【コロナでも急成長】アグリテックで急速発展するインドネシアの農業市場

コロナ禍においても、インドネシアでは農業改革が進んでいる。テクノロジーによって農業を変える「アグリテック」が同国でどのように展開されているのか、現地から最新のレポートを送る。
農業

インドネシアのデジタル改革を語る上で、とても勇気づけられることの一つに、問題解決のためのソリューションが数多く生まれているだけでなく、実際にそれらを用いて多くの人々にいい影響を及ぼす機会が生まれているという事実がある。例えばオンラインで呼び出せるタクシー、フードデリバリーアプリ、そして屋台における決済のデジタル化などである。

しかし、農業におけるデジタル改革についてはあまり語られることが多くない。アグリテックは確実に進化しているが、とはいえその多くはまだ一部の界隈でしか注目されていないのだ。例を挙げると、TaniHub、SayurBox、KedaiSayur、 iGrow、Crowde、Etanee、EdenFarm、Freshbox、など、いくつかの企業がインドネシアのアグリテック分野に注目し、様々な方法での改革を目指している。

過去何年かの間で、上記の企業達はアイデアの検証だけでなく、実際に市場に対する啓蒙を行ってきた。農家への融資、低価格な作物、流通方法など、現状の農業が抱えている問題を、技術的なソリューションによって解決できるということを提唱してきたのだ。

そして2020年、皮肉にも新型コロナウイルスの感染拡大に伴うパンデミックによって、ようやくこの分野でもいくつかの「ビッグネーム」が誕生してきた。特に農産物を"直接"顧客に届けることを目的としている企業が多い。KedaiSayurは事業を転換して食材のオーダーデリバリーサービスに注力し始めた他、Sayurbox、Etanee、EdenFarm、Freshboxもパンデミックをきっかけとして小売客の増加を記録している。

一方で、資本的には悪い影響もあった。例えば中小農家向けのファウンディング事業を行うCrowde社は、DailySocialに対し、パンデミックは事業の運営に一定の影響を及ぼしたと話している。これは移動制限に伴う諸々の問題だけでなく、一部事業のPOなど、複数の要因によるものだという。

実のところ、多くの関係者は、再資本の意思を見せない投資家や、各種事業の規制政策など、この期間に起こった様々な現象や不透明な政策に驚かされている。

「私たちは、新たな信用保険、オフテイカーの多様化、大容量でコスパよく作物を購入するための仕組みなど、このパンデミックの間に、農業界の資本リスクを軽減できるようなシステムを構築してきました。また、我々の仕事はシステムの構築だけでなく、各農家のコンサルティングや現場における代理人の役割も含んでおり、地元の農家との連携が欠かせません。」とCrowdeの投資責任者であるAfifa Urfani氏は語る。

結果として、パンデミックが起こってからもCrowdeの実績はとても好調だった。2020年の3月から8月にかけて、彼らは60億ルピア以上の資金を農家に分配したという。植栽の最盛期が9月から10月であることを考えると、この期間における分配額としては通常の年よりもかなり高いという。この資金は18,000人以上の農家、そして300以上の農業関係中小企業に分配された。

「コロナ禍においては、農家や私たち自身の信用状況は不透明と言わざるをえません。それでも恐れずに投資を続けてくれる10の機関投資家のおかげで私たちはこの期間にも活動を行うことができました。」とAfifa Urfani氏は述べた。

サプライチェーンと農家への資本融資

一般に、テクノロジースタートアップが農業分野において取り組んでいる課題にはどのようなものがあるだろうか。まず近年では、サプライチェーンや流通に対する支援、そして農家に対する融資システムがホットな分野であると言えるだろう。

サプライチェーンに協力する場合は、スタートアップも直接現地に赴き、作物の生産効率向上の支援をすることから始まる。そもそも作物は収穫されるとすぐに、加工センターなどで品質によって選別され、パッケージ化されるからだ。つまり、いかに多く、いかに品質良く収穫し、いかに効率よく流通させるかが重要となる。サプライチェーンの仕組みは流通経路の効率化によって価格競争や品質を維持するために有効で、顧客はこのおかげで低価格で様々な野菜を買うことができるようになっている。そして各スタートアップは収穫から配送まで、あらゆる段階における支援を行うことを業務としている。

農家への資本融資を行う場合、各スタートアップはまず独自のプラットフォームを構築する。農家はその上で各々のプロジェクトを作成し、予定している作物の情報やリターンの詳細を掲載する。ここに投資を希望する人たちが集まり、資金が形成されていくという仕組みである。これにより、農家は新しい作物へ挑戦したり、耕地を広げることが容易になる。

この2つの分野の発展には、いずれも農家にとって大きなメリットが隠されている。それは、いずれにせよ農家になるべく効率よく収穫を行わせ、品質を競わせているという点である。質の良い果実や野菜がたくさん採れる、投資家に対して大きなリターンがある、この目標に対して農家のパフォーマンスは最大化され、持続的な成長が見込めるとされている。

中国やインドのアグリテック

過去10年間で急速に技術革新が進んだ中国では、国家レベルで農業におけるテクノロジー導入を推進している。同国は、2019年から2025年までの約5年間にも及ぶ、デジタル化による農業成長計画を打ち出している。センサーベースの自動化や、AIロボによる耕地の観測、流通におけるブロックチェーンの導入、5Gネットワークなど、最先端の技術を農業分野に適用させることが期待されている。2019年に発表されたレポートによると、中国における食料品のオンライン販売システムは2018年から25%増加しており、その規模は21億ドルにまで到達しているという。

また、インドではサプライチェーンの改革が大きな目標となっている。どの国においても農家と消費者を直接結びつけるということはアグリテックを語る上で外せない重要な課題の一つだからだ。

EYが2020年8月に発表したレポート「Agritech - towards transforming Indian Agriculture」では、インド市場におけるサプライチェーンの潜在的な市場規模は120億ドルに達しているとされており、農業以外にも金融サービスが41億ドル相当の市場を維持しているとのことである。この2つのセクターは同国の農業がシステム面でも財政面でもさらに成長するために必要な存在であり、アグリテックを支えるsタートアップ達の存続と成長に大きく貢献している。

インドネシアの農業。その将来は?

インドネシアは農業国である。毎年のように農作物の病気や販売価格の下落などのニュースが話題となる。これらのリスクは農家にとって非常に重大なことであり、その軽減を図るためには農家自身に力を与えなければならない。

また、IoTに特化したセンサー技術が発展した現在においては、ビッグデータやそれに基づく機械学習によってもたらされるデータの活用が、農業の各作業を次の段階へと進化させるのに不可欠なものとなっている。データに基づく正確な予測は、作物の失敗リスクを軽減し、植え付けと変種の最も最適なタイミングを知らせ、農家にとって最も利益の高い選択へと導いてくれるのだ。

インドネシアはアグリテックによって確実に進化している。アグリテック分野の企業が得た投資は、同国の農業界により明るい未来をもたらすための材料となることを期待されているのだ。

翻訳元:Indonesia’s Agritech to Develop Progressively

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執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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