新型コロナウイルス感染症後の世界:スマートシティーが持続可能性に注目すべき理由やその方法

BCB Blockchain のVanessa Koh氏が、世界的なパンデミックからの回復期を見据えた新しいサステナビリティとスマートシティのあり方をまとめる。
ブロックチェーン ディープラーニング エネルギー 不動産

新型コロナウイルス感染症は、スマートシティと熱狂的な都市生活の長期的な持続可能性について、新たな洞察をもたらした。世界中の国々が医療部門を強化したり、必要不可欠なシステムを維持するために投資をしたりしている一方で、現在も拡大を続けているパンデミックは、多くの人々にニューノーマルのあり方について疑問を投げかけている。

ウイルスというのはグローバルな医療やガバナンスへの重要なチャレンジであることに加えて、緊急事態に対する備えとインフラを確認するリトマステストであることが証明されている。

より良い機会や、便利なアクセス、生活の質の向上が約束されていることが、人々をこれまで都市に惹きつけてきた。国連経済社会局の報告によると、2050年までに世界人口の3分の2以上が都市部に住むと予想されている。世界の国土のたった2%しかない都市部の人口密度の高さは、特に新型コロナウイルスのような感染力の高い感染症の管理や抑制を複雑にしている。

さらに、現代経済の欠点は、危機に伴う需要への対応とより持続可能なインフラへの投資との間に、逼迫した緊張感を生み出している。

持続可能な未来に向けた危機対策

危機に対応する技術的な解決策がより良い未来をもたらせるということは、この数ヶ月間で証明されている。テクノロジーリーダーとスマートシティーは、持続可能な生活と発展を確実にするためのユニークな場所に立っている。これは、徹底した監視と迅速な対応が必要なパンデミックの場合には、特に当てはまる。

中国などの国々は人工知能(AI)技術とビッグデータを効果的に活用して、フロントラインの医療従事者を支援し、リアルタイムでの接触者追跡を調整し、潜在的な症例をスクリーニングしている

テレワークを促進するデジタル技術やウェブベースのコミュニティーの構築、バーチャルサービスやヘルスケアの必需品の3Dプリントなどへの適応は、スマートシティの仕組みが危機から学ぶだけでなく、危機の渦中でも学べると証明している。

持続可能な開発において、パンデミック後のブロックチェーンがもつ可能性

ブロックチェーン技術は、データの伝達と保護の方法に革命をもたらした。その相互接続性と不変性のおかげで、世界中の都市でのブロックチェーン技術の活用は、都市管理システムの進歩にもつながっている。ヘルスケアや医薬品、食品や農業などの業界は、当局が資源を効果的に監視し配分できるようにしながら、サプライチェーン管理を高度なレベルに引き上げることができる。

ブロックチェーン技術は、持続可能な都市デザインのホットな話題となっているだけでなく、世界のリーダーたちがより良い未来のために投資している有望なソリューションでもある。国連情報通信情報技術タスクフォース(UN-OICT)は、アフガニスタン政府の復興支援のために、最先端のブロックチェーンを利用したソリューションを開発している。

UN-OICTは「City for All」と呼ばれるイニシアティブの一環として、国のインフラ課題を解決し、効果的な土地管理システムや戦略的な都市インフラの導入のほか、地方自治体の財政改善をもたらすために、ブロックチェーン技術を活用している

ブロックチェーン技術は基本的な必需品に関するリアルタイムの情報を提供することで、エネルギー供給の自動化や水の消費量の管理、大気レベルのモニタリングなど、公共サービスにも変革をもたらしている。当局は資源をよりコントロールできるようになり、データの整合性を確保しながら、都市計画の根本的な問題にも対処できるだけでなく、需給の効率向上させることができる。

より広範囲な持続可能性における課題への取り組み

復興の次の段階に向けてパンデミック後のパッケージをまとめる際には、環境の持続可能性を分析することが重要である。新型コロナウイルス感染症対策の一環で導入された隔離措置の期間中における経済の減速は、都市汚染の大幅な改善をもたらし、人間の活動が地球に与える影響を再評価する必要性をもたらした。

炭素の排出量を最小限に抑え、エネルギー消費を抑制する長期的な対策と、よりスマートな廃棄システムを導入することで、より健全な都市環境を確保できる。スウェーデンの通信機器メーカー「Ericsson」が公表したエリクソンモビリティレポートによると、ICTを活用したソリューションが効果的に導入されると、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を15%抑制できるという。

総合的な計算と効果的なスマートグリッド(次世代送電網)とともに、汚染のホットスポットを特定し、発生源を特定するための積極的な対策を講じることが容易になり、将来の計画に向けた進捗を不変の記録として残せるようになる。

例えば、ミャンマーのヤタイ市でBuilding Cities Beyond(BCB)ブロックチェーンによって導入されたスマートメーターは、エネルギー管理を洗練させた。さらにはエネルギー消費行動を規制し、市全体のエネルギー効率を向上させている。スマートメーターを利用するヤタイ市のホテルは、環境に優しいユーザーを特定し、リベート割引を提供することもできる。

さらに、クラウドベースのソフトウェアアプリケーションは、日々のライフスタイルを変え、エネルギー消費を抑制できるデータを効果的に受け取り、分析し、リアルタイムのインテリジェンスに変換できる。アップルやグーグル、アマゾンといったテクノロジー企業の大手は、家庭の電力使用量の管理方法を変える様々な装置をリリースしている。

一方で、廃棄物は人間の活動においてほぼ避けられない産物であるため、世界中のすべての国にとって重要な問題となっている。都市における廃棄物は大気や水質に影響を与え、健康被害を引き起こし、公共空間にも影響を与える。

自動制御ができる廃棄物の処理システムは、都市における廃棄物管理を再定義する力を持っている。センサーと分散型ブロックチェーンネットワークによって、地方自治体は相互運用が可能な追跡施設を作り出し、持続可能な廃棄物の管理システムを実現できる。オープンネットワークによる可視性が高まると、消費者、企業や廃棄物の管理業界の間で説明責任も高まる。

現在進行中のパンデミックから徐々に回復していく中で、明日の状態を明確にし、将来の世界的な危機に直面するための準備を整えることは重要である。複雑で相互に接続されたフレームワーク上に構築されたスマートシティは、変化の担い手となり、世界の文化を再構築するには良い位置につけている。

とはいえ、持続可能性には協力的な努力が必要であり、より良い未来を維持する責任は人類が真っ正面から取り組むべきものである。テクノロジーや資源の管理システムが進歩しても、急速に都市人口が増加しているという現実は、持続可能な生活を確保するために、イノベーターや政策立案者、そして日常生活を営む人々が、これまでとは異なる考え方やアプローチを採用しなければならないことを意味している。

どんなに小さなことでも、すべての旅は最初の一歩から始まる。それぞれの役割を一緒に果たしていこう。

翻訳元:https://e27.co/life-after-covid-19-how-and-why-smart-cities-need-to-focus-on-sustainability-20200626/

記事パートナー
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執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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