キャッシュレス社会への取り組み【韓国】

韓国はすでにキャッシュレス社会に簡単に移行できるインフラを持っている。韓国人は皆、デビットカードやクレジットカード、アプリ、オンラインバンキング、そして「Kakao Pay」や「Toss」などのキャッシュレス決済オプションを持っている。(翻訳記事)
金融 EC 決済

近い将来、韓国のウォンを見なくなる日が来るだろう。韓国のお金は祖父母世代が持っていて、韓国の祝祭日にくれる不思議なものになるだろう。また、若い世代はそれをどう使えばいいかわからなくなるだろう。

冷たくて固い現金は消えていく一方で、それに代わるものは何だろうか?それはデジタル通貨である。韓国ではほとんどのお金が電子マネーで管理されている。そのため韓国はすでにキャッシュレス社会であると言えるかもしれない。

もし韓国の人々が一斉に現金を引き出そうとすると、紙幣の枚数が足りなくなる。そのため韓国のキャッシュレス社会への移行は、一般に考えられているよりも簡単なことなのだ。またCOVID-19の影響もあり、この移行は想像以上に早く進んでいる。例えばソウルではS-Coinを使ったデジタル通貨の実験が始まる予定だ。しかしこれは韓国のキャッシュレス社会への移行の始まりに過ぎない。

韓国は今、キャッシュレス社会なのか?

韓国、特にソウルはすでにキャッシュレス社会になっていると言えるかもしれない。

韓国はスマートフォンの普及率がほぼ100%であり、携帯電話やクレジットカードでの支払いは過去最高水準に達している。また韓国のスターバックスでは、現金が使えない店が存在している。マクドナルドやコーヒーショップのセルフオーダーステーション、さらには現金が使えないレストランもある。しかし韓国と中国を比較すると、完全なキャッシュレス化にはまだ数年かかるようだ。

ここでは物理的なお金に関する悲しい事実を紹介したい。物理的なお金は市民だけでなく、政府にとっても問題である。というのも韓国政府が韓国の通貨を印刷して鋳造するだけで、何十億ドルもの費用をかけなければならない。そして訓練された警備員が装甲トラックで銀行に通貨を輸送するインフラを整備しなければならない。その後、通貨を選別し、安全な金庫室に保管する必要がある。現金で運用すると、韓国では年間約70億ドルのコストがかかると言われている。このコストを考えると、韓国政府は一刻も早くキャッシュレス社会に移行しなければならないと思うだろう。しかしこれは主な理由ではない。

韓国でキャッシュレス社会に移行する最大の理由は、韓国人がキャッシュレス社会を望んでいるからだ。韓国の若い世代の間では速くて簡単な支払い方法を求める声が高まっている。さらに自分のビジネスを始めようとしている韓国の若い世代は、オンラインでビジネスを始める可能性が高い。

COVID-19が私たちに教えてくれたことのひとつは、オフラインでビジネスを始めることはリスクが大きいということだ。オンラインで商品やサービスを販売しようとする企業が増えれば、韓国市場にもより多くの決済システムが登場するだろう。

COVID-19後の韓国のキャッシュレス社会

韓国人は今ドアの取っ手やエレベーターのボタン、さらには現金に触れることにこれまで以上に気を使うようになった。WHOはこれまで現金の使用を推奨していなかったが、韓国では非接触型の支払いのみに対応する企業が増えている。

非接触型の決済は、現金よりもずっとクリーンだ。韓国のウォンは約7年間流通するため、細菌やウイルスが付着する可能性があり、韓国の紙幣の90%以上が細菌に汚染されていると言われている。

このような理由から、韓国人が現金を使う機会はどんどん減っている。COVID-19が広がる前から、韓国における現金の使用は減少していたが、COVID-19による韓国のEコマース業界のブームのおかげで、韓国人は今まで以上に電子決済に慣れ親しんでいる。

多くの韓国人にとって、デジタル化が進むことは進歩と同義であり、企業は、バーチャルカードやプリペイドカード、さらには暗号通貨に注目している。韓国の多くの企業がこれらのデジタル形式の支払いを受け入れるようになれば、物理的な現金が廃止されるのは時間の問題だろう。

韓国政府にとってのメリット

キャッシュレス社会への移行は、韓国の若い技術世代にとって素晴らしいだけではない。韓国政府にもメリットがある。お金を印刷するコストが大幅に削減されるだけでなく、脱税や不正行為を監視できるようになるのだ。

