韓国はなぜ男女間の賃金格差が大きいのか?

韓国は調査が始まって以来18年間、OECDの中で男女間賃金格差が最も大きい国である。韓国の男女間格差の根本原因は何なのだろうか?本記事では、複数の側面から男女間格差の原因に迫るのと同時に改善のための対策について言及する。
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韓国では、女性の収入が男性よりも低いことが大きな問題となっている。

韓国経済のバックボーンである韓国の財閥企業は、女性をトップに登用しないことで多くの悪評を受けてきた。その数字は衝撃的である。

政府の報告書によると、韓国の大企業トップ500社の高位幹部のうち、女性はわずか3.8%だったという。さらに衝撃的なのは、その半数が女性をトップリーダーとして登用していなかったことだ。

最新のOECDのデータによると、韓国の男女賃金格差は先進国の中で最も大きい34%。平均は約13%である。なぜこのようなことが起きているのだろうか?

本記事では、韓国の男女賃金格差についての現状と解決策について解説する。

OECDの男女間賃金格差の定義とランキング

OECD では、男女間賃金格差を「男性の中央値収入に対する男女の中央値収入の差」と定義している。このデータは正社員と自営業者を対象にしている。

韓国の女性の年間平均給与は3500万ウォンであったのに対し、韓国の男性の年間給与は4200万ウォンである。以下は、OECD加盟国の男女別賃金格差である。

  1. 韓国 34%

  2. 日本 24

  3. イスラエル 21

  4. 米国 18

  5. カナダ 18

  6. フィンランド 17

  7. イギリス 16

  8. ドイツ 16

  9. スロバキア 15

  10. オーストリア 15

韓国は2002年に組織がデータをまとめ始めて以来、18年連続でOECD加盟国の中で1位を獲得している。

韓国で働く女性の現状

(写真引用元:Photo by Johen Redman on Unsplash)

大企業で働く韓国人女性の生活はあらゆる面で「苦しい」と言える。

韓国の職場には、深夜の社食で女性に酒を飲飲ませるという性差別が存在する。女性職員は、このような要求に応じない限り職場で信頼を得るのも難しいという。

多くの外国人は韓国の労働文化を見て、男性は「労働者」であり、女性は「介護者」であると錯覚するという。

  

直近10年間で状況は改善しつつあるものの、韓国で働く平均的な女性従業員の生活は簡単ではない。

多くの人が朝早く出勤し、遅くまで帰れない生活を余儀なくされている。

韓国の平均的な労働者の優先順位は、家族よりも仕事を優先し、家庭よりもオフィスを優先するという。

  

  

韓国の企業文化と女性起業家の増加の関係

韓国の企業文化は女性が少ない軍事文化に似ている。

韓国の女性は、この文化に打ち勝つことができているのだろうか?  統計情報は暗い状況を示している。

Citibank Koreaのような企業を見ていると、女性幹部の割合が23.5%とどの企業よりも高く、この男性中心の文化を変えることは可能なように思える。また、トップリーダーに占める女性の割合は3.8%にとどまっているが、2013年と比較すると改善の兆しが見られる。2013年には117人の女性がトップの地位に就いた。

一方、韓国企業の企業内文化の変化は進められているものの、多くの働く女性にとっては、その変化のスピードは十分とは言えない。

 

そのため、多くの女性起業家が起業を決意している。

女性の創業者が起業するスタートアップの数は、2017年の4%から2021年には10%近くまで増加している。

  

  

韓国の男女間賃金格差はなぜこんなに大きいのか?

(写真引用元:Photo by The Creativv on Unsplash)

韓国は先進国の中でも男女間賃金格差が最も大きい国の一つである。

韓国のトップ企業は、職場の多様性の模範を示していない。これらの財閥の多くは、女性が妊娠する「リスク」があるという事実に基づいて男性をより多く採用する傾向がある。

韓国の多くの女性にとって、家庭とキャリアを両立させることは難しいことである。

統計によると、産休後に仕事に復帰する人は33%に留まる。韓国政府は大企業に対して、女性のために1年間の産休を提供するよう指示している。韓国企業が女性よりも男性を多く登用する理由も理解できるだろう。女性が大統領になった国では、多くの企業がより多くの女性をトップポストに採用し、女性の雇用を増やすと思うだろうが、現実はそうなっていない。

韓国女性家族部(Ministry of Gender Equality and Family)による韓国大企業トップ500社の分析結果によると、幹部職に就いている女性は1,000人にも満たない。

韓国の大企業の女性幹部を見てみると、その多くが持ち株家の親族であることがわかる。これは、家族のコネがなければ、出世して女性幹部になることが非常に難しいことを示している。産休などの理由で出世するまでに時間がかかるのは理解できるが、女性幹部職の3.8%しかいないというのは非常に憂慮すべきことである。

  

  

なぜ韓国には女性経営者が少ないのか?

統計によると、韓国では女性のトップレベルの管理職は男性の2倍の頻度で離職している。

これもまた、韓国の文化では女性が「介護者」として見られているという事実を表している。一度辞めてしまうと、職場に戻ってきてエグゼクティブレベルの地位に就くことは非常に難しい。

また、女性が幹部職に就いたとしても、男性が大勢いる中で女性は自分だけという可能性が高い。そのため、女性は自分の実力を証明するためにもっと努力しなければならないというプレッシャーを感じてしまっているという。

韓国の女性は韓国の労働力の53%を占めている一方で、上級管理職に占める女性の割合はわずか5%に過ぎない。韓国の女性幹部を調査すると、そのほとんどが韓国のトップエリート大学に通い、男性幹部よりも優れた学歴を持っていることがわかる。

しかし、韓国には女性エグゼクティブの需要を減少させる差別的な要因がたくさんある。その中には、ジェンダーのステレオタイプも含まれている。

 

例えば、韓国の男性は、静かで従順な女性に比べて、攻撃的、野心的、支配的などの特徴を持っていると見られている。

もし韓国人女性が韓国人男性と同じ資質を持っている場合は、あまりにも強気で「お嬢様らしくない」と思われ、不利な状況に追いやられていしまう文化があるという。

  

  

韓国の男女賃金格差の解決策

では、この男女間格差の解決策として、どのような施策が考えられるだろうか?

韓国の男女賃金格差を埋めるには「同一賃金改革/法制」が必要であろう。

これらの改革は、女性に対する差別的慣行に対処するだけでなく、韓国で働き、子供の世話をする女性に対して、より多くの手当を提供するという措置も加える必要である。

さらに、韓国社会は、韓国の女性の仕事を低く評価し、特定の性別役割を負わせることによって、韓国の女性を傷つけ続けている文化的な偏見があるが、これこそ法制備によって対処しなければならない。これこそが、韓国の女性を組織的に不利益にしている家父長制構造を是正する唯一の方法である。

 

最終的には、韓国の女性が男性と同じようなキャリア形成を実現する機会を得られるようにすることを考えるべきである。

韓国のアクセラレータープログラムは、女性起業家を支援するために、より多くの女性メンターやリーダーを必要としている。

世界中の企業から得られたデータによると、シニアリーダー職に女性が多いほど業績が向上することが示されている。次世代の韓国企業は男女共同参画の職場環境の先駆者となる必要があり、また従業員を性別ではなく、スキルに基づいて判断する文化が必要がある。

韓国のスタートアップ企業は韓国の未来を担うものであり、何十年も男性優位の文化を変えていく上でも重要な役割を担うだろう。

  

  

翻訳元:Quick Facts About the Gender Pay Gap in South Korea

記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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