Korea Startup Forumの代表へ独占インタビュー【韓国のスタートアップ事情】

アジア3位のユニコーン企業輩出数を誇る韓国。今回、そんな同国のスタートアップエコシステムについて、現地有力コミュニティであるKorea Startup Forumの代表に独占インタビューを実施した。
VC/CVC

SUNRYSE.のグローバルコミュニティパートナーであるKorea Startup Forum 代表のチェソンジン氏に、アジアの中でも一目置かれる存在になった韓国のスタートアップエコシステムの成長の秘訣についてインタビュー取材を実施しました。

韓国はユニコーン企業を8社を輩出しており、その数はアジア3位に位置付けています。

ロッテやサムスンをはじめとする老舗企業とのコラボレーションも活発化しており、世界から注目されているスタートアップ大国になっています。Bloomberg Innovation Indexによると、韓国は、ドイツやアメリカなどの欧米諸国を差し置いて堂々の一位を獲得しており、今後もさらなるイノベーションの発展が期待されている国です。

(参考:https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-02-03/south-korea-leads-world-in-innovation-u-s-drops-out-of-top-10

  

  

1.簡単な自己紹介をお願いいたします。

Korea Startup Forum代表のチェソンジンです。

大統領直属4次産業革命委員会民間委員、公共データ戦略委員など公共部門の民間専門家として活動していました。ダウム・コミュニケーションズ、韓国インターネット企業協会などI T、スタートアップ分野で20年以上勤務してきました。

  

  

2.Korea Startup Forumはどのようにして始まったのでしょうか?また、当初はどういう問題を解決しようとしていたのでしょうか?

Korea Startup Forumは韓国のスタートアップの創業者たちが自発的に集まり、2016年から活動を開始しました。韓国のスタートアップエコシステムが成長し続ける中、スタートアップを代弁できる団体があまりない状況で、自らスタートアップの声を世の中に届け、エコシステムでの役割を広げようという考えのもと活動を始めました。起業家たちとスタートアップがうまく成長できる社会的環境を整えることを目標に、障害となっている様々な問題を解決しようと取り組んでいます。

  

  

3. Korea Startup Forumのスタートアップエコシステムでどのような役割を果たしていますか?また、現在、解決しようとしている問題はどんなものでしょうか?

Korea Startup Forumは、韓国のスタートアップエコシステムで様々な役割を果たしています。最も重要な役割は、1500個以上のスタートアップ会員企業を基盤に、スタートアップが肌で感じている問題を解決しようとすることです。法制度的環境がスタートアップの革新ビジネスと合わない場合が多々ある中で、Korea Startup Forumは100個以上の規制革新課題を発掘・公論化し、その中で20%程度は実際に規制改善を成し遂げました。

加えて、初期スタートアップに必要な投資、企業運営などに対する教育と法律支援も行っています。産業と地域を基盤とする協議会も傘下機構として運営し、スタートアップエコシステム構成員(投資者・大企業・支援機関など)とネットワーキングも活発に展開しています。

  

  

4. 韓国は、日本より多くのユニコーン企業を存在しているなど、スタートアップエコシステムがうまく形成されているように見えますが、現在までの成功秘訣を教えて下さい。

スタートアップエコシステムの構成要素は「人」、「資本」、「技術」、「市場」だと思っています。その中で韓国は人材面で明確な強みを持っています。優れた人材たちが創業した優良スタートアップが持続的に出ていることが韓国スタートアップエコシステムが成長する一番の要因だと考えています。

韓国でスマートフォンが登場した2009年以降モバイル市場を中心にスタートアップの創業数が大きく増加し、エコシステムが本格的に形成されました。この際に、初期投資が不足していた市場に政府が積極的に「ファンド・オブ・ファンズ」を運営したことが大いに役立ちました。

2000年代初頭、ドットコムブームで大きく成長した、NAVER、Kakao、NC、NexonのようなIT企業の役割は非常に大きいものでした。これらの企業で経験を重ねた多くの人材が退職してスタートアップを起業し、企業も将来有望なスタートアップに投資をするなど、お互いにより良い協力関係を形成することに繋がりました。スタートアップの成長が本格化すると、三星(サムソン)、現代(ヒュンダイ)などの大企業も投資と支援プログラムを立ち上げて、エコシステムの成長をさらに加速させました。

  

  

