パンデミックがナイジェリアの映画館の終焉にならない理由

パンデミックにより大きな影響を受けるエンタメ産業。閉館を続ける映画館も多く、オンラインストリーミングの契約者が増えるなか、それでもナイジェリアの映画館が終わりにはならない理由を見ていく。
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世界は過去に戦争や感染症の流行を幾度も見てきた。その中には人類に壊滅的な影響を与えたものもあったが、現在我々が経験しているCOVID-19に類するものはないようだ。

武漢で最初の感染が記録されてからわずか3ヶ月後、パンデミックによる世界的な景気後退をIMFが宣言したことからも分かるように、COVID-19は世界経済を不振に陥れた。また、95%の回復率が報告されているにもかかわらず、すでに数百万人の感染が記録されており、経済が好調な地域でも感染が確認されている。

その結果、ナイジェリアを含む多くの国で、何百万ものビジネスを停止するロックダウン措置が採用された。

経済的な混乱に止まらず、第二次世界大戦以降おそらく一度も起きたことのないような、貴重な文化的祭礼や宗教的祝日の中止にもつながった。

また社会的交流やレクリエーションを促すような活動は軒並み停止された。もちろん、ここ数ヶ月でほとんどの映画館が閉鎖され、映画製作者も現場での撮影プロジェクトを継続したり、開始したりすることができなくなっている。

最近の動きがエンタメ産業に害を与えているのではないかと疑うには十分である。

映画館の現在考えられる末路

スウェーデンでは「ルールに従っているから」という理由で閉館しなかった映画館もあるというが、ナイジェリアの映画館は先月、ロックダウンの規制が緩和された後も閉館したままだ。

どうやらこれは、映画文化が芽生え始めたばかりの国にとっては不健全なことのようだ。これまでもナイジェリアで、大スクリーン産業への脅威がいくつもあったことは注目に値する。

そうであるにもかかわらず、ナイジェリアの映画プロデューサーであるNiyi Akinmolayan氏は、このパンデミックだけでは、この国の映画館に終止符を打つには十分でないと考えている。

しかし中国ではその限りではなく、3月中旬に映画館が再開した後も、プロデューサーたちは新作映画の上映に消極的になってしまった。言うまでもなく映画ファンは落胆した。これがまた閉館につながり、これらの映画館の中には二度と立ち直れない映画館もあるのではないかと率直に思われる。

現在はどのような映画を放映するかよりも、数多くの大スクリーンにおいて、いかにして観客の数を減らしていくかが課題のようだ。

数字を比較すると、中国の映画館のスクリーン数は6万以上であるのに対し、ナイジェリアのスクリーン数は100以下だ。

Akinmolayan氏は、現在映画館は閉鎖のために赤字で運営されているが、映画館のオープンが許可され、人々が安心して映画館を訪れることができるようになれば、この状況は変わるだろうと語る。

「映画館がやらなければならないことは、安全規制の面での準備を確実にすることだ。人々が思っているほど悪いことではない」と彼は言う。

彼の意見では、遅れて公開されることを楽しみにしていた映画ファンは、必ず初日にとはいかないまでも、スクリーンに映画が公開されたらすぐに訪れる可能性が高いという。

ナイジェリアで成長する映画文化への影響

ナイジェリアの映画産業であるNollywoodは、アフリカ最大の映画産業であり、推定年間収入は5億ドルから10億ドルと言われている。短期間で大量の低予算映画を製作し、その中には大スクリーンで公開されるものもある。

ナイジェリアの映画館の多くは、ラゴス、アブジャ、イバダンなどの大都市に集中している。

同国における映画館の導入が遅れているにもかかわらず、2019年以降のこの統計はかなり励みになっている。

Cinema Exhibitors Association of Nigeria(CEAN)が発表した統計によると、ナイジェリア人は2019年に映画のチケットに約6.7億ナイラ(1750万ドル)を費やしたと報告されており、2018年に比べてなんと200%も増加している。また、お祭りの時期や祝日に収入がピークを迎えることも注目されていた。

これは、ナイジェリア人の間で映画文化がポジティブに変化していることを大きく描いている。

残念なことにパンデミックが始まって以来、イースターやイードのお祝いができないこともあり、映画館でのいつもの賑わいが欠けているため、暗い状況が続いている。

逆に言えば、このパンデミックの期間、ビデオのオンデマンド・プラットフォームの需要が増加していることは無視できない。

オンラインストリーミングのプラットフォームは競争相手としての価値があるのか?

オーバー・ザ・トップ(OTT)ストリーミングプラットフォームは、そのサービス開始以来、自宅で快適に映画を視聴するための迅速な手段としての役割を果たしてきた。これは消費者にとっては朗報であるが、ホームエンターテイメントの需要は、映画館のように業界に多くの収益をもたらすことはできない。

Akinmolayan氏にとって、これらのストリーミングサイトは映画館と競合する立場にはない。OTTストリーミングサービスのオリジナル作品であるとか、あるいは独占的な契約がない限り、例えばNetflixで新作をプレミア上映するようなことは、必ずしも起こらないからだ。

実際、映画の映画館での人気が、ストリーミングサイトにおいて映画に興味を持つ理由の1つになるのではないかと彼は考えている。

さらに、以前にリリースされたコンテンツをオンラインストリーミングプラットフォームで上映するためのライセンスを得るには、他にも多くのステップを踏まなければならない。

Akinmolayan氏は、Netflix Naijaの出現で変化があるかもしれないとは考えている。というのも、数多くのオリジナルのNollywoodシリーズの計画がすでに進行中であるからだ。

しかしながら、同時期に映画館で公開されるオリジナルシリーズの数と、ストリーミングサービスで毎年公開されるオリジナルシリーズの数を比較した際、それがどの程度のものなのかについて懸念を示している。

関連記事:Netflixがさらに多くのNollywoodオリジナル作品の制作を開始:ナイジェリアンは何を期待すべきか?

関連性を維持するための高尚な挑戦

”シットアットホーム”の時代、より多くの人々が自分の好きなエンターテイメントを楽しむためにストリーミングサイトに目を向けているようだが、最終的に映画館がオープンしたときに、彼らがこれらのチャンネルに固執するかどうかを確かめる術はない。

映画製作者はほとんどOTTビデオプラットフォーム上に新しい映画をリリースすることを考えていないにもかかわらず、彼らは今、映画館が閉鎖されたままであるため、これらのプラットフォームが引き付ける視聴者を考慮しなければならないのだ。

一方で、”ドライブイン映画館”も検討されるべき新しい選択肢のように思えるが、まだその実現性については数回しか試されていない。

すべての事情を考慮すると、映画館文化を終わらせるには、パンデミックや消費者のライフスタイルの変化以上のものが必要になると言えるだろう。心理学的には、社会的相互作用の必要性は人間に内在するものであり、映画館こそがそれを促進する場である。

「今のところ、ナイジェリアでは映画館の可能性はまだ尽きていない。映画館の数が少ないので、例えば人気のある作品でも、大きなスクリーンがもっと多くあれば興行収入が上がったはずだ」とAkinmolayan氏は述べている。

ナイジェリアのエンターテイメント産業は、まだ映画館の可能性を十分に活かしきれていないという事実から、楽観的な見方ができる。そのため、今から映画館を絶滅させるのは早すぎると言えるだろう。

翻訳元:Why the pandemic will not be the end of cinemas in Nigeria

記事パートナー
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執筆者
武田彩花 / Ayaka Takeda
Contents Writer
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