Contxtoーラテンアメリカでは、これまでに多くの観光客が先住民族のアートワークや商品を購入していた。大量消費・大量生産が原則のファストファッション市場の流通経路とは異なり、大半の伝統工芸品は非公式に流通していた。
こういった現状を変えているのが、現在拡大を続けているEコマースである。2019年末から流行している新型コロナウイルス感染症は、ラテンアメリカがEコマースの導入を進める大きなきっかけになった。「eMarketer」が発行したラテンアメリカのEコマースレポートでは、2020年6月に2桁の成長を記録しており、第4四半期の成長予測としては、成長率が20%近く上昇しているという。
小売業はすでに飽和状態の産業とも言える。そのなかでインターネットショッピングは、先住民族の職人たちが、自身の工芸品や商品をアピールするためのプラットフォームを提供している。デジタルネイティブ世代は、自分たちの遺産を誇りに思うと同時に、先住民族のコミュニティを保護するだけでなく、成長につながる方法を模索していたのである。
その結果、テクノロジーを通じて職人にスポットライトを当てることで、世界を舞台に工芸品を販売する土台を作り始めている。
「新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、多くのブティックスタイルの店舗が職人が制作する織物の販売に興味を示していた。しかし、コロナウイルスはすべてを変えてしまった」。これは、アルパカ農家やチリの工芸職人と北米の消費者をつなげるスタートアップ「Florezca Designs」の創設者、Anthea Darychuk氏の言葉である。
物理的な店舗が次々と閉店する中、彼女たちはオンラインストアである「Shopify」に注力し始めた。また、ソーシャルディスタンスを遵守しつつも、スモールビジネスとして継続的に成長するために、「Facebook」や「Instagram」のオンラインショップにも目を向けたのである。
新型コロナウイルス感染症が流行する以前からEコマースを活用していた企業は、2020年3月ごろからオンラインでの販売規模を拡大し始めた。また「eMarketer」によると、初めてオンラインで買い物をした人は、2020年には1080万人と予測されている。つまりラテンアメリカでは、年末までに、1億9,170万人の人々がEコマースに慣れ親しんでいることになる。
職人的なデザインをほどこした旅行グッズを展開するメキシコの「Someone Somewhere」は、4年前にオンライン展開を始めた。しかし創設者たちは、会社を立ち上げる数年前から、すでに先住民コミュニティの発展に向けた活動に取り組んでいた。
そのうちの一人であるFátima Álvarez氏は「オンラインであることが、メキシコの先住民族のコミュニティと世界をつなぐ鍵となっている」と語る。
物理的な店舗を展開する「Someone Somewhere」もまた、コロナ危機を乗り切るために様々な施作を打ち出した。「私たちは2020年の初めに米国で4つの販売拠点をオープンする準備を進めていた。しかし新型コロナにより計画が延期になってしまっため、何とか別の方法を考えなくてはいけない状況になった。そこで私たちは職人の力を借りて、珍しいギフトを作り始めた」と同社のCPOであるAdelaida Correa氏は言う。
「新型コロナの影響で多くの企業が閉鎖を余儀なくされたが、メキシコではEコマースの売上が3倍近くに増加している」と、同社のCPOであるAndrea Correa氏は語った。今後は米国での立ち上げ計画も再開し、メキシコシティに別の店舗もオープンさせる予定である。オンラインとオフラインを組み合わせた販売を進め、事業の拡大を目指している。
新型コロナの影響で在宅勤務を取り入れる人々が増え、ファストファッションへの需要は低下しつつある。一方で外出や旅行といった人間の活動が減ったことで、汚染された自然環境が少しづつ回復しているというニュースを耳にしたこともあるだろう。
ファッション業界は、商品を製造するうえで自然環境に大きな影響を与えている。しかし先住民族のコミュニティでは、自然と共存する伝統的な手法を用いて、長年テキスタイルを生産してきた。
「私たちはアルパカウールの自然な色を使って製品を制作をしている。ファストファッションで使用する染料の多くは、水質汚染を引きおこす大きな原因となっている」と、「Florezca Designs」のAnthea Darychuk氏は言う。
彼女はさらに「Florezcaは女性起業家と環境に配慮した買い物客を結びつけ、世界的な変化を後押ししている。弊社は商品のすべてを現在はオンラインで販売している」と続けた。
サステイナブルな取り組みを手がけるファッションブランド「Hiptipico」は、オンラインショッピング大手の「Asos」をはじめ、「Topshop」や「Urban Outfitters」などにも取り上げられている。しかし「Hiptipico」は独自のウェブサイトを通じて、ユーザーがカスタマイズできる商品も販売している。グアテマラのマヤ刺繍を使った手作りのアクセサリーなどを依頼できるという。
規模が小さい企業は、柔軟にビジネスを展開できる。「Hiptipico」も例外ではなく、ラテンアメリカの都市でマスクの着用が義務化されるとすぐに、フェイスマスクの製造に目を向けた。
同社は過去のプロジェクトで残った生地の端切れを活用し、グアテマラのズニル地方から100%リサイクルされたテキスタイルを使用してマスクを手作りしている。さらに作り手である先住民たちは、デザインに様々なメッセージを込めているという。
テクノロジーの活用は、地球や先住民族の文化の保全にもつながるだろう。
小売業者であれば誰でも、実店舗でビジネスをスタートさせることがいかに難しいかを知っているだろう。さらに新型コロナウイルスは、ファッションブランドの立ち上げもより困難なものにしてしまった。しかし同時に、新たな顧客も生み出しつつある。「スプラウト・ソーシャル」によると、2020年の4月にはすべてのプラットフォームと業界で、流入エンゲージメントが1日あたり44件増加したという。
SNSは新しいファッションやブランドを積極的に探している多くのユーザーにリーチできるツールである。「Facebook」や「Instagram」もオンラインショップの立ち上げをサポートしている。
これらのマーケティングプラットフォームは、中小企業をターゲットとしている。ユーザーはウェブサイトの開発者と契約せずに、迅速にオンラインサイトを立ち上げることが可能である。スタートアップはプラットフォームを利用して、すでに獲得したSNSフォロワーを直接ターゲットにして、ビジネスを展開できる。
長年伝統を継承してきた職人たちはテクノロジーを駆使して、グローバル市場で堂々とした存在感を放ちつつある。
翻訳元:https://www.contxto.com/en/soapbox/e-commerce-empowering-indigenous-artisans/