資金調達の発表よりもリブランディングの発表を重要視している。Motsoaledi氏によると、Voycが市場に参入した2018年以降、これまでの2年間は準備期間と捉えて、あえてブランディングを行わなかったという。

「私たちは2018年にVoycを開始し、それ以来techstarsやGoogle Launchpadに参加してきました。また、製品開発や市場適合に時間を使っています。そして今、私たちはリブランディングとリローンチすべき時期にきていると考えています。しかし、そもそも何をしているのかを正確に伝えられるブランディングを行わなければ、それは本当の意味でのリブランディングとは言えないでしょう。」Motsoaledi氏は熱く語った。

最終的に、Motsoaledi氏はVoycのリブランディングに際して、アフリカだけでなくより国際的な顧客獲得やサービス提供を進めることが重要になるとみている。

翻訳元: How South African startup, Voyc, is taking its AI-backed contact centre software beyond Africa

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