不況下に新たなビジネスを立ち上げるべきかどうか

不況下での新しいビジネス。イエスかノーかでは答えられないその答えは、色々な要素を考慮して慎重に見極める必要があるだろう。
経営者

世界が新型コロナウイルス感染症の拡大によって悲惨なパンデミックと不況の両方に向き合っているなか、新たにビジネスを始めることは良いアイデアと言えるのだろうか?その答えはイエスかノーで答えられる単純なものではなく、考慮に入れるべき多くの要因があるだろう。

まずそれぞれの地域の新型コロナウイルス感染症の状況を評価する必要がある。ベトナムやタイのようなアジア諸国の中には、対策がかなりうまくいっている国もある。現地にターゲット市場をもつスタートアップは、これらのエリアで成功する可能性も高い。

一方で、提供したい商品やサービスの需要のほか、仕入先や資源の供給状況、物流や採算性についても、適切な情報を調べる必要がある。

新型コロナウイルス感染症による健康危機とそれに伴う経済的ダメージは、困難を生み出している。しかしそれはまた、ビジネスチャンスとも捉えられる。

適切なビジネスを見極めて選ぶ

現在の経済状況においては、すべてのビジネスが成功するわけではないことはもちろん、すべてのビジネスが生き残れるわけでもない。

映画館やレクリエーションセンターなど、屋内で人が楽しむような(従来型の)ビジネスは現実的ではない。旅行や観光事業も同様に問題外である。米国商工会議所は世界のさまざまな地域で最も成功しそうな15のビジネスリストを公表している。

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リストに掲載されているのは、以下の業種である。

クリーニングサービスや宅配サービス、ドライブインシアター、食料品店、酒やワイン店、食事の準備や配達サービス、缶詰や瓶詰め商品の提供、ゲーム開発や販売、フィットネス機器の販売、造園や庭の手入れサービス、パン作りサービス、コーヒーのサブスクリプションサービス、園芸用品の販売、マスクの製造や販売、テレヘルス(遠隔医療)サービスなど。

このビジネスのリストからは、今後の成長に必要な2つの重要な特性がみえてくる。本質的なニーズに応えることと、人と人との交流を減らすことである。パンデミックの真っ只中において成功するビジネスを望むのであれば、基本的な生活必需品と個人的な交流を最小限に抑えたビジネスに焦点を当てる必要がある。

世界経済フォーラムのモヒット・ジョシ会長は、「新型コロナウイルス感染症は多くの産業を強制的に生まれ変わらせるだろう。私たちは消費や供給、相互作用や生産性の状況を再評価し、再考している」と言及した。

さらにイノベーションと創造性は欠かせない要素である。現在、最も注目されている企業の中には、景気の低迷期やその直後に生まれたものがあることは注目する価値がある。「Uber」や「Slack」、「Airbnb」や「Venmo」は素晴らしい例と言えるだろう。これらの企業は、クリエイティブな方法でニーズに対応したこれまでにないアイデアを導入した。願わくば、現在の危機によって、景気の回復を促進させる革新的なスタートアップが増えることを望んでいる。

テクノロジーを活かす

新しい時代にテクノロジーが果たす役割は否定できない。企業や消費者は今、ビジネスを展開するうえで、ウェブベースのコミュニケーションや電子商取引プラットフォーム、安全な決済システムやその他のフィンテックのイノベーションに頼っている。ビジネスオーナーや経営者が技術革新の反対者になるには、今は最悪の時期である。

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「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、デジタル決済やテレヘルス(遠隔医療)、ロボティクスなどの10項目にも及ぶ主要なテクノロジーのトレンドを加速させた。これらのテクノロジーは、コロナウイルスの拡大を抑えながら、ビジネス活動を続けるためにも役立つ」と、「WEF Digital Trade」のYan Xiao氏とZiyang Fan氏は述べた。

10項目のテクノロジーのトレンドは、オンラインショッピングやデジタル・非接触の決済、リモートワークや遠隔学習、オンラインエンターテイメントやサプライチェーン4.0、3Dプリントや5G、そしてICT(情報通信技術)である。

新型コロナウイルスや先の見えない経済不況という課題を乗り切りたいのであれば、ビジネスに役立つテクノロジーが必要である。テクノロジーは利便性を向上させるだけでなく、新たなチャンスを広げてくれる。

「新しい技術が行うことは、革新のためのサンドボックスを作ることである。それは多くの場合自動化を念頭に置いており、顧客が必要としているものや欲しいものに対応するためのものである。これらの新しい技術ソリューションを統合すると、ビジネスは大きな後押しを得られる」と、「Alpha Roc」のCMOであるTyler Gladwin氏は話す。

「パンデミックと経済不況の影響を大きくうけたビジネスシーンでは、あらゆる種類の課題を抱えている。信頼性の高いレバレッジが必要であり、それがテクノロジーであるかもしれない。テクノロジーをうまく活用すれば、明白な利益が得られる」とGladwin氏は付け加えた。

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起業を検討すべき理由

「デジタル化は選択肢ではなく新しい基本である。もし顧客と関係をもちたいのであれば、会社はデジタル企業に業態を変えなくてはいけない」と「UNLグローバル」の創設者であり最高経営責任者であるXander van der Heijden氏は言う。

「つまり自らを再発明し、新しいデジタルビジネスモデルを創造する必要がある。オンラインとオフラインを融合させたチャネル戦略を実施し、顧客のエンゲージメント率を高め、究極の顧客体験の確立が必須であることを意味している」と解説した。

この記事のタイトルにも言及された質問に戻るが、健康面や経済面で深刻な課題が続く中でも、ビジネスを新しく始めることは理にかなっている。スタートアップの立ち上げに対しては、楽観的な理由もたくさんあり、必要な要素のいくつかを以下で紹介したい。

・安価な原材料や物流費、人件費

・革新的なソリューションを提供するビジネスがまだあまり登場していない業界

・中央銀行の金利引き下げと政府の景気刺激策を通じて選択できる、より良い信用

・リモートワークを受け入れる従業員が増えたことによる、業務の少量化

・積極的な投資家からのサポート

「経済活動が停滞する困難な時期は、主に2つの理由から、ビジネスを始めるには良い時期と見られている。一つ目は、リソースの確保にはあまり競争がないこと。二つ目には、私たちが直面するどんな変化も、ポジティブであれネガティブであれ、新たな顧客ニーズをもたらすこと。そして顧客ニーズはどのようなビジネスにおいても、核となる」と、ミシガン大学のZell Lurie起業研究所に所属するアントレプレナーシップの専門家であるRashmi Menon氏は話す。

慎重にリスクを取る

パンデミックや世界経済の混乱のなかでスタートアップを立ち上げることは、必ずしも悪い考えではない。正しいビジネスモデルを構築しているかどうかを確認するために必要なデューデリジェンスを実施し、テクノロジーを活用すれば、全盛期の「Airbnb」や「Uber」と同じくらいか、それ以上の成功を収める会社を生み出せるかもしれない。

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発展途上にあるアジア経済は、新型コロナウイルス感染症が流行する前から安定して成長している。成功しないと思い込んだり、悲観的に考えすぎても意味がない。パンデミック後の世界経済を牽引するような巨大な市場においては、まだまだ可能性があると言えるだろう。

翻訳元:Should you start a new business amidst the recession?

記事パートナー
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執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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