中国はEコマース業界のトップになれるのか?

Alibabaの台頭を筆頭にEコマース業界の勢いが日に日に増してきている中国。巨大な消費者市場の下支えによって成長してきた同業界の最新動向や今後の成長性について解説する。
EC マーケティング

これまで、Eコマース業界のトップ企業の多くはアメリカから輩出されてきた。AmazonやeBayなどがその代表例である。

しかし、この20年間でアジア企業による巻き返しが加速している。

2000年代初頭、ジャック・マー氏が率いる中国のハイテク企業Alibaba.comは、世界中のバイヤーが中国製の手頃な価格の製品を簡単に発見し購入できるようにすることで、国境を越えた企業間取引(B2B)を実現させた。

また、JD.com、Tmall、Taobao、Pinduoduoなど、B2Cに焦点を当てた中国のマーケットプレイスも登場し始め、世界中の何百万人もの消費者が、家具から家電製品まで、手頃な価格で高品質な製品を閲覧・購入できるようになってきた。

eMarketerによると、2018年にはAlibabaグループであるTaobaoとTmallがそれぞれ5,150億ドル、4,320億ドルの流通取引総額を生み出している。この数字は、Amazonの3,440億ドルをはるかに上回った。

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また、Amazonの年間最大のショッピングイベントである「Amazon Prime Day 2019」では58億ドルの売上が発生したが、同年のAlibabaの「シングルスデー2019」イベントではその6倍に相当する380億ドルを記録した。

巨大な消費者市場

中国でのEコマースの成長は、インターネットに精通した富裕層消費者による貢献が大きい。国際貿易管理局は、中国だけで世界のオンライン取引の50%以上が占められていると報告している。

中国はこの半世紀、注目すべき経済的成長を遂げてきた。1978年に経済を開いて以来、中国のGDPは年率10%で成長し、14億人の人口のうち8億5000万人以上を貧困から救い出した。

これにより可処分所得が増え、世界中の様々な贅沢品を手に入れることに貪欲な中流階級層が誕生した。世界経済フォーラムによると、Eコマースを行う中国人消費者の割合は、2015年の34%から2017年には約67%に倍増している

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モバイル決済とモバイルショッピングの優位性

過去10年の間に、モバイル決済とモバイルショッピングの普及が進み、現在では中国全土でモバイル決済が基本的な取引手法となっている。JPモルガンによると、中国では取引の4回に3回が携帯電話で行われており、年間8,730億ドル以上の売上を生み出している。

さらに、Alipay や WeChat pay などのモバイル決済の普及により、中国ではキャッシュレス化が進んでいる。PwCによると、中国ではキャッシュレス決済が全決済の85%を占めているという。

さらに、WeChatのようなアプリの台頭により、モバイルショッピングが日常生活に組み込まれている。WeChatはメッセージング、ショッピング、ライフスタイル、エンターテイメント、決済まで、統合された総合的なサービスをユーザーに提供している。

インフルエンサー、オンライン・マーケティングの台頭

中国の消費者はオンラインレビューに大きく依存して購入するようになっている。

消費者はデジタルインフルエンサーやライブストリーム動画、オンライン記事を頼りに、最新のトレンドや人気商品を知り、特定の商品やブランドを信頼できるかどうかを確認するようになってきた。

TmallやJD.comなどのオンラインマーケットプレイスは、製品レビュー機能を拡充するための多額な投資を行っており、また、ライブストリーミングによるオンラインショッピングイベントなどの手法も取り入れて生きている。

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実際、ライブストリームショッピングイベントは非常に人気があり、2018年にAlibabaのTaobaoマーケットプレイスが流通取引総額151億ドル以上を生み出している。これは、前年同期比で約400%の増加となっており、凄まじい成長率を示している。

逆O2O戦略

通常、O2O(オフラインからオンラインへ)とは、実店舗がオンラインスペースに販路を拡大することを指している。しかし、中国では、顧客をオンラインからオフラインに誘導する逆O2O形態が台頭しつつある。中国のオンライン大手が物理的な店舗をオープンし、オンライン・オフラインの両面で顧客との接点を作り始めている。

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買い物客は携帯電話で商品を簡単にスキャンして詳細情報(価格や商品仕様など)を入手し、モバイル決済手段であるAlipayで直接代金を支払うことができる。また、顧客はその場で集荷を指示したり、商品を直接自宅に届けてもらうこともできる。

オムニチャネル戦略は、消費者の利便性やショッピング体験の向上に寄与しており、中国では人気の小売戦略となっている。McKinseyの推計によると、中国の買い物客の約85%は、実際にモノを購買する間にオンラインとオフラインの両方を用いてエンゲージメントが形成されているという。

中国市場の優位性

中国でのEコマースの成功は、その巨大な国内市場の支えによるところが大きい。

北米や欧州のような他のグローバル市場では、依然としてAmazonがその安定した地位を築いているが、中国には第三、第四の都市で消費者の可処分所得が増しており、国内でもまだまだ成長の余地がある。

中国企業の多くは、今後数年間を「国内需要を確実に獲得しつつ成長基盤を固めるフェーズ」と位置付けている。

しかし、その後はどうだろうか。

中国のEコマース企業が世界の覇権を握っている状況を目にする時期はもっともっと近いかもしれない。

翻訳元:Is China the new global e-commerce leader?

記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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