ユニコーンの雨が降るインド :2021年、7ヶ月間で16のユニコーン企業が誕生

インドは凄まじい勢いでユニコーン企業を輩出している。本記事では、その理由を探っていく。
EC VC/CVC インド 金融

ユニコーンとは、評価額が10億米ドルを超える未上場のハイテクスタートアップのことだ。インドは最近、凄まじい勢いでユニコーン企業を輩出している。本記事では、その理由を探っていく。

インドのハイテク産業は新たなピークに達している。インドは長年、世界のアウトソーシングの中心地であったが、ついにインドのスタートアップの時代がやってきた。2021年はパンデミックにもかかわらず、インドにおける一部のテック系スタートアップの活躍が目覚ましかった。

実際、COVID-19のためにほとんどの企業が操業を停止していたとき、ロックダウンは世界的に経済のデジタル化を加速させた。インドではパンデミック以前からすでにデジタル化への道を歩んでいたため、さらに加速している。

その結果、インドの大手テックスタートアップの中にはユーザー数が大幅に増加、投資家からの関心も高まり、2021年の最初の7ヶ月間で、16のユニコーンを生み出した。Digit Insurance、InnovAccer、Meesho、Five Star Business Finance、Infra、Market、Pharmeasy、CREDGroww、Gupshup、Chargebee、Urban Company、Mohalla Tech、Moglix、Zeta、BrowserStack、そして最近新たにBlackBuckが誕生した。

この数は、2021年にこの国で期待されていた以上のものであり、インドのユニコーンにとってこれまでで最高の年であった2020年の数よりもさらに多い。興味深いことに、これらのユニコーンは、フィンテックからヘルスケアまで、またソーシャルプラットフォームからB2BのEコマースまで、さまざまな業界に及んでいる。これは、単なる業界固有のバブルではなく、真のデジタル化の兆しであることを示している。

しかし、何十億ドルもの投資が行われている中で、インドのテック系スタートアップがこれほどまでに投資が集まる理由は何なのか。インドのユニコーンブームの背景には何があるのか、そしてそれは持続可能なのか。インドが世界のユニコーン・ハブに成長した理由を紹介したい。

未開拓のオーディエンス

インドは約13億人の人口を抱える巨大な市場だ。一方、ハイテク部門は常に成長を続けているにもかかわらず、モバイル機器やインターネットプランは非常に手頃な価格で提供されている。一方、デジタル化の促進を目的としたさまざまな政府プログラムがあるが、インドの人口の約半分しかインターネットにアクセスできない。

参考記事:How these four India-based startups are impacting the earth

人口の半分しかインターネットにアクセスできないものの、インドにはいまだ、たくさんのインターネットユーザーがいる。実際、同国のインターネットユーザー数は世界第2位である。しかし、ここで興味深いのは、インドが単に世界最大の市場のひとつであるだけでなく、ほとんどの業界、領域で未開拓の市場である、ということだ。

成熟して飽和状態にある他の国々とは異なり、インドは企業が事業を拡大し、大きく成長するための機会を提供している。

これがインドのテックブームの最大の理由の1つであり、今後数十年の間に市場規模がほぼ倍増するであろう世界最大の市場なのだ。

このような若い市場では、企業は早い段階で長期的に強力なプレーヤーとしての地位を確立することが可能だ。オープンな市場は急速な拡大を促すため、スタートアップ企業は最初から大規模な資本を探す必要がある。

インドのスタートアップの強み

インドでハイテク企業が一夜にして巨大企業に成長している理由の一つは、多くのスタートアップがインドの伝統的な問題をテクノロジーで解決している点である。実際に、インドで成長しているフィンテックのユニコーンを見ていこう。

GrowwとZerodhaは、一般消費者がさまざまな資産に投資できる、インドで最も人気のある投資プラットフォームだ。インドには伝統的に投資文化がなかったため、これらの企業はテクノロジーを使って文化の壁を乗り越えようとしており、それが功を奏している。

これらの企業は、単に問題を解決するだけでなく、インドの消費者に販売する技術も提供している。CREDは、クレジットカードの請求書を期限内に支払うことでユーザーに報酬を与えるフィンテックのユニコーン企業だ。

CREDは、報酬プログラムと有名人を起用したマーケティングキャンペーンという、インド人が最も好む2つの要素を適切に組み合わせて価値を提供することで、インドのクレジットカード決済の約20%を占める約520万人のユーザーを獲得することに成功した。

ここで重要なのは、インドの新世代のスタートアップが、顧客獲得方法を学んでいるということだ。これまで解決されていなかった根深い問題を最先端のテクノロジーで解決し、インドの急速なデジタル化をマーケティングや宣伝に活用することで、若いスタートアップは誰もが予想しなかったスピードで成長している。

また、これらのユニコーン企業の成長の要因のほとんどがモバイルアプリであることも注目に値する。つまりこの10億ドル規模のアプリの大当たりが続けば、アプリ開発者やインドでのモバイルアプリ開発は大幅に高価になる可能性があるからだ。

海外からの投資

インドでユニコーン企業が成長している理由として他にも、インドのスタートアップに投資する海外投資家の数が増えている点も挙げられる。インドは2番目に大きく、最も急速に成長している市場を有しているため、海外投資家にとって魅力的に映っている。

2021年だけでも、これまでに約110億米ドルがインドのスタートアップ企業に投資されているが、そのうちの大部分は外国人投資家によるものだ。最近のインドにおける投資ラウンドでは、米国の投資会社であるTiger Globalが、Sequoia Capitalを抜いてトップの投資家となった。

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投資家がインドに惹かれるもうひとつの主な理由は、中国への関心が薄れていることかもしれない。世界最大のハイテク市場である中国は、国際的な投資家にとって常に大きな魅力となっている。しかし、比較的成熟した市場であるため、投資機会はやや限られている。

一方、インドはユーザーがハイテクの世界に足を踏み入れたばかりで、市場の規制も比較的緩い。このことから、多くの投資家がどこに投資しようとするかは明らかである。

またインドは若い国であり、起業家精神にあふれている。成長市場、寛大な投資家、大胆な起業家、そしてそれらを結びつけるテクノロジーの適切な組み合わせにより、インドではユニコーンの雨が降っているような状態だ。

この傾向は今後も続き、インドでは今後数ヶ月から数年の間にさらに多くのユニコーンが誕生するだろう、と考える専門家もいる。一方、これらのユニコーンの中には、インドのユニコーン・バブルを最終的に崩壊させてしまうような「現金を燃やす火種」となる企業が存在する、と批判する人もいる。

いずれにしても、インドのテックスタートアップの時代が到来し、世界のテックリーダーになるためのインドの旅は始まったばかりであることに異論はないだろう。


翻訳元:https://e27.co/its-raining-unicorns-in-india-heres-why-20210804/

表題画像:Photo by Abhay Singh on Unsplash (改変して使用)

記事パートナー
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執筆者
中嶋 清楓 / Sayaka Nakashima
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