多様性のあるインクルーシブな職場を実現しているスタートアップ企業が称賛されることはほとんどない。Maria 01による本記事では、"多様性と包括性"の手本となり得るコミュニティーチームをいくつか紹介する。
Inklusiivによると、"職場におけるダイバーシティ(多様性)"とは、人と人との違いを理解し、受け入れ、尊重することであるという。これには性別や人種、宗教、政治的意見、民族、年齢、性的指向、配偶者の有無、言語、障害、その他様々な要素が存在する。
それゆえに、多様性とは性別だけの話ではなく、幅広く奥深いテーマである。そして多様性を語る上ではインクルージョンという、もう一つの重要なテーマを考慮しなければならない。
インクルージョン(包括性)とは、すべての人が公平かつ敬意を持って扱われ、機会やリソースを平等に与えられ、成功に貢献できる環境のことである。
多様性と包括性の両方を備えた環境を実現することで、開放性や心理的安全性、帰属意識が育まれることは明らかだ。しかし、その多様性と包括性を備えた職場を構築するには、多くの時間がかかる。ただし会社設立の初期段階においてもこの問題に関する知識と説明責任を持っていれば、それは徐々に良くなっていくものである。
Maria 01(翻訳元記事の作成元)では、4社のスタートアップ企業にインタビューを行い、それぞれのチームでダイバーシティ&インクルージョンがどのような役割を果たしているか、また現在の状況について考えを伺った。
Brellaは、イベント参加者間のエンゲージメントと相互作用を促進するために構築された世界有数のバーチャルイベントプラットフォームだ。サービス内容は、見やすいコンテンツからマッチメイキングされた1対1のミーティングまでと幅広く、同プラットフォームはバーチャルと現実、そしてそのハイブリットなイベントに欠かせないツールとして優れた例であるといえる。
同社は、Maria 01のスタートアップのひとつであり、2020年に行われたロックダウン間の最初の数週間をピークに、ジェットコースターのような急降下を経験した。しかし、驚くべき再起を果たした後、チームは積極的な採用活動を行っている。
「D&Iは、BellaのDNAの中で必要不可欠な要素でした。同社はこれまでに多様な人材の確保や心理的な安定性、尊敬、信頼に焦点を当てるだけで有機的な発展を遂げてきました。しかし、私たちは現状に満足せず、このテーマにさらに多くの投資を行う予定です。テクノロジー分野におけるDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の現状について、私たちは業界をリードし、その認識を高めていきたいと考えています」Hanna Kontinen, Talent and Culture Lead
2021年現在、42人のBrellaチームは16カ国以上の人々により構成されている。同様に、年齢と性別の多様性も実現されており、チームは23歳から45歳の男性70%、女性30%で構成されている。
Selma Financeは、フィンランドを拠点とするMaria 01のスタートアップのひとつであり、2021年現在は金融規制の影響によりスイスでのみ営業を行っている。同社は隠れたコストや不透明な手数料、複雑な金融専門用語を使わずに、ユーザーのお金は正しい方法で投資されるべきと考えている。
このチームが開発した「Selma」は、ユーザーのファイナンシャルライフに100%フィットし、投資とお金の管理をサポートするパーソナル投資アシスタントである。
「Selmaでは、多様で国際的な文化が私たちのバックボーンのひとつとなっています。実際、弊社の4人の創業者はそれぞれ異なる国で生まれ、異なる職業の経験を積むなど様々なバックグラウンドを持っています。会社設立時より、私たちは上限関係よりも技術を、エゴよりもアイデアを、推測よりも実験を評価し、社員全員が会社をさらなる発展に導くことのできる文化を築く、ということを重視してきました。これこそが組織が革新的になり、金融サービスのような伝統的な産業に革命を起こす唯一の方法だと信じています」Kevin Linser, Founder
スイスとフィンランドで設立された同社のチームは、6カ国の人々が集まり、30%の女性と70%の男性で構成されている。さらに、チームはソフトウェアエンジニアリングやデザイン、金融サービス、マーケティング、ビジネス、コミュニケーション、数学、経済学など幅広いスキルセットをそろえている。
