太陽光発電は持続可能か。従来型ソーラーパネルの廃棄物を減らす新プロセス

太陽光発電はSDGsに関連して重要な役割を担うが、同時に、多量の廃棄物が発生する可能性がある。その問題に対し、イスラエルの研究者が劣化した材料を除去して交換する独自のプロセスを開発した。
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2050年に近づくにつれ、排出に依存したエネルギー源の導入と代替の重要性はますます高まっている。再生可能エネルギー技術は、化石燃料への依存を減らし、産業界から発生する温室効果ガスをなくすための努力の中で特に必要となっているものだ。

太陽光を電気に変換する太陽光発電(PV)は、人気で有望な再生可能技術の一つである。コストの低下と効率の向上により、2017年末までにPVの生産能力は世界で約400ギガワット(GW)に達し、太陽光エネルギーの生産量は驚異的なレベルとなった。国際エネルギー機関(IRENA)によると、イスラエルの再生可能エネルギー生産能力は2019年までに2300メガワット(MW)に達し、その95%以上が太陽エネルギーによるものであった。

1000ワットは1kWに相当し、100万ワットは1MWに相当し、10億ワットは1GWに相当する。

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現在使われている、従来のソーラーパネルによる出力は、一般的に225~365ワットの範囲だ。ワット数が高いほど、日照時間中に一日中発電できる電力量が多くなる。例えば、1日平均9時間の日照時間があるイスラエルで300ワットの太陽光パネルを使用した場合、2,700Wh(ワット時)、つまり2.7kWh(300×9)の再生可能電力を生み出すことができる。

しかし、太陽光発電は多量の廃棄物を発生させる可能性もある。ペロブスカイト系太陽電池パネルの世界的な展開に対し、イスラエルの研究者たちは、太陽電池の構造に関する最近の研究で「経年劣化による環境および経済的な問題を引き起こしている」と示唆している。

そして彼らは、劣化した材料を除去して交換する独自のプロセスを開発し、「将来のための、より持続可能なグリーンエネルギー生産」への道を開くことに成功した。

電気と廃棄を生成する?

太陽光発電はエネルギー部門の大幅な脱炭素化を可能にし、2023年までに太陽光発電の容量が2017年の水準から3倍になる可能性があるにもかかわらず、有害廃棄物の不適切な管理の結果、環境汚染・経済問題が発生することが予想されている。

太陽電池パネルの寿命は通常20~30年であるが、これは主に経時的な光の浸食、温度による劣化、太陽電池のセル割れなどが原因である。このような時間が経過すると、鉛(Pb)やカドミウム(Cd)などの化学物質が周囲を汚染しやすくなり、また地中に浸出したり、飲料水を汚染したりする。

過去25年間の開発では、適切な処分についてはあまり関心がなされなかった。しかし今後見込まれている設置数の増加が、多くの太陽電池パネルを使用済み(EOL)の段階に変え、問題が積み上がっていくことになる。

IRENAのデータによると、世界のソーラーパネル廃棄物は2016年末までに25万トンにのぼったと推定されている。

(引用元:本文中のLioz Etgar氏がNoCamelsに提供、SUNRYSE. MAGが引用。無断転載・利用厳禁)

具体的には、例えば日本のソーラーパネル廃棄物は2040年までに1万トンから80万トンに急増すると予測されているが、その安全な処分方法について、詳細な計画は発表されていない。また、カリフォルニア州も、環境意識の高い州であるにもかかわらず、適切な処分方法の提案は未だ存在していない。さらに、米国と比較して2倍の数量のソーラーパネルを生産している中国でさえ、劣化したソーラーパネルの処理方法を規制していない。これらの国は太陽電池モジュールの効果的なリサイクル方法の研究に力を入れているが、このプロセスのデメリットとしては、太陽電池の損傷、高額な設備、高いエネルギー需要、有害な排出などが挙げられる。

ペロブスカイトのポテンシャル

従来のシリコンベースの太陽電池材料に代わる材料を確立するための広範な研究が行われており、現在、薄膜ペロブスカイト太陽電池が太陽光発電の進歩のための最有力候補となっている。従来の太陽電池パネル材料とは異なり、ペロブスカイトは、独自の結晶構造を持つ材料であり、太陽光からの光子を電気に変換する効率が同等であることを特徴としている。ペロブスカイト太陽電池には、同等の効率性以外にも、他の利点がある。

その一つはコストに関するものだ。ペロブスカイト系太陽電池を構成する材料はすべて人工物であり、溶液加工と呼ばれる工程を経て低コストで製造できる。このため、ペロブスカイトの製造は拡張性があり、他の太陽電池技術に比べて製造コストが大幅に低くなる可能性がある。一方、従来の太陽電池は、結晶シリコンを原料としているが、これは地球から採掘し、加工してから製造する必要がある。

「既存の太陽電池技術のコストを見ると、これまでと比較して大幅に下がったとはいえ、高価で複雑な半導体システムであり、製造が非常に困難です」と、米国エネルギー省国立再生可能エネルギー研究所の上級科学者Joe Berry氏は語った。ペロブスカイト太陽電池を利用することで、太陽電池の製造に伴う複雑さとコストを削減できる。

