「商品を無料で利用できるとき、あなた自身も商品である」という有名な言葉を何年も前に初めて知った時、私はその意味を理解して怖くなった。しかし「Google」の検索エンジンがとても便利だったので、頻繁に利用していた。
「Netflix」のドキュメンタリー「The Social Dilemma」を見て、私は再度恐怖心を抱いた。おそらく、ソーシャルメディアのデトックスを試みる人もいるかもしれない。
興味深いことに、この有名な言葉はソーシャルメディアが登場するずっと前から存在していた。もともとは1970年代に、テレビがどのように広告から利益を得ていたかを表現する言葉だった。
もしもオンラインメディアが、テレビなど伝統的なメディアの既存のビジネスモデルを採用しないとしたら、他にどのような選択肢があるのだろうか?ここで問題になってくるのが、オンラインメディアに活用されている人工知能(AI)である。この技術は非常に汎用性が高く、人間の手に負えないこともある。
「Netflix」のドキュメンタリーが描くユートピア的でディストピア的な映像に対して、きっと誰もが共感できるだろう。デジタル広告市場の成長に最も貢献している「Facebook」や「Google」だけでなく、他のソーシャルメディアのプラットフォームも、ドキュメンタリーに頻繁に登場している。
ここからは、現在のインターネットのアルゴリズムを考えるために、広告主の立場に立って考えてみよう。もしあなたがアプリを通じて乳児用の靴を販売する立場にあった時、適切なユーザーをひきつけるためには、何ができるだろうか?
あなたが考案して発信した広告は、妊娠初期の症状を「Google」で検索した人に向けて、ポップアップされるようになる。また、「YouTube」で妊婦のためのワークアウトセッションを見たり、子供のためのワクチンについての本を注文したり、 在宅出産のための「Facebook」のグループに参加したユーザーに対しても、広告が表示されるだろう。
デジタル足跡やアプリのアルゴリズムに加えて、広告主はユーザーの携帯電話のIDを介して、ユーザーの活動を追跡することすらできてしまうのである。
「Apple」デバイス上では、このIDがGoogle広告ID(GAID)と呼ばれている。「Android」の端末では、識別子(IDFA)と呼ばれている。現在「Apple」は、オペレーティングシステムをアップグレードする計画を打ち出しており、ユーザーの許可なしにパーソナライズされた広告を表示する機能を制限するシステムも開発しているという。
もちろんプラットフォーマーや広告主たちは、表面上では、ユーザーの生活を台無しにするようなことは全く考えていない。ユーザーは広告内容を無視できるからである。しかしもしも自分の選択が、広告やプラットフォーマーから影響を受けていることを知ったら、あなたはどう思うだろうか?ユーザーの興味や関心が広告主と共有されていることを知ったら、あなたはどのように感じるだろうか?
「このアプリはあなたの行動を追跡する許可を希望している。あなたのデータは、パーソナライズされた広告を配信するために使用される」というメッセージが届いたら、あなたはどのように思うだろうか?
「Netflix」のドキュメンタリー「The Social Dilemma」をみると、ソーシャルメディアのアルゴリズムが、私たちのオンラインとオフラインの意思決定にどのように影響を与えているかを理解できる。また不穏なことに、アフリカ諸国を含む多くの民主主義国家において、「Facebook」がいかに分裂的な役割を果たしているかも示されている。
世界のインターネット普及率の平均は53.9%である。しかしアフリカは28.2%と比較的低いが、もちろん国によっても違いがある。西アフリカの国の中には、高いインターネット普及率を誇る国もある。
テック企業の巨人たちは、なぜアフリカでのインターネット拡大に興味を抱いているのだろうか?海底ケーブルの整備やオフラインアプリの配信など、多額の投資が必要な点を考慮すると、彼らは短期的な利益を念頭に置いて投資しているわけではないだろう。
アフリカ進出の動機として考えられるのは、今後インターネットに接続する人の大幅な増加である。より多くのアフリカの人々がインターネットにつながるようになると、ターゲット広告の対象となる多くの顧客を囲い込むことができるようになる。
例えば、Facebookの月間アクティブユーザー(MAU)が約17億人いるアジア太平洋や米国、カナダや欧州を除くと、それ以外の地域では10億人ほどのMAUが存在するという。2019年の[ナイジェリアのMAUは3300万人](https://techpoint.africa/2019/10/14/facebook-nigeria-active-users/#:~:text=While South Africa has 28,16 million active daily users.)で、アフリカでは最も高い。%E3%81%A7%E3%80%81%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%A7%E3%81%AF%E6%9C%80%E3%82%82%E9%AB%98%E3%81%84%E3%80%82)
しかしインターネットの普及が進んだ国々においては、これまでにうつ病の蔓延や政情不安の勃発、フェイクニュースの流布により、若者の自殺率の増加をもたらした点についても留意しなくてはいけない。
これまで行われてきた数々の議論において、インターネット利用に対して講じたアフリカ政府の対応は、様々な場面で批判されてきた。
ヘイトスピーチやいじめ、誤報、その他の悪質な行為に関して、インターネットのツールがどれほど危険であるかという証拠はもちろん存在する。しかし政府が講じる措置は時に極端であり、不適切だとも言える。
市民の権利を侵害する可能性のある「ソーシャルメディア法案」を法律として成立させた国がある一方で、ソーシャルメディアの利用に課税し始めた国もあれば、課税を試みている国もある。
またアフリカの多くの国では、インターネット上での活動に対して検閲を行っている。検閲は、誤報やヘイトスピーチ、インターネット犯罪を防止するための法律に則って実施されている。これまでに、試験の不正を防ぐためにインターネットを停止した事例が報告されている。しかしこれらの事例のうち、どれだけの数が望ましい結果をもたらしたのかは明らかではない。
「Twitter」の元エンジニアリング担当で、シニアバイスプレジデントだったAlex Roetter氏は、「大きくなればなるほど、変わることは難しい」と考えている。しかしアフリカのインターネット市場がまだ黎明期であることを考慮すると、インターネット利用に関する数々の指摘や課題は、的を得ていると言えるだろう。
翻訳元:https://techpoint.africa/2020/09/18/social-dilemma-social-media-africa/
表題画像:Photo by Sergey Zolkin on Unsplash (改変して使用)