世界睡眠デー(2021年3月19日)では、5人の睡眠に関する専門家がHAXのモデレーターである Garrett Wintherが夜に眠れなくなる原因や、ハードウェアによってどのように睡眠の質を向上させられるかについて議論した。
パネリストは以下の通りである。
Roy Raymann(Sleep Czarのオーナー兼創設者)
Julian Jagtenberg(Somnoxの創設者)
Behrouz Hariri(Smart NoraのCEO)
Coline Juin(Moonaの共同創設者兼CEO)
Radhika Patil(Cradlewiseの創設者兼CEO)
パネリストたちは、睡眠の分析グッズやアプリの問題点として、これらが睡眠のパターンを分析するのみで、問題解決方法を提示していないという点で一致している。
睡眠の専門家たちは、呼吸法、温度や光の調整、さらにはカスタマイズされた睡眠器具を利用することで、夜間の目覚めや不眠、日中の疲労をどのように改善できるかを議論した。
また睡眠関連のスタートアップ企業に共通する課題として、医療機器と一般消費者向け機器の境界線を越える必要性があることについても議論した。さらにこのイベントでは、以下のように他にもいくつかのことが議論された。
パネリストたちは、家庭内での睡眠のあり方、とりわけ乳幼児の親の睡眠のあり方についてじっくりと話し合った。
Radhika Patil氏は、彼女が創設したスタートアップのサービスである「Cradlewise」が、乳幼児の睡眠科学とエンジニアリングを組み合わせることで、眠りの浅い赤ちゃんを泣き出す前に落ち着かせられると主張した。
「Cradlewise」は、昨年秋にBay Areaで発売され、利用した赤ちゃんの親の睡眠時間を平均2時間増やすことに成功している。
Adhika Patilは氏「他の商品は、赤ちゃんが起きそうになった時に知らせてくれる機能が付いています。しかしこれらの商品は、その後赤ちゃんが眠りにつくまで親があやさなければならず、その時間は約40分程にわたることが多いです。
『Cradlewise』は、従来製品よりも早く赤ちゃんの動向をつかみ、起きそうになると、ベビーベッドを揺らしたり、白色雑音(ホワイトノイズ)を出したりすることによって、赤ちゃんの睡眠時間を長くしています。」と述べた。
また、照明を落とす、体温計を調節するなどして、快適な睡眠のための環境を整えることもパネリストの間で話題になった。Raymann氏とJuin氏は、人間の体温は進化の過程で、起きている時は温かく、夜は冷たくなるように自然に調節されていると述べた。
Coline Juin氏は「私たちの体温は睡眠の質にとても大きな影響を与えます。夜になると平均体温が低下し、昼間と比べて約1度の温度差が生じます。
そして夜間は体温を低く保つ必要がある。そのため、眠れないときは枕を冷たい側に反転させたり、カバーから足を出したりする人が多いです。『Moona』は、ベッドサイドのデバイスに接続されており、枕にも挿入された器械を介して、人の頭と首の温度に作用し、温度調節をサポートします。」と述べている。
「睡眠の帝王」と呼ばれるRoy Raymann博士は、睡眠を許容する状態になるためにはリラックスタイムが不可欠であると指摘しており、Julian Jagtenberg氏は、睡眠前の呼吸法に焦点を当てて、この考えを強調している。
Roy Raymann氏は「体は眠れる状態にある必要があります。忙しいライフスタイルでは、リラックスタイムをとることがとても難しく、夜の10時でも仕事のメールをしたり、Netflixを観ていたりする。体を常に酷使し続けると、眠れなくなることもあります。リラックスタイムがあれば、睡眠への移行を大いに助けてくれるかもしれません。」と述べている。
また、Julian Jagtenberg氏は「ストレスによって、夜に眠れなくなることは多々あります。そして、今の時代の問題は新型コロナウイルスです。人間関係構築が難しくなり、私たちの社会はかつてないほど不安に満ちているのが現状だ。
闘争・逃走モードから副交感神経反応に移行するための自然な方法として、呼吸法がある。『Somnox』では、CO2センサーと加速度計で呼吸数を測定し、そのデータをもとに感情の状態を示し、呼吸法で体調をコントロールさせることでリラックスすることを実現する。」と述べた。
質の高い睡眠が価値のある投資であることは講演者や聴衆の間で合意されているが、パネリストたちは、彼らの会社が投資家やベンチャーキャピタルから信用を得るのに苦労した理由として、彼らの商品が医療機器や消費者向けハードウェアのカテゴリーのどちらかに明確に分類できないことを挙げた。
Julian Jagtenberg氏は「昨年のシリーズAラウンドで、100人以上のベンチャーキャピタルと話をした結果、彼らのもつ大きな疑問は『証拠に基づいた医療機器を提供しているのか』それとも『消費者に着目した製品を提供しているのか』ということだった。」と述べている。
Colin Juin氏は「技術と科学が発展するにつれ、人々は、医療技術と消費者技術のはざまのような商品を多く見かけるようになる。」と述べている。
とはいえ専門家たちは、スリープテック企業が査読付きの研究を行い、消費者が睡眠関連の問題を解決する家庭用のハイテクなデバイスをより利用するようになれば、こうした懸念は薄れていくと考えている。
翻訳元:Sleep Startups Reveal How Consumer Hardware Can Help You Catch More Zs
表題画像:Photo by Jessica Flavia on Unsplash (改変して使用)