Marimekkoの生き残り戦略:Slush2022 イベントレポート

長い歴史を持つフィンランド発のアパレルブランド「Marimekko」が語ったweb3時代の生き残り戦略。
ファッション サーキュラー・エコノミー ブロックチェーン 大企業

Slush2022の会場内ではメディア向けの記者会見が複数開催されており、SUNRYSEはフィンランド発のファッションブランド「Marimekko」の開催する記者会見に参加した。登壇したのは「Marimekko」にてイノベーション部局長(Head of Innovation Works)の役職を持つSuvi-Elina Enqvist氏とDX・開発部門(Digital Transformation and Development)にてディレクターを務めるJarno Kartela氏の2人だ。

写真:SUNRYSE

メタバースへ参入する「Marimekko」(Marimekko enters metaverse)をテーマに開催されたこの記者会見では、1951年に創業し長い歴史を持つファッションブランドとしての「Marimekko」が、どのように現代のニーズに応え、新たなトレンドへと対応していくかについて話が展開された。

記者会見において両氏は、分散・分権化(decentralization)という言葉がキーワードであり、その分散・分権化が、NFTやブロックチェーンと結び付きながら現在のトレンドとなりつつあることに触れた。その上で「Marimekko」を含む多くの歴史ある企業はこのトレンドへ乗り、貢献しなくてはならないとした。また、これまで「Marimekko」では、アパレル業界におけるトレンドであり共通の課題となっている持続可能性(Sustainability)を重視してきたが、今後はこれまでのビジネスモデルの先を見据えた、サーキュラーな形のサプライチェーンを構築する必要があるという。

ここで同社はより持続可能性の高い未来を見据える上で、分散・分権化というキーワードを紐づけ、新たな資源調達方法への転換、すなわちより分散化された製造方法への転換が必要であると話した。「Marimekko」はこれらの考えに基づき、裁断クズなどの廃棄物を原料とした再生コットンの活用を通じた完全に閉じた製品ライフサイクル(closed-loop clothing production)の実現につながる、同社初となるパイロットプロジェクトの開始を記者会見内で初公開した。パイロットプロジェクト自体はポルトガルの繊維メーカー「Pedrosa & Rodrigues」と共同で実施されるものであり、今後カプセルコレクション(小規模で数の限られた新作)として完全に閉じた製品ライフサイクルによる3つの製品を2023年に販売する。

写真:SUNRYSE

なお「Marimekko」はこのパイロットプロジェクトにつながる最初の製品として、同社のメタバース空間にてUnikkoパーカーを公開した。「Marimekko」の特徴的な花柄により彩られるメタバース空間上には3Dアバターの”Mari”が登場し、”Mari”がデジタル資産としてのUnikkoパーカーを着用する演出が行われた。このメタバース空間自体はSlush 2022以降も公開されているものであり、広く一般にアクセス可能なものである。

写真:SUNRYSE

これらの内容について「Marimekko」は記者会見に限らずプレスリリースにおいても同様の内容を発表しているが、記者会見においては「Marimekko」が取り組もうとする4つの問いについても触れられた。

提示された問は、デザインプロセスをもっとインクルーシブにできないか、製造過程において顧客のニーズをリアルタイムに反映できないか、次世代のストーリーをどう伝えていくべきか、分散・分権化やサーキュラーをキーワードにビジネスを転換していく中でどのようにより大きな価値を生み出すか、である。「Marimekko」はこれら4つの視点を提示した上で、それぞれを課題として見据え、取り組む姿勢を示した。例えばデザインプロセスをインクルーシブにする過程について、同社は既に顧客の声を最大限取り込めるよう努力を重ねてきた。その上で、DAO(分散型自立組織)を活用することでより多くのプレイヤーを巻き込み、同社が元来掲げてきたビジョンとデザイン能力を掛け合わせて、次なる顧客中心主義なデザインに転換していく姿勢が挙げられた。

「Marimekko」はこれまで民主的なビジョン、ミッション、カルチャーに基づき、若いクリエイターを呼び寄せながら常にアーティストやアカデミア、イノベーターに対してオープンであった。工場にイノベーションハブを設け、R&Dを促進して産業全体を後押ししながら大胆なものを生み出してきたとした上で、分散・分権化やサーキュラーといった新たなトレンドを意識しながら歴史の長い企業として挑戦を続け、未来を築いていくと締めくくった。

写真:SUNRYSE


イベント開催のご案内

この度、SUNRYSEチームがSlush 2022の報告会イベントを開催致します。SUNRYSR MAGだけではご紹介しきれない個別のスタートアップ事例やインタビューの様子、会場内の設置ブースや白熱したピッチバトルなど現地でしか得られないリアルな雰囲気をご紹介いたします。奮ってご参加ください。

詳細

場所:オンライン開催(ZOOM)

日時:12月20日(火)19:00~20:00費用:無料

お申し込みはこちら:TechPlay, Peatix

※本イベントは終了しております。スタートアップ紹介のソリューションをご希望の方は、こちらへお気軽にお問い合わせください。


表題画像:Photo by SUNRYSE

執筆:井田 新

編集:藤澤 みのり

表題画像作成:鬼頭 清香

執筆者
井田 新 / Arata Ida
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