韓国のテクノロジー産業は十数年前と比べて格段に成長した。いまやスマートフォン技術に関してはSamsungとLGの成長が牽引する形で、世界的リーダーの一角を占めている。
大きな理由は、Samsung電子とSK Hynixの躍進により、韓国が半導体産業のトップに位置していることだ。この2社は世界でもトップレベルの半導体メーカーである。
一方、世界を見渡すと韓国以外にアメリカ、台湾の2カ国が半導体業界を席巻している。
また、買い手として圧倒的にシェアが大きいのが中国である。
スマートフォンやパソコンなどの電子機器に使われるチップの開発には、半導体企業が欠かせない。本記事では、半導体産業の現状について整理する。
(写真引用元:Photo by L N on Unsplash)
半導体は電子機器の「種」のようなものである。
導体は電気を通す一方、絶縁体は電気を通さない。半導体はその中間に位置していると言えるだろう。
このような電子的性質を利用して作られた集積回路を「半導体チップ」と呼ぶ。
1つのチップの中には10億個ものトランジスタが入っている。
これらのトランジスタがデジタルコードの構成要素となっている。
トランジスタのゲートに電気が通っていれば「1」、通っていなければ「0」と認識される。
半導体は、あらゆる情報を2進数(1と0)で処理する。
メーカーはシリコン(砂の中に含まれる)を使って半導体を生産している。
シリコンは、薄い丸いウェハーを作るために使用される。このウェハの上に、何百もの工程を経て極小の複雑な回路が作られる。この小さな面積の中に何十億個ものトランジスタを配置しなければならないので、小さくても正確であることが非常に重要である。
半導体の製造プロセスは、長年の間に大きく進化してきた。しかし、回路を小さくするには物理的な限界がある。そのため、多くの企業が3Dトランジスタを使い始め、2017年には当時最小だった10ナノメートルのチップを作ることができるようになった。
10ナノメートルとはどのくらい小さいのだろうか?
答えは「人間の髪の毛1本の直径の1万倍の薄さ」である。
このような小さなチップを製造することにより、チップの性能だけでなく、効率も向上する。また、ウェハあたりのチップ数が多いほど、製造コストが少なく、価格も安くなる。
現在では、2ナノメートルという驚異的なサイズのチップを作っている半導体メーカーもある。
現在、中国は世界最大規模の半導体市場を有する。
世界の半導体の半分以上が中国に流れており、この傾向はコンピュータ、ラップトップ、スマートフォン、タブレット、デジタルテレビなどの中国のデジタル製品需要の増加に伴って成長し続けている。
なお、中国は世界のスマートフォンの9割、パソコンの6割、スマートテレビの6割5分という驚異的な生産シェアを誇り、これらの工場の多くは中国本土に位置している(一部は中国以外の企業)。
これに加えて、中国政府が国家的な光ファイバー追跡システムに関心を示しており、5Gインフラの展開が市場を牽引し続けている。
また、中国では新エネルギー、自律運転、スマート工場の建設などにも力を入れており、半導体の需要をさらに押し上げることになるだろう。
中国の当面の目標は、2030年までに半導体生産においてトップのリーダーになることである。
当面は投資、買収、人材の採用を通じて中国の半導体製造を発展させることに焦点を当てている。
半導体市場での市場シェアは中国がまだ4%であるのに対し、韓国は18%である。
2016年以降、中国はこのハイテク産業でできるだけ多くの人材を獲得するために、海外から専門家を輸入するようになった。
また「国家集積回路産業株式投資基金」を創設し、180億ドル以上の資金を調達した。中国の工業情報技術部は、今後10年間で1,500億ドルを半導体部門の支援に費やすとしている。その資金の大部分は、韓国やアメリカの外国の競争相手からノウハウを購入するために使われている。
例えば、中国は現在、半導体製造に関連する経験豊富な技術者や管理職の給与を台湾の2倍にしている。
最後に、中国政府は企業の中国進出を奨励すると同時に、中国の半導体生産への外国人参加者の参入障壁を低くした。
最終的な目標は、中国が半導体需要を満たすために主に自国に依存することである。現在、中国は半導体需要の84%を輸入に依存している。
では、ここからは半導体メーカーに視点を移そう。
現在、半導体生産の主要国は米国、韓国、台湾である。
半導体業界のトップベンダーはIntelで、2019年の市場シェアは16%。Samsungは12.5%で2位である。
Intelは米国最大の半導体メーカーである。
時価総額は2500億ドル以上である。マザーボードチップセット、ネットワークインターフェースコントローラ、集積回路を設計・製造している。
同社は金属酸化物半導体を最初に作った企業である。
同社の主な競争相手としてAppleが浮上してきている。Appleは、Intelとの長期的な提携を解消し、自社でチップ製造部門を立ち上げる可能性がある。
Samsungはものづくりの最先端を走っている。
韓国政府は、2030年までに半導体生産分野におけるトップレベルの技術者3,000人を創出し、世界シェア20%を達成するためのAI半導体開発戦略を発表した。
Samusungはすでに、高性能化と低消費電力化の可能性を秘めたAI半導体を研究している。これらの新しい半導体は、IoT、モビリティ、その他多くの産業分野で新たな市場を創出する。
2030年までに50件の需要に特化したAIチップを発売することを目指している。このため、韓国政府は革新的な企業の研究開発を支援するために6,000万ドル以上の資金を提供する。
中国は韓国が半導体を輸出する最大の市場となっている(40%以上)。中国と米国の貿易戦争により、韓国は米国の技術を採用した半導体の販売ができなくなっている。
台湾は、台湾半導体製造公社(Taiwan Semiconductor Manufacturing Corporation)として、半導体製造の金字塔として見られている。
TSMCは世界最大かつ最先端の半導体メーカーであり、HuaweiとAppleの両方にチップを供給している。
米中貿易戦争は、中国がいかに外国製チップに依存しているかを示している。
Huaweiは2019年5月に米国のエンティティリストに掲載された。
これを受けて、Huaweiは同社のスマートフォン用チップの新しいサプライヤーを見つける必要があった。
幸い、日本、台湾、オランダで新たなサプライヤーを見つけたものの、2020年8月に米国はさらにHuaweiの関連会社38社をエンティティリストに追加することで、米国のソフトウェアまたは技術で開発または生産された外国製のチップを手に入れられなくなった。
台湾は収益の60%を米国から得ているため、すでにHuaweiの製造を停止している。
半導体サプライチェーンにおける米国の役割について、米国がいかに強力であるかを示している。
米中貿易戦争の文脈においても、今後の半導体産業の行方から目が離せなさそうだ。
翻訳元:Semiconductor Industry - China's Dependence on US, Korea, and Taiwan
表題画像:Photo by Vishnu Mohanan on Unsplash (改変して使用)