トラベルテックのスタートアップ創業者がパンデミックで得た3つの教訓

トラベルテック起業家が、今なお続く厳しい旅路で学んだことを共有。
旅行

トラベルテック起業家が、今なお続く厳しい旅路で学んだことを共有。

「Triip」は、他のビジネス・企業と同じように、2020年に向けての計画を話し合うためチームのメンバーを集め、ポジティブな気持ちで一年をスタートさせた。そこでは、同社の核となる価値観である「持続可能な旅行を人々に奨励する」方法のブレインストーミングが行われた。そして「Triip」のCEO兼共同創業者であるHai Ho氏は、「2020年に向けての準備はできている」と、ワクワクするような計画を掲げていた。

しかしCOVID-19が発生し、それらの計画はすべて台無しになってしまった。そしてそれに伴い、Hai氏とチームメンバーたちは、旅行が制限されていたり、完全に禁止されていたりする、旅行業界にとって、そしてトラベルテック企業にとって未知の領域を歩んでいることに気がついた。

今回、昨年末の記事でも紹介したHai氏に少しだけ話を聞くことができた。会話の中で、彼は彼自身とチームが今なお途上の困難な旅の中で学んだことをいくつか話してくれた。

彼らが得た3つの教訓の共通点は、”選択”である。

教訓1:自然の法則からは逃れられないが、変化に適応することはできる

「様々な段階を経て、あらゆる計画の変更を心配して、この業界の不確実性を恐れて……。私たちは今、このパンデミックがすぐには終わらないことを悟っている」とHai氏は語る。

特に、旅行・観光産業はCOVID-19によって最も影響を受けた産業の一つであるため、完全に回復するには長い時間が必要だと考えた。「私たちは収益のためにCOVID-19と、そしてこの現状と闘う訳ではなく、ただ回復を黙って待つ代わりに何か行動を起こさなければならないとの思いから闘うのだ」と同氏は続ける。

関連記事:2018年12月12日、今日のトップテックニュース:ベトナムの旅行会社Triipがブロックチェーン予約を可能に

「Triip」にとってその何らかの行動とは、リモートワークへの完全移行などによる規制への対応と、それに伴う課題への対応を意味していた。チームの結束力を保つために「Triip」の社員は、隔週で「ハピネスコール」に参加し、自分にとっての幸せを互いに共有し合っている。

「パンデミックは私たちの計画にはなかった。しかし、ポジティブに考えると、これまで誰も経験したことのないような規模で、自分たちの手に負えない状況にどうやって適応していくかを学ぶ良い機会になっている」

教訓2:チームで協力することを選択できる

「資源が不足している中だが、チーム一丸となって戦うことにした」とHai氏は説明する。ベトナムを拠点にしているチームのメンバーは皆、「共に頑張ろう」という気持ちを持っている。収益が行き詰まったとき、少しでも長く会社を存続させるための”滑走路”を確保するために、現金ではなくストックオプションを支給することにした。

困難な状況の中でも無傷でいられたことで、チームはチャンスを見つけ、一丸となって取り組み、勝利を収めることができた。彼とチームメンバーは「スターウォーズの反乱軍のようなもの」だと自身を表現する。「トレーニングをして、休んで、逆襲するのさ」と意気込む。

反撃した。それこそが「StayHome Heroes」の誕生であった。

3月に #BuildforCOVID19 ハッカソンの募集があったとき、チームはすぐに行動を起こした。72時間以内に、製品チームからグロースチーム、正社員からインターンまで、「Triip」の全社員が手を取り合って、価値のあるプロジェクトを捻り出した。ハッカソンの最中、小さなチームの集まりではなく、一つの大きなチームであったのを実感した。

「勝利の保証はなかったが、チームとしてこの勝利を達成した」とHai氏は誇らしげに語る。

「StayHome Heroes」プロジェクトはハッカソンにおいて1,000以上の応募作品を下し、89の世界的プロジェクトの1つに選ばれた。

関連記事:ベトナムのトラベルテックスタートアップ「Triip」が新たな資金調達を行い、ICOに向けての準備を進める

教訓3:最初は自分の価値観に反することがあっても、自分のコンフォートゾーンから一歩踏み出すことを選ぶべし

「私たちは人々の旅行へのモチベーションを高めてきた。また、幸せを"共有"することこそが私たちのコアバリュー (SHARE - Sustainability - Happiness - Adventurer - Resilience - Excellence) である。しかし、ソーシャルディスタンスの時代とは、私たちが大切にするこれらの価値観に反するものだ」

Hai氏は、もしも自分たちがEコマースの会社であれば、波に乗れたかもしれないと考えなかったわけでは無い。しかし、「トラベルテック企業として、この津波にどう対処すべきか?」そう疑問を立て直した。

彼によると「StayHome Heroes」は、パンデミック以前の計画を変更し、「今は我慢して、後から旅をする」というキャッチフレーズを取り入れたことがきっかけで生まれた。

「私たちは今でも最高の仕事をしている - 人々を鼓舞するという仕事を。しかし今、私たちは”渡航証明書”を”滞在証明書”に作り直さなければならない。そのため我々は、このキャンペーンに参加している人々を「StayHome Heroes」と呼んでいる。このプロジェクトでは、ソーシャルディスタンスの実践を促進するため、滞在することに対して対価を支払う。

「トラベルテック企業として、私たちは環境に適応し、学び、素早く変化していく。COVID-19と戦うためのソリューションを見つけ、この厳しい時期に人々を助けることに特に焦点を当てたハッカソンに参加した。短い時間の中、多くのプレッシャーの下で最高のパフォーマンスを発揮したと自負している」

これもまたいつかは過ぎ去る

チームのコアバリューである「幸せ」を体現するような人物であるHai氏は、パンデミックの終わりを楽しみにしている。「みんながまた旅をして思い出を共有するようになる。私たちは美しい日々に再会し、その時にはきっと、より良く成長し、お互いにさらに大きな感謝の気持ちを持つようになっているだろう」

「再びトラベラーとなり、放浪心を持つことが許されるようになるまで、我々皆が”StayHome Heroes”である」と締めくくった。

翻訳元: "Lessons from a travel tech startup founder on navigating the pandemic-stricken business landscape"

https://e27.co/lessons-from-a-travel-tech-startup-founder-on-navigating-the-pandemic-stricken-business-landscape-20200504/

記事パートナー
アジア各国のスタートアップシーンを世界に発信するオンラインメディア
執筆者
武田彩花 / Ayaka Takeda
Contents Writer
海外スタートアップの最新トレンドを
ニュースレターでお届け!
* 必須の項目

関連記事