(写真引用元:Photo by Alexander Schimmeck on Unsplash)
2020年は、ラテンアメリカにおいても、ここ数十年で他に例を見ないレベルの経済的打撃があった。COVID-19の拡大に対抗して各国政府がとった措置によって、何百人もの人々が自宅待機を迫られ、何千もの企業はそのドアを閉じることになったのである。
現在、ラテンアメリカの一部地域ではロックダウン政策が徐々に解除されつつある。そんな中、パンデミックがビジネスエコシステムに与えた影響が明らかになりつつあり、興味深いことに、この嵐を生き残ったどころか収益性を向上させた企業の存在が明らかになっている。
「Biz Latin Hub」の調査によると、同地域の経営者やビジネスオーナーのうち、実に56%がパンデミックによる地域内の経済的影響について懸念する回答をしている。しかし、逆に半数以上は、危機を力を蓄えるチャンスであり、経済回復について慎重だが楽観的な回答だったという。
このパンデミックがラテンアメリカの経済に大きな影響を与えた一方で、それはまた同時に、すでにECプラットフォームを使ったサービスや商品の提供を準備していた企業にとっては、利益増加のチャンスを意味していた。人々は外出できなくなり、ビジネスの継続にはインターネットを活用するほかないのである。
例えば、メキシコのような国では、2020年3月期だけでランドリーやホームケアに関する製品のオンライン販売量が403%も増加したという。ECプラットフォームで販売された大量消費型の商品も、全体で114%の増加だったという。同じように、アルゼンチンにおいても人口の44%がオンラインショッピングに前向きな回答をしており、ブラジルにおいては4月期だけでEC全体の売り上げが28%増加した。
この数ヶ月間で、各企業はオンラインビジネスの方がこのCOVID-19の影響に対してもより強く柔軟な耐性を持っているということを身をもって経験してきた。同地域におけるビジネスリサーチの専門家の一人は「私たちが経験しているこの状況は異常なのです。しかし、一部の企業がロックダウンによる影響に苦しんでいる中で、配送サービスやEC、その他市場のソリューション自体は上昇していることも確かです」と述べている。
加えて、ブラジルの金融機関は、同国におけるビジネス支援の一環として、全ての手続きをオンラインで完結できるようにしている。とある関係者は「私が経営する金融会社もそうですが、ブラジル中の銀行が今は全ての契約をオンラインの署名で行えるようにシステムを構築しています。COVID-19の事態が金融業界におけるビジネスチャンスを増加させているのです」と述べた。また、とある調査の回答者の一人は「コロンビアは今後、成長可能性と雇用機会を生み出せそうな分野、例えばあサービス業、IT、ソフトウェアなどに焦点を当てるべきだ」と主張する。
「Biz Latin Hub」の調査によれば、この厳しい社会情勢の中で、回答者の実に45%がラテンアメリカの経済は将来的に回復し、さらには成長を見せるだろうと回答している。また、参加者の75%以上は、何らかのビジネスを運営しており、さらに今後ラテンアメリカ内の他の国への進出を希望しているという。
(写真引用元:Biz Latin Hub / 翻訳元の記事執筆者による写真提供。無断転載厳禁。)
また「Biz Latin Hub」の調査はラテンアメリカでどのような分野が急成長しているのかという点も明らかにしている。回答者の23.8%は専門サービスかコンサル業界、また8.8%はテクノロジーおよび通信関係分野、6.3%が医療従事者、そして6.2%はプロダクトの輸出業務に携わっていたという。残りの54.9%は天然資源の採掘、製造業、観光業、物流、金融などの様々な業種で占められている。
ラテアメリカは、非常にダイナミックなマーケットであるとされている。実際に、その人口は全体で6億2,600万人を超え、2025年には全体の80%以上が携帯電話を持つことになるだろうと予測されている。ラテンアメリカは、まだオンラインでのブランド構築を考えていない人にとっても大きなビジネスチャンスの場と言えるのだ。
ラテンアメリカの企業はテクノロジーやイノベーションによって、より多くの人々に製品やサービスを届けることを目指している。外国人投資家にとってもこれは歓迎すべき産業の一つであり、特にフィンテックなどはその好例として挙げられることも多いだろう。
テクノロジーの力によってサービスを提供する金融機関が、ラテンアメリカ全体で大幅に増加しているという。メキシコやチリ、コロンビアなどの国部にはラテンアメリカでも特に多くのフィンテックスタートアップを排出している。また、この地域の各国政府は同分野の運営を健全に定義するため、様々な法整備を進めてきた。
2019年、メキシコ議会の下院は全会一致でいわゆる「フィンテック法案」を可決した。この新しい法律は、フィンテック企業を規制すると共に、国家全体の金融を統合し、経済を促進させようという目的を持っている。同じように、チリではパンデミックの発生によって全国で検疫体制が敷かれているにもかかわらず、2020年中頃には国民議会(National Congress)に先駆けてメキシコのような「フィンテック法案」を可決しようとしている。
また、ラテンアメリカのECセクターは欧米などに比べてまだ発展途上であるが、ECでの販売量は2020年に入ってから指数関数的な上昇を見せているという。より多くの人々がインターネット経由で商品やサービスを購入したり利用できるようになったことで、今後もその利用者数はさらに増加すると見られている。
結局のところ、(パンデミックによる)世界的な健康問題や経済へのダメージの中にあっても、より大きな成功を収め得るのは、ビジネスのために技術進歩に適応・依存し、ビジネスとして回復力を持っている企業なのである。ラテンアメリカは同地域に進出しようとして外資系の企業にとっても大きなポテンシャルを持った市場である。技術進歩への適応は、同地域における顧客サービスの提供を阻止するあらゆる障害を乗り越えるために必要なステップであろう。
https://www.statista.com/statistics/1093275/colombia-covid-19-internet-usage/
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https://www.bbc.com/mundo/noticias-53145116
翻訳元: INNOVATION AND TECHNOLOGY: ESSENTIALS FOR BUSINESS RESILIENCE IN LATIN AMERICA