「COVID-19は景気後退と顧客習慣の大きな変化を生み出すキッカケになるだろう」。
20年以上の投資経験を持ち、現在SOSVのゼネラルパートナーを務めるWilliam Bao Bean氏はこう述べる。
パンデミックが経済に悪影響を与える中、各国では潜在的な不況について議論されている。
Bloombergレポートによると、シンガポールは前四半期に景気後退が生じた最初の国となった。一方、インドネシアの Sri Mulyani Indrawati財務相によると、インドネシアは第3四半期の国内総生産(GDP)が4~5%減少し、今後景気後退に陥る可能性が高い。
Bean氏はe27のインタビューに対して次のように述べた。
「ポイントは2つある。第一に、景気後退に向かっていることを人々に理解してもらうこと。第二に、この種のショックは、大規模な習慣変化を引き起こすということ」。
経済的には厳しい状況ではあるが、「Stay at Home」は、人々のデジタル活用に対する心理抵抗を大幅に下げており、人々が習慣変化に焦点を当てているという意味でチャンスの時期でもある。
両者のバランスをとるのは難しいが、やはりポジティブなポイントに意識を向けたい。
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現に優れたビジネスは今でもプレミアム価格で取引されている。Ula、Tiin Tiin Tiin、TurtleTreeなど、幾つかのスタートアップ企業は順調に資金を調達し続けており、コロナ禍でも企業が成長可能なことを示している。
COVID-19以前は誰も見向きもしなかったVR技術であるが、今では、「Stay at Home」の圧力で外に出られず退屈している人たち向けのVRシステムが飛ぶように売れている。
Bean氏によると、今後は業界構造に大きな変化が生まれるという。
例えば、Eスポーツは今後大きなマーケットになると予想されている。
「NBA、テニス、アメリカンフットボールよりも多くの視聴者がいて、これらのスポーツを見ている人口は5億人以上である。さらに、プレイするよりも観戦する方が好きな人も多い。現在、多くのスポーツが放映されていないが、テレビでスポーツが放映されないことで誰が恩恵を受けるのだろうか?」
ゲーマーのためのライブストリーミングプラットフォームを運営するTwitchは、今期の視聴者増加数が2020年第1四半期と比較して56%増加したと発表した。前年同期比では60%の成長を記録している。
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Bean氏はゲーム以外にも、オンライン教育やオンラインメディアにも伸びしろがあると期待している。
コロナ対策で自宅学習を余儀なくされた親や学生のニーズが急増しているという。
eスポーツの場合と同様に、オフラインでの娯楽源が限られてきていることから、オンラインメディアもの人気が急上昇している。
ヘルステック分野でも、医療制度の負担を軽減でき、かつユーザーがより安全に交流できるような製品やサービスの人気が高まっている。医師と患者の遠隔診療を可能にする「遠隔医療」や「テレヘルス」などがその一例である。
CNBCレポートは、米国が院内感染防止のために、2020年末までにテレヘルスの利用を10億人に押し上げる可能性を示唆した。また、米国がコロナ禍において遠隔医療プラットフォームを急速に成長させたように、東南アジアでも同様のことが起こっている。
当然のことながら、Bean氏のバイオテックアクセラレーターも、ヘルステック分野の成長を期待している。2014年に設立された同氏の32億ドル規模のアクセラレータープログラムは、「遠隔医療」「テレヘルス」系バイオテック企業への投資を着々と始めている。
すでに最新テクノロジーへのアクセスを持っている人たちだけでなく、オフラインからオンラインに移行中の数十億人のユーザー群への投資にも焦点を当てている。
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