韓国においてSnapchatはInstagramのように広く普及しているとは言い難い。そしてその大きな理由はSNOWというアプリにあると考えられる。
SNOWは韓国発のカメラアプリで、Snapchatのようなフィルターや効果を搭載したいわゆるメイクアップカメラアプリである。 このSNOWでは、画像や動画に対して、絵文字やフィルター、おかしな衣装・マスク、そして無数のGIFなどを編集で付け足すことができる。
一見するとSNOWはSnapchatによく似ている。 しかし、SNOWはアジアのユーザーをメインターゲットに、独自のマーケティング戦略で製品やサービスを大きく売り込むことに成功した。
例えば韓国では、ソジュ(韓国の地酒)やK-POPスターのスタンプなどを提供している。また、日本などではまた独自のスタンプやフィルターを用意している。
Snapchatは韓国のマーケットに対する知識やノウハウがなく、SNOWに遅れをとっている。 2017年時点で、Snapchatはアジアにオフィスを持っておらず、現地のフリーランサーなどを雇って現地版の開発を行っていた。しかし、結果としてこのやり方は上手くいったとは言えないだろう。
SNOWは自身のアプリにSnapchatのようなSNS的性格を持たせず、あくまでもカメラエフェクトを使った楽しみのあるエンタメアプリとしての役割に集中させた。この結果、SNOWは大きな成功を収めたと言える。 実際に、韓国で大変人気のある出会い系アプリBumble!よりも多くの月間ユーザー数を抱えている他、Apple App Storeでは4.2以上の評価を得ている(Snapchatは3.8)。
SNOWのインターフェイスはSnapchatとよく似ている。 このアプリではユーザーはチャットをしたり、ストーリー機能を使って友人とシェアしたり、そして面白いフィルターをかけたりすることができる。
このARフィルターこそがSNOWが人気を博す理由である。 韓国のユーザーが好むのはARの絵文字機能とも言えるフィルターやエフェクトなのだ。この機能ではユーザーは自分の顔にエフェクトをかけたり、文字を重ねたりできるだけでなく、Snapchatにはない豊富なレンズ機能も利用することが可能である。
ARフィルターの基本動作はカメラが自動でユーザーの顔を分析し、そしてアドオンでマスクすることにある。 アドオンはユーザーの顔や表情を簡単に読み取ることができ、出来上がった「作品」はGIFとしてSNSなどで簡単に共有することができるのだ。 もちろん、既存の写真などにオーバーレイしたりすることも可能なほか、マスク効果だけでなく細部のメイクアップまで施せるようになっている。 これらの至れり尽くせりな機能は、韓国人(やその他アジア人)が大好きな「キュート」な要素を余すことなく取り入れており、ユーザーが自由にクリエイティブな行動を起こせるように促している。
2017年、SNOWが韓国で大流行した。きっかけは韓国のユーザーが「飲み会」の時にこぞってSNOWを使い始め、それがどんどんと拡散されていったことにあるという。韓国は飲酒文化が強いことで知られており、この理由にも納得だ。
この楽しくキュートなアプリは、口コミで人気を拡大していった。結果的に韓国では、芸能人やK-POPスターがテレビやFacebook、LINE、Twitter、InstagramなどでSNOWの写真や動画をシェアし始めたことで大きな火がついたと言える。
最近、韓国ではSNOWのストーリー機能が人気であるという。 ストーリー機能の動画は一定期間で消えてしまうが、その間に自分の友人たちに手軽に見てもらえる。
SNOWはソフトバンクとセコイアチャイナなどから5000万ドルの投資を受けた。いずれも世界的に有名な投資グループだ。 今後、彼らはARや顔認識の技術をさらに進化させ、BTSやTwiceといった人気のあるK-POPグループとの提携を強めることだろう。
現在、SNOWのユーザー数は2億5000万人を超えている。しかし、この人気を維持するために、SNOWは新しく「アバター」にも力を入れ始めているのだ。
SNOWが展開するアバターサービス「Zepeto」は2019年のバックローンチ以降、1億5000万人以上ものユーザーを獲得している(アクティブは1000万人ほど)。 そして、このユーザーの大半は中国からのアクセスであるという。
このアプリは自撮りした写真を、アニメーションのついたアバターに自動でレンダリングさせるというものである。 つまり、ユーザーは自分にそっくりなキャラクターのアバターを作り出すことができるのだ。
ZepetoはSNS的な機能も持っているので、ユーザーはアバターを使って他者とオンラインで交流することも可能だ。この光景はまるで「ザ・シムズ」(シムシティの住人達にフォーカスした大人気ゲーム)の世界であるという。
SNOWはZepetoを収益化するために、バーチャルアイテムやスペース、さらにはアップグレード機能の販売を進めている。実際に、このプラットフォームを通じて販売された6億個ものバーチャルアイテムは、すでに1000万ドルを稼いでいるとのことだ。
また、Zepeto Studioと呼ばれるバーチャルマーケットプレイスでは、サードパーティーのアーティスト達が自由に服やアクセサリーなどのアイテムを販売できるようになっている。現在ではナイキやディズニーなどの世界的な人気ブランドも進出している他、中には独立のデザイナーがこのZepeto Studio上のアイテム販売で生計を立てている例もあるという。
翻訳元:https://seoulz.com/snow-the-best-beauty-and-makeup-camera-app-in-korea/
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