デジタル通貨ソリューションにより、すべての支払い、取引が記録されるようになる。韓国で税金を払うのは、年末にいくつかのボタンを押すだけの簡単なものになるかもしれない。さらに、取引が記録されることで、マネーロンダリングや違法行為の追跡も容易になる。

韓国人にとってのメリット

韓国はすでにキャッシュレス社会に簡単に移行できるインフラを持っている。韓国人は皆、デビットカードやクレジットカード、アプリ、オンラインバンキング、そして「Kakao Pay」や「Toss」などのキャッシュレス決済オプションを持っている。

キャッシュレス社会への移行は、韓国人が自分のお金を完全に把握できるようになることを意味する。すべての取引が記録され、韓国人は特定の取引のすべての側面にアクセスすることができるようになる。さらに、現金から離れることで、安全性も高まる。現金は簡単に盗まれ、取り戻すのは非常に困難であるからだ。一方、クレジットカードやデビットカードなどの決済手段には、詐欺などでお金を失うことを防ぐための保護機能が備わっている。

キャッシュレス社会に向けてのリスクについて

革新的なソリューションには、当然ながらデメリットもある。購入したものがすべて記録されることで、プライバシーが失われてしまう。韓国が民主的な国だからといって、韓国政府が国民のデータを大量に保有していることを韓国の人々が懸念しないわけではない。個人情報を収集することは、韓国政府だけでなく、企業にとっても非常に有益だ。しかし、最大のデメリットはもちろん、サイバー攻撃やハッキングである。現実に銀行強盗を阻止することが難しいように、サイバー攻撃を阻止することも同様に難しい。デジタル通貨が盗まれるだけでなく、個人情報もハッキングされる可能性もある。

クレジットカード会社は何年も前からこの種のハッキングに直面している。韓国の暗号通貨取引所でさえも、資金が盗まれたことがある。データ漏洩が問題になるのは、窃盗犯がそれを阻止しようとする企業よりも熟練されているからだ。ハッカーは一度だけ成功すればいいが、企業はありとあらゆる攻撃から身を守る必要がある。

このような理由から、サイバーセキュリティは多くの革新的なスタートアップにとって有力な分野のひとつとなっており、世界中の企業が、サイバーセキュリティのソリューションに何千億ドルもの費用を投じている。問題は、誰が誰を凌駕するかということだ。サイバーセキュリティかハッカーか?

韓国ではキャッシュレス社会への移行が鍵

韓国は新しい革新的な技術を取り入れるのが好きで、その技術を積極的に導入している。しかし、キャッシュレス社会への移行は、徐々に進めていくべきだ。韓国の若い世代はバーチャル・ペイメントに慣れているが、物理的な現金に頼っている何百万人もの韓国人高齢者がいる。いまだに韓国の銀行に行って支払いをしている人もいる。

韓国のキャッシュレス社会への迅速な移行によって最も被害を受けるのは、貧しい人々や高齢者である。そのため、誰もが取り残されないようにすることが重要だ。

韓国の銀行は、韓国のキャッシュレス社会に向けて準備を進めている。

韓国の銀行はブロックチェーン技術を取り入れ始めている。韓国のような国は、自国の通貨に代わるものとして独自のデジタル通貨を開発する時が来るだろう。では、ビットコインのような暗号通貨はどうなるのだろうか。FacebookのLibraで起こったことが大きなヒントになった。アメリカ政府は、暗号通貨を脅威とみなした銀行から大きな圧力を受けたのだ。

キャッシュレス社会への移行は韓国でもいつかは起こるだろうが、本当の問題は、最終的にどの形態のデジタル通貨が勝利するかということだ。中央銀行か、既存の暗号通貨か。これは歴史的に見ても、中央銀行が主導権を握るだろう。暗号通貨は、主要銀行にとっては大きな問題である。しかし、国の通貨が国のデジタル通貨に移行すれば、主要銀行にとっては絶好の機会となる。韓国の銀行がここ数年、ブロックチェーン技術の研究開発に数百万ドルを投じているのはそのためだ。彼らは、韓国政府がこの大きな移行をしようとしたときに、自分たちを重要なプレーヤーとして位置づけようとしている。だからこそ、私たち自身がこの流れから取り残されないように、自分自身を教育し、準備しておくことが重要である。


   

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翻訳元:https://seoulz.com/moving-towards-a-cashless-society-in-south-korea/

表題画像:Photo by Nathan Dumlao on Unsplash (改変して使用)

記事パートナー
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執筆者
中嶋 清楓 / Sayaka Nakashima
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