【JETRO独占取材】日本企業がインドネシアで果たす役割とは?

ASEANで最大のGDPを持ち、経済成長が著しいインドネシア。今回CoHiveでは、インドネシアと日本の貿易関係について掘り下げていくために、JETROインドネシア代表取締役社長の鈴木啓之氏へのインタビューの機会を得た。
メディア マーケティング VC/CVC 研究機関

インドネシアと日本は、世界経済の発展という点では異なる視点を持つが、両国は互恵的な二国間関係を築く方法を見出してきた。ASEAN諸国の中で最大のGDPを持ち、最も需要の高い市場であるインドネシアは、今後10年以内に経済がさらに急成長すると予測されている。しかしその期待とは裏腹に、インドネシアは大きな課題にも直面している。 一方、世界第3位の経済大国である日本も、人口減少や高齢化などの課題を抱えている。そのため、お互いの強みを活かし、お互いの課題を克服していくためにも、両国の協力が重要だ。

日本と世界を結ぶ日本貿易振興機構(JETRO)は、インドネシア政府と緊密に連携し、貿易協定、投資、社会経済関係の橋渡しを行ってきた。この関係は長年の努力と外交関係の上に築かれてきたもので、今日のような緊密な結びつきとして花を咲かせることができた。JETROが「対日投資」戦略を推進する国の一つとしてインドネシアを優先するのは当然のことと言える。この戦略は、企業が海外に投資し、独自の製品やサービスを日本に持ち込むことを呼びかけるものだ。 インドネシア最大のコワーキングスペースプロバイダーであるCoHiveは、Katadata Insight CenterのリサーチディレクターであるMulya Amri博士とCoHiveのCEO兼共同創業者であるJason Lee氏との共同ウェビナーを通じて、JETROを会員に紹介することで、インドネシアのローカルスタートアップの海外進出促進に参加することを目指している。

  

今回CoHiveでは、インドネシアと日本の貿易関係についてさらに掘り下げていくために、JETROインドネシア代表取締役社長の鈴木啓之氏へのインタビューの機会を得た。

  

  

ご自身のリーダーシップは、JETROジャカルタのビジョンとミッションの推進にどのように貢献してきましたか?また、インドネシアのスタートアップ・エコシステムについてはどのようにお考えですか?

私は2年前にこちらに来て以来、インドネシアの投資環境の改善に力を入れてきました。例えば、インドネシアに進出している日本企業を対象としたアンケート調査を実施し、インドネシアの投資エコシステムに関する回答を発表しました。これは、インドネシアと日本政府の双方にとって非常に重要な知見を提供しており、オムニバス法を支援するためにも活用できます。さらに、私は日本政府のイニシアティブに沿った具体的なビジネス活動や商取引を奨励してきました。

日本政府が提供している取り組みの一つに「アジア・デジタル・トランスフォーメーション(ADX)」があります。これは、日本企業がASEAN諸国と連携し、特にデジタル技術を活用してASEAN諸国の社会経済的課題の解決に貢献することを支援するというものです。本プロジェクトでは、日本企業もASEAN加盟国の政府や民間企業と連携して、デジタル・イノベーションを共有し、ビジネス環境を整えるための施策に積極的に貢献していきます。その結果、ネットワークを広げ、インドネシアのスタートアップと知り合うことができました。私自身、以前はイノベーション部門で働いていましたが、その経験からインドネシアはスタートアップを推進するには最適な場所だと考えています。

  

  

JETROとは何ですか?また、インドネシアにおけるミッションは何ですか?

日本貿易振興機構(JETRO)は、日本と世界の国々との間の相互貿易と投資を促進するために活動する政府関連機関です。1958年に日本の海外輸出を促進するために設立されましたが、21世紀に入ってからは、対日直接投資(FDI)を促進し、日本の中小企業が世界への輸出の可能性を最大限に発揮できるように支援することを中心に活動しています。JETROジャカルタは1959年に設立され、両国間の経済関係を促進する上で大きな役割を果たしてきました。

私たちのミッションは、日本と世界の国々との間の貿易と投資を促進することです。私たちにはいくつかの活動理由がありますが、その中でも最も重要なのは対内FDIの促進であり、私たちの組織がその目標にどのように協力していけるかということです。

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インドネシア企業にとっての日本市場の可能性

外資系企業が日本市場に進出する際の障害や障壁は何か、また進出前に知っておくべきことは何でしょうか?

JETROでは、FDI(外国直接投資)の推進機関として、日本への進出を希望する外国企業を対象に毎年アンケート調査を実施しています。この調査によると、人材確保の難しさやコミュニケーションの難しさ、特に英語でのコミュニケーションの難しさを主な障害として指摘する声が多く寄せられています。またそれ以外にも、日本でビジネスを行うためのコストの高さを挙げる声も多く聞かれました。そこでJETROでは、これらの障害を克服するために、日本国内の外資系企業の人材確保やビジネス相談を支援しています。

  

インドネシア企業の進出先に適した日本市場とは?インドネシア企業で日本に進出したいと考えている企業には、何か条件が課されるのでしょうか?

