水を使わない染色業:イスラエル

アジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界各地のR&Dセンターや生産ラインで導入されている。
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ファッション業界は、世界で最も汚染が深刻な産業の一つだ。衣料用の糸を染めるだけで、世界の水質汚染の5分の1以上を占めている。

しかし、イスラエルのある企業は、世界で初めて完全に水を使わない染色システムを開発した。

それは従来の染色よりもプリントに近い方法だ。イスラエル中部のペタチ・ティクバに拠点を置くTwine Solutionsは、大量の水と化学薬品を必要とする従来の方法ではなく、繊維の隅々まで浸透するように特別に設計された染料を糸に精密スプレーしている。

この機械はデザイナーが色の確認のために必要とする糸のサンプルを数分で作ることができる。これは染色工場が小ロットで資源を大量に消費する工程をすべて行う代わりに、迅速かつ効果的な方法だ。

Twine Solutionsは、いずれは大量注文に対応できるよう、機械の規模を拡大したいと考えている。しかし繊維業界は伝統的な産業であり、糸の染色を含む多くの工程は何十年も変わっていないと同社は言う。

染色糸のサプライヤーは、完成品のコストを1円でも上げようとすれば、顧客は抵抗すると言う。

Twineのシニア・マーケティング・マネージャー、Adi Mandel氏は、NoCamelsに次のように語っている。「私たちの機械は、企業が競合他社よりもはるかに速く試作やサンプル作成を行えるので、費用対効果の高いソリューションだ。

企業はより機敏に、より早く調整することができ、通常であれば適切な色がないために見逃していたかもしれない顧客を獲得することが可能だ。

メーカーがサンプルやプロトタイプを本当に早く作る必要があるとき、それはブランドが最初になることを助け、このプロセスで多くの時間とお金を節約したため、製品をより早く店頭に並べることができる」。

新しくデザインされた衣服が実際に生産に入るまでには、驚くほど多くのやり取りがある。デザイナーは選んだデザインと色で生地見本を作り、メーカーに送る。

メーカーはその見本を染め工場に送り、伝統的な水と化学の手法でベストマッチの3色を作る。デザイナーとメーカーが納得すれば、それでいい。そうでなければ、染め屋はもう一度やり直さなければならない。そしてこのスワッチが世界中を駆け巡り、様々な国や地域の販売チームに承認されると、また新たなサンプルのバッチを用意する必要があるのだ。

Twineの機械は1時間に6,000フィート(1,800メートル)近いポリエステル糸を染めることができる。原糸と白糸をセットし、タッチパネルで色と長さを選ぶだけで、あとは機械がやってくれる。

Twineは世界初のデジタルで水を使わない糸染めシステムだが、近年いくつかの競合が現れ始めている。

スウェーデンのColoreelは、刺繍機に接続し、染色工程もデジタル化する装置を開発したが、生産者は同社の専用糸しか使用できない。

イギリスのAlchemie Technologyもポリエステル生地のデジタル染色を採用しているが、完全に水を使わないというわけではない。

Twine Solutionsは2015年に設立され、2019年にバルセロナで開催された見本市で機械「TS-1800」をデビューさせた。以来、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界各地のR&Dセンターや生産ラインで導入されている。

イスラエルのテキスタイル会社Delta Galilは、Twineの機械を使って、ナイキのソックスの一回限りのコレクションを生産した。「グラデーション効果を生み出したので、一足一足がユニークになった。ラベルには、この靴下がいかにユニークでサステナブルであるかが書かれていた」とMandel氏は言う。

また世界有数の工業用糸メーカーであるCoatsと共同で、サンプルや見本がなくても特定の色の糸を作ることができるようになった。

これは、サンプルではなく、大量注文に対応できるように機械をスケールアップするための第一歩となり得るコラボレーションだ。


翻訳元:https://nocamels.com/2022/10/israels-water-free-revolution-for-a-dyeing-industry/

表題画像:Photo by Bozhin Karaivanov on Unsplash (改変して使用)

記事パートナー
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執筆者
SUNRYSE / SUNRYSE
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