5.韓国のスタートアップは大企業または政府および自治体とどのようにして協力しているのでしょうか。

スタートアップと協力している大企業はスタートアップが自分たちの未来の成長動力になると期待しています。このような大企業は段々増えています。協力方式は大きく二つあります。一つ目はCVCなどを通じてスタートアップに戦略的投資を進行することです。もう一つは自分たちのビジネスと関連のあるスタートアップを支援して良い関係を形成することである。三星(サムソン)、現代(ヒュンダイ)、G S、ロッテ、韓火(ハンファ)など主要大企業はこれらの両方のアプローチで取り組んでいます。

政府と自治体は「ファンド・オブ・ファンズ」を通じて、スタートアップ投資を支援すること以外にも、事業化支援や施設支援、インキュベーティング、コンサルティング、教育、行事など様々な起業支援活動を行っています。2021年の韓国政府の公告によると、政府と自治体の起業支援事業は年間1兆5千億ウォン規模になっています。

  

  

6.Korea Startup Forumがフォーカスしている産業分野はありますか。フォーカスしている産業分野がある場合は、どんな面でその業界に関心があって、その業界に関連したどのようなインサイトを持っているのでしょうか。

Korea Startup Forumには様々な産業分野のスタートアップが関わっています。

その中で産業協議会が構成されている分野がO2O、モビリティ、プロップテック、製造業、リーガルテックなどである。O2Oとモビリティはデジタル経済の中心的な役割を果たすと期待されていて、スタートアップ起業が最も活発に行われている分野です。プロップテックはフィンテックとともに既存産業がデジタル転換する過程で非常に大きい規模の産業群で成長することが期待されています。製造業界は、韓国経済の伝統的強みである製造業を革新することができるスタートアップが段々登場している領域で、リーガルテックはデジタルヘルスケアとともに規制によって市場形成が遅滞されていますが、成長可能性は最も大きい産業領域です。

  

   

7.新型コロナウイルスが韓国のスタートアップエコシステムに及ぼした影響に関して、なにか面白いインサイトなどがあれば教えてください。

新型コロナウイルスの影響でスタートアップは多くの困難を経験しましたが、むしろこの危機を活用するべきであるという考えが広がっています。ソーシャルディスタンスの動きが、オンラインサービスを中心に大きなチャンスとなり、デジタル転換が加速化されるきっかけとなりました。これまで大企業中心にデジタル経済への転換が起こっていたが、今は近所の小さい店舗もデジタル転換を進めています。柔軟な対応が求められる新型コロナウイルス下の経済は、素早く、柔軟に変化できるスタートアップの強みを存分に発揮することができる大きなチャンスであると考えています。

  

  

8.Korea Startup Forumの今後の課題やアップデート情報があれば教えてください。

韓国ではユニコーンスタートアップが比較的多く出現していますが、今後は、成功的なexit事例がより多く出るべきだと考えています。2020年には、Big Hit Entertainmentの株式公開、Woowa BrothersのM&Aが行われましたが、このような世界が注目する成功事例となるexitが活性化することで、エコシステムのさらなる好循環が生まれると考えています。

また、韓国のスタートアップエコシステムの成長度合に対して、世論のスタートアップに対する社会的認識はいまだに低い状態です。スタートアップの位相と認知を高めるために、様々なステイクホルダーと連携しながら、着実に一歩一歩取り組んでいきたいです。

  

  

9.韓国と日本間のスタートアップエコシステムの成長のためにどんな協力をすべきかについてアイデアがあるのか。

スタートアップエコシステムの中で、日韓交流は主に韓国のスタートアップと日本の投資家の間で行われてきました。日本市場に進出しようとする韓国のスタートアップと、

SoftBank Ventures Koreaのように韓国のスタートアップに投資しようとする日本の投資家の間の連携がメインで、日本のスタートアップと韓国投資家の間の交流や協力はあまり聞いたことがないのが実情です。お互いスタートアップエコシステムの成長のためにはより多様な協力関係を通じて互いの成長を刺激すべきであり、これには、日本のスタートアップと韓国投資家、日韓スタートアップ、日韓投資家の間の交流と協力が必要になります。Korea Startup Forumとしては、両国のさらなる発展のため、日本のスタートアップと交流できる機会なども今後、積極的に創出していきたいと考えています。

執筆者
大久保迅太 / Hayata Okubo
Content Writer
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