実は、インドネシア企業の日本進出には特に規制や条件はありません。インドネシアでは投資額に制限がありますが、日本ではそのような規制はありません。 日本の政府や県は積極的に外国企業の進出を促すため、外国企業が日本でビジネスを行う際の税制優遇措置や補助金など、様々なインセンティブを提供しています。興味のある企業は、私たちのオフィスに連絡してください。投資を決定する際に利用できるリソースや支援についての詳細をお伝えできます。

  

日本政府が求めている業種・業態とは何でしょうか?また、それらが資金調達や支援に適している理由は何でしょう?

日本には、農林水産業などの天然資源を活用するための高い技術力やアクセスの良さを誇る、様々な企業が存在します。これらの資源を、海外企業の販売、技術、人材につなげていきたいと考えています。ご存知のように、日本は両国の経済を活性化させたいと考えており、両国にとってWin-Winの関係を築きたいと考えています。また、日本とインドネシアの人々は相互に補完関係にあるため、投資誘致の機会も提供しています。

  

  

JETROのインドネシア市場への見通し

政府や伝統的な企業以外に、JETROはスタートアップとのコラボレーションにも興味を持っていますが、スタートアップの参入基準は何ですか?

JETROとの提携には特に基準はありません。日本とインドネシアのスタートアップとの取引を促進したいと考えています。日本のスタートアップのグローバル展開を支援するために、ジャカルタで開催される「Tech in Asia」などのイベントにJ-Startupパビリオンを設置しています。また日本政府の主導で、デジタルトランスフォーメーションの具体的なプロジェクトを進めています。先月はインドネシアの財閥と日本のスタートアップとのビジネスマッチングイベントを行いました。その後も、インドネシアのスタートアップと日本企業とのコラボレーションイベントを企画しており、今後も可能な限り同様のイベントを開催していきたいと考えています。

  

日本とインドネシアは共に地域包括的経済連携協定(RCEP)を締結しました。このような協定は、両国間の貿易をどのように形作ることができるのでしょうか?

私たち両国はすでに、インドネシア-日本経済連携協定(IJEPA)やASEAN-日本包括的経済連携など、いくつかの二国間協定を結んでいます。これらのリストに加え、RCEPはさらに大きな取引となっています。地域包括的パートナーシップの重要なポイントは、加盟国が世界のGDPや世界人口、世界貿易の30%を占めていることであり、これは大きな意味を持っています。この地域の非常に強力な利害関係者の間で、高水準の貿易・投資ルールに合意することは容易なことではありません。このパートナーシップを可能にしたのは、我々の総力を結集した努力とたゆまぬ交渉の結果です。このようにこのパートナーシップは、今後何年にもわたって地域の貿易と投資を形作っていくであろう、大きな成果と言えます。

いずれにしても、どの貿易協定を選択するかは各企業の自由であり、どの経済連携にもそれぞれのメリットがあります。関税の低さを追求したいのであれば、二国間が有効な場合が多いでしょう。しかし、他のルールや他の貿易協定では、他の多国間の貿易協定も活用することができます。今回の協定は、世界経済の成長の中心であるアジア地域の貿易・投資を強化するものだと思います。RCEPがもたらす可能性について、私たちは非常に楽観的な視点を持っています。

  

  

JETRO と CoHive

CoHiveはインドネシア最大のコワーキングスペースとコミュニティを提供していますが、私たちのコラボレーションはインドネシアでの日系企業の進出やその逆の展開に役立つと思いますか?

私たちは、CoHiveと提携できることを嬉しく思いますし、日本とインドネシアの企業が地域的に拡大するためのより大きな道をもたらすと信じています。日本が非常に積極的に、インドネシア企業からのコラボレーションや参入を歓迎していることを、私たちはCoHiveのメンバーにお伝えしたいと思います。近い将来にも、CoHiveとより緊密に協力していきたいと考えています。最近の活動としては、日本の働き方や医療のデジタル化の加速についてのプロモーションビデオを制作しています。これは、視聴者の皆様に日本のエコシステムをより良く理解していただき、皆様の意思決定に役立てていただくためのものです。

  

私たちのスタートアップメンバーが日本への投資についてもっと知りたい場合、どのようなリソースや情報を得ることができますか?また、どこで入手できますでしょうか?

一番簡単な方法としては、JETROのウェブサイトを見ることで、日本のビジネスエコシステムや、日本での事業拡大や投資の方法についての豊富な情報を得られます。このようにCoHiveのメンバーの皆さんには、今後のイベントや現在進行中の取り組みなど、興味深い記事がたくさんあることを知っていただきたいと思います。

  

2020年以降の未来を見据えた場合、メンバーが気になるであろうプログラムなど、何か共有はありますか?

当社は、2003年から「日本への投資」キャンペーンを開始し、インドネシアへの投資支援を行ってきました。これに加えて、今後2~3年はアジアのデジタルトランスフォーメーションの取り組みにも力を入れ、デジタル分野を中心に、より具体的なビジネスマッチングを支援していきたいと考えています。特に、EC、決済、医療、金融技術のデジタル化に力を入れていきます。

  

  

翻訳元:Keishi Suzuki: Promoting the Startup Ecosystem for Indonesia & Japan’s Economic Growth

記事パートナー
インドネシアで最も成長著しいコワーキングスペース
執筆者
武田彩花 / Ayaka Takeda
Contents Writer
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