海運産業の世界経済に対する貢献は大きい。世界の貿易量の80%が海路で行われているのにもかかわらず、世界の温室効果ガス排出量の2.2%しか排出していないのである。
シンガポールの港湾や海運産業は、かつて経済発展の中心であり、同国の成長を下支えした。
一方、近年はその勢いが著しく鈍化している。
過去10年間で海運業の売上高は52億米ドル減少し、ピーク時の2014年から40%以上も減少しているのである。
かつて「海」が新大陸を発見するフロンティアであったように、「海」はサプライチェーンのイノベーションプラットフォームとして現代のフロンティアとなり得る。
しかしそのためには、幾つか大きな課題を乗り越えなければならない。本記事では、海上物流がイノベーションプラットフォームになるための3つの課題について紹介する。
新型コロナウイルスの流行は、グローバルサプライチェーンの複雑さを露呈したと言える。
国境が閉ざされ、中国製造業が機能停止に陥った時、私たちは世界貿易の現実を見直さなければならなかった。トイレットペーパー、ハンドサニタイザー、N95マスクが一夜にして値上がりし、配達は数週間遅れた。
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一方、オンラインショッピングにライフラインを求める市民にとって、海上輸送は信頼できる唯一の物流手段となった。シンガポールは、港費の譲歩や乗組員の交代を念頭に置いた管理など、進歩的なプログラムで港を守るという点において特に立派な仕事をしたと言える。
しかし、海事分野の事故の4分の3をヒューマンエラーが占めており、改善の余地が多いことは明らかである。
新型コロナウイルス対策の一環としてグローバルサプライチェーンの抜本的な見直しが行われているが、これにより複雑さを助長していた慣習やルールを見直すことができれば、業界を一新することができるかもしれない。
海運業界は、過去の遺産とも言うべき非効率的な運用システムに長い間悩まされてきた。
新型コロナウイルスの脅威が広まる以前から、世界のサプライチェーンには非効率なシステムが存在していた。その改善代はなんと、推定1,790億米ドルと言われている。
しかし、これらの非効率性は消費者や投資家にとって無視できるものであった。
シンガポールの旅客船の入港量は95%以上減少しているものの、2020年上半期のコンテナ数量の減少幅は1%に留まった。
越境商品に対する消費者の需要は衰えていない以上、業界はサプライチェーンの在り方を見直す必要がある。サプライチェーンの各フェーズでシームレスな物流を維持しながら、消費者ニーズを効率的に満たすための方策を考えなければならない。
海運業界は産業界の巨大企業によって分断されており、イノベーションの余地はほとんどないと言われていた。
一方、近年、硬直状態にあった業界構造を補完するスタートアップ企業が出現し始めている。
前例のない時代には大胆な対策が求められる。
シンガポールはサプライチェーンの在り方は抜本的に再構築するディスラプターに投資すれば、海運業界において世界をリードできる可能性がある。
先発企業にとってはリスクが高いものの、こういった先進企業に対する投資を集中させることができれば、分断された業界を刷新することができるだろう。
グローバルサプライチェーンの合理化は、経済の再活性化を促すだけにとどまらず、グリーンで持続可能な復興に貢献することができる。
私たちはすでに米国を拠点とするFlexportが、企業と政府のバランスのとれた支援を受けて、世界初の海運ユニコーンになったのを目の当たりにしている。
アジアでも同様の取り組みができれば、持続可能な復興に貢献できるだけに留まらず、アジア初の海運ユニコーンの誕生にも寄与できるだろう。
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翻訳元:It's about time: Why global trade will sink without maritime innovation