CHAOSは、設立当初の段階でMaria 01に参加した、都市予測を行う企業だ。同社のミッションは、今日の不動産投資家に対し、データに基づいた洞察により都市がどのように成長し進化するのかを予測するサポートを行うことで、未来の都市を住みやすい場所にすることである。
同社の提供するAIプラットフォームソリューションは簡単で直感的なマップベースのダッシュボードで、都市の複雑性をよりよく理解することができる。また複数のデータソースを組み合わせることにより、不動産市場のパフォーマンスの予測を実現している。
「女性の外国人が率いる会社として、ダイバーシティとインクルージョンはCHAOSの文化の中で揺るぎない要素です。私たちはチームワークやポジティブシンキング、勇気を尊重しており、これには様々な色や形、そして背景があることを知っています。この環境はビジネスマンや変革推進者、オタク、講演者、思想家、実行者からなる多様的なチームの中で有機的に派生したものです。 地球上の様々な場所から集まった私たちは、誰にとっても住みやすい都市を作るという共通の情熱を抱いています。多角的な視点に触れることの価値はいくら強調しても足りません。私たちの経験では、多角的な視点が斬新な方法で結びつき、イノベーションへの扉を開いてきました」Paloma Bautista, COO at CHAOS
CHAOSは、Maria 01で唯一、2人の外国人女性により設立された企業だ。これはフィンランドのスタートアップ・エコシステムの中でも非常に珍しいことである。
2021年現在、同社のチームには9カ国もの人々で構成され、男女比は女性60%、男性40%となっている。チームのスキルセットは、データサイエンスや機械学習のような技術的なバックグラウンドから建築やマーケティング、ビジネスのような非技術的なものまで様々である。
Quicksave Interactiveは、フィンランド発の経験豊富なゲーム開発者チームだ。同チームはコンソールやPC、モバイルなど、複数のプラットフォームを開発対象としてきたが、2015年以降はメッセージングプラットフォーム向けのゲームや技術の構築に注力している。
「私たちは男性2人、女性2人の男女均等のチームで事業をスタートしました。この設立体制は、バランスを保ちD&Iを達成するためのコストを削減できるという点で、今後の私たちの成長に有益であると信じています。今日(2021年)のゲーム業界では女性の開発者が増えてきていますが、どの技術の分野でもその才能を発揮できると信じています。 ゲームをプレイするお客様の男女比は以前よりほぼ半々でしたが、開発者チームでも同程度の比率なのは良いことだと思います。また、グローバル性の面ではまだ成長の余地がありますが、これはチームの成長にともなって時間とともに実現していくことでしょう。フィンランドのゲーム業界は働きやすいと評判ですし、実際私たちの業界は長い間、海外からの人材を惹きつけてきました」Elina Arponen, CEO and Founder
同社は、ゲーム業界では革命的な、男女均等の4人のチームとしてスタートした。チームはフィンランド人のみで構成されているが、フィンランドがゲームのハブとして繁栄しているという評判や、設立当初から多様性のある包括的なチーム作りに取り組んできたことから、将来的には採用を多様化する予定だという。
これらの事例が、多様性と包括性を備えたチームの構築について学ぶひとつのきっかけとなることを願っている。
ここで紹介した企業はそれぞれ、ダイバーシティ&インクルージョンがチーム内でどのように機能しているかについて独自のアプローチをとっているが、すべての企業で共通しているのは、早い段階からダイバーシティ&インクルージョンを意識してチームを構築していることである。
改革を始める際はテーマについて知り、自分の現状を評価し、その変化がどのようにどのような結果つながるのかを理解したうえで行動を起こすことが大切だ。
ダイバーシティ&インクルージョンという分野における世界中の研究や知識、ベストプラクティスを知りたい人にはInklusiivのresource bankをお勧めする。
表題画像:Photo by Malena Gonzalez Serenaon Unsplash (改変して使用)