魅力的な素材に思える薄膜ペロブスカイト太陽電池だが、残念ながら時間経過による劣化という1つの問題が残っている。光活性ペロブスカイト材料は通常、太陽電池パネルの他の層の間に位置しているため、太陽電池のリサイクルを妨げる。したがって、従来のシリコンベースの太陽電池パネルと同様に、同様のEOL廃棄物発生問題が発生し、コストのかかる製造状況のサイクルを繰り返すことになるのだ。

イスラエルの新しい研究が新たな道を開拓

喜ばしいことに、ヘブライ大学の研究者たちは最近、ペロブスカイト太陽電池の寿命と機能性を向上させる方法を発見した。これは劣化したペロブスカイトを除去して交換できるように太陽電池モジュールを設計することで、寿命と機能性を向上させ、EOL廃棄物の増加を防ぐというものである。しかし、これは研究の当初の動機ではなかった。

喜ばしいことに、ヘブライ大学の研究者たちは最近、EOL廃棄物の増加を防ぐ方法を発見した。これは劣化したペロブスカイトを除去して交換できるように太陽電池モジュールを設計することで、ペロブスカイト太陽電池の寿命と機能性を向上させるというものである。しかし、これは研究の当初の動機ではなかった。

「これは最初から計画されていたものではありませんでした」と、ヘブライ大学化学研究所の上級講師であるLioz Etgar教授は言う。「非常に簡単に作ることができ、高効率で、より長い期間動作する、低コストの太陽電池を開発する方法を見つけることが当初の動機でした。」

(ITO - Indium Tin Oxide - は、ペロブスカイト層内の粒子である。この粒子は導電性の金属酸化物で、他のナノ粒子材料よりも過酷な化学的・熱的条件に耐えることができる。画像引用元:本文中のLioz Etgar氏がNoCamelsに提供、SUNRYSE. MAGが引用。無断転載・利用厳禁)

効率の面においては、Etgar氏と彼の研究チームは有望な前進を遂げている。「我々の太陽電池を他のペロブスカイト系太陽電池と、例えば最高効率のペロブスカイト系太陽電池と比べると、現時点ではまだはそれらの太陽電池より少々劣っています。」と彼は説明した。「しかし、我々は昨年、進歩を遂げています。私たちの研究が発表された後も、以前よりも効率の良いパネルを手に入れていますが、高効率のペロブスカイトよりはまだ少々低い程度です。」

劣化した半導体ペロブスカイトを除去し、新しいペロブスカイト材料で置き換えることができることは、太陽電池の構造を研究していたチームが後に発見したものだ。「ペロブスカイトをベースにした太陽電池はもちろん、ペロブスカイトをベースにしていない太陽電池もこんにちは存在しないため、これは非常にユニークなことです」とEtgar氏は言う。

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Etgar氏と彼の研究チームは、現在使われている従来型太陽電池の予想寿命が約25年であることを認めながらも、まだいくつかの課題を抱えている。「現在、我々の太陽電池は、劣化して交換が必要になるまで数年は持ちます。しかし、これはまだ開発中であり、我々のペロブスカイト太陽電池はまだ我々の望む耐久性ではないことを意味します。」

(このプリンターは太陽電池の各層をスクリーン印刷用のメッシュで印刷し、適切な厚さと寸法を実現する。画像引用元:本文中のLioz Etgar氏がNoCamelsに提供、SUNRYSE. MAGが引用。無断転載・利用厳禁)

劣化したペロブスカイトは除去された後、特別な廃棄物処理に入るが、Etgar氏はこの材料のリサイクル性を強調した。「劣化したペロブスカイトを洗って別の領域に使うことができたとしても、それを容器に移すのです。洗って容器に移し替え、少々かき混ぜて加熱すれば、また使えるようになります。」

Etgar氏の研究チームに加えて、Oxford PVSaule Technologiesのようなヨーロッパの新興企業の累積的な努力も、ペロブスカイトをベースにする太陽電池の商業化を早めるために取り組んできた。そしてその中で「2年から5年はかかるだろう」とEtgar氏は予想している。

しかし、イスラエル国内での実装は、最初は中央集権型の太陽エネルギーファームではなく、独立したオフグリッドアプリケーションに向けたものになるだろうとEtgar氏は推測する。

「おそらく、ビルや農業、屋内でのアプリケーション、さらにはオフィスや携帯電話にも適用されるでしょう。シリコンベースの太陽電池は競争力のある技術があるため、このような種類の太陽電池を活用する最初のアプリケーションになると思います。」と彼は結論づけている。

※内容や時制は、翻訳元記事が執筆された2021年1月を基点とします

翻訳元:https://nocamels.com/2021/01/solar-energy-clean-israeli-researchers-waste/

表題画像:Photo by Sungrow EMEA on Unsplash(改変して使用)

記事パートナー
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執筆者
SUNRYSE / SUNRYSE
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