マレーシアのコピーキャット文化

学術研究が盛んにも拘わらずコピーキャット文化が顕著なマレーシアについてのレポート。
研究機関

マレーシアは、異なる文化や視点が合わさる国であるにもかかわらず、製品開発や商品化において、起業家の多くが構想や想像よりも、既存のビジネスの再構想や再調整を行う傾向にある。

マレーシアの人々は新しいコンセプトや製品の研究に長けており、2018年のQSアジア大学ランキングでは、マレーシアの5つの指定研究大学が全てアジアのトップ50大学にランクインしている。同国は研究関連の出版物の量において2006年から2016年までで5倍、質においては2016年の出版物のほぼ40%が世界の雑誌掲載の上位25%にランクされるなど、幅広い面で指数関数的に成長しており、研究出版物の発行数も大変なものである。この成長は、他の多くの東南アジア諸国と比べて全体的な投資が不足しているにも拘らず発生している。過去10年間で、GDPに占めるマレーシアの研究開発費の割合は1%前後で推移しており、トップの韓国や日本や他東南アジア諸国の平均値を上回っている。

だが、研究開発はプロダクトが完成して初めて効果を発揮するものであり、マレーシアでは新製品を商品化するプロセスが、コンセプト化するプロセスほど強くない。この国では、新製品を商品化するよりも、既存の製品のトレードやコピーが一般的なのである。政府は、この問題に対して特別に発足した国家的技術商業化プラットフォーム「PlaTCOM」を承認したほどである。コピーキャット文化はマレーシアの文化と産業の一部として組み込まれており、「Flower and Bamboo Ladder Streets」のような名前の通りで無数のベンダーが通りの名前と同じ商品を販売しているベトナムと同じような状況である。マレーシアでは、地元のココナッツライス(Naasi Lemak)のレストランが成功すると、その近所に同じようなレストランが3軒は立つと言われている。

同じように、マレーシアのスタートアップの多くは、新しいものを開拓するよりも、既存のビジネスや製品の複製を行うという要素を強く含んでいる。世界的な起業家を排出している国(アメリカ、イスラエル、イギリスなど)を除けばほとんどの国のビジネスがそうであるように、マレーシアのスタートアップの大半が、既存のグローバルで成功している企業の派生のようなものである。例えば、「Netflix」の東南アジア版である「iFlix」や、ニューヨークを拠点とするオンライン医師予約サービスのユニコーン「ZocDoc」の東南アジア版である「BookDoc」などが挙げられる。しかし、本当に破壊的なモデル(大きな成長で近隣諸国をしのぐほどのモデル)の獲得には、既存の製品や方法の焼き増しではなく、創造性と機知を駆使して未解決の問題を特定し、それを解決するという起業家精神が必要なのである。

マレーシアのスタートアップエコシステムの中では、マレーシア人が起業家精神についてどのように考えているかを定義し直し、イノベーションの促進として、次世代の素晴らしい国産企業を生み出すための取り組みが行われている。結局のところ、本当に新しいビジネスモデルを創出することは、マレーシアを他の東南アジアにおけるコピーキャット文化ばかりの国と差別化するだけでなく、地元の起業家や会社を現在の資本的中心地であるシンガポールへの流出を防ぎ、マレーシアに誘引して、マレーシアで成長させる、ということにも繋がるだろう。

翻訳元: https://startupuniversal.com/malaysias-copycat-culture/

記事パートナー
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執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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