ポストパンデミックの世界において、医療とテクロジーはどのように連携できるか

新型コロナウイルス感染症に立ち向かうため、世界では様々な新しい技術が医療分野で応用されている。ポストパンデミックにおいても有効とされている技術には、一体どのようなものがあるのだろうか。
ディープラーニング ヘルスケア

新型コロナウイルス感染症が数百万人の命に致命的な影響を与えているなかで、世界中の医療業界は過去数ヶ月の間に、大きな挫折を経験している。未知の病気が公的機関だけでなく、医療に携わる民間企業をも窮地に追い込んだ時、医療業界は世界を征服しようとしていた。

ソーシャルディスタンスと呼ばれる社会的な距離が新しい生活様式となっている現在において、医療と技術がポストパンデミックの世界でどのように変化するかを予測する。

遠隔医療

遠隔医療とは、医師が患者に対して遠隔で医療サービスを提供する包括的な用語である。インターネット技術を利用したデータ通信は、患者の病歴のほか、過去や現在の臨床診断や治療を記録し、報告書を確認するために利用されている。

遠隔医療の機器は、患者がいる場所を完全に装備された診療所に変換する。診察や処方箋とともに医師の診断はインターネットを介して患者に伝えられるため、地理的な制約を受けていても、薬を手に入れられる。

医療専門家は患者が徐々に遠隔医療サービスに関心を持ち始めていると報告している。遠隔医療は、医師と患者の関係に関してはハードルにもなりえると考えられている。しかし現状では、患者が信頼を寄せている臨床医に迅速かつ一貫してアクセスできるようになるため、遠隔医療に対しての患者の満足度は高く、医師との関係も改善されることが証明されている。

社会的な距離を厳密に守らなければならないパンデミック後の世界では、遠隔医療が役立つものだと証明されるだろう。今後は栄養相談や理学療法、心理学といった関連サービスも、クリニックから在宅施設へと移行する未来が見え始めている。

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遠隔医療は、遠隔地にいる患者に医療を提供できる医師のキャパシティーを増やすことにつながる。また、医師側の生産性も向上し、他の方法よりもバーチャルな方法を採用することで、多くの患者を治療できるようになる。インドを含む国々がこの分野に関心を寄せており、今ふさわしいとされているものが、将来の新しい秩序やルールになる可能性がある。

ウェアラブル技術

ウェアラブル端末が取得するデータは、新型コロナウイルス感染症に感染したことを患者が認識するよりも数日前に、感染症による副作用を検出できると研究者たちは主張している。

報告書によると、ウェアラブル端末の「Fitbits」と「Apple Watch」は感染症の早期発見の枠組みになり得る可能性があり、仕事や家庭の環境を復活させるために役立つとも考えられる。これまでは新しい技術が好きな人々の嗜好品だった端末が、健康の必需品へと進化する可能性もある。

テクノロジーとウェアラブル端末の助けを借りて、患者が自分の健康と衛生状態に気づくことは、患者をエンパワーするだろう。

これらの組織がますますヘルスケアに関連したプロトタイプを開発するように、未来のウェアラブル端末はより多くのセンサーを搭載したものになると考えられる。例えばFitbitsは現在、心臓の情報を収集している。Apple Watchのアプリケーションは心房細動を認識することができ、AppleとGoogleは検出プロセスをスムーズにする可能性のあるウェアラブル端末の実現に向けて、接触追跡の技術を設定することも計画している。

人工知能

ヘルスケアもまた、AI(人工知能)の導入によって超高速な変化を目の当たりにしている産業の一つである。ヘルスケアをより経済的なものにし、正確で迅速なものにしながら、より広範囲な利点を備えた包括的なものにしようとする世界的な努力の中で、ヘルスケア業界は最新のAIイノベーションを発展の鍵として活用している。

コンピューティングやネットワーク、セキュリティの自動化は、ヘルスケア分野におけるAIの役割において、前例がないほど絶え間のない成長を推進している。

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人工知能の出現と医療への影響により、今日では在宅診断と在宅ケアが可能となっている。患者は自分の健康データを自宅の診断機器で取得し、それを医師と遠隔で共有して診察を受けながら、在宅サービスのラボテストなどと組み合わせられる。人工知能は患者を導き、正確で迅速な臨床サポートで医師を助けられるようになった。

人々が新型コロナウイルス感染症対策のための社会的な隔離に慣れるにつれて、遠隔医療は増加するだろう。このパンデミックの間、遠隔医療への相談の量は指数関数的に増加しており、パンデミックが終わればより多様になるだろう。

現在は患者からの問い合わせが増加しているが、1対1で医師とコンタクトができる対応は不足しているため、AIを駆使したカスタマーアシスタンスも活用できる。古いIVR(音声自動応答システム)とは異なり、AIを活用した顧客ケアは患者のニーズを理解してくれるだろうし、チャットボットは移行を容易にしてくれるだろう。

ロボット技術

研究機関や企業は、医療従事者が遠隔で血液検査を行ったり、口腔内の細胞を綿棒で採取したりできるようにすることを目的としたロボットを含め、様々なロボットを製造開発している。近年はより多くの国がテクノロジーに関心を持っており、これらのロボットは将来的に大きな影響を与える可能性がある。

ロボットは多くの方法で救急隊員などを助けている。例えば救急診療所では、専門家や医療従事者、親族、そして受付担当者までもがロボットを利用して、接触の許容範囲内に立ちながら、患者とコミュニケーションを取っている。

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ロボットは部屋の掃除や薬の配達、カルテの管理やその他の作業もしている。また検査のために、研究センターに(感染した患者の)サンプルを輸送していることもある。

公共の場では、公衆衛生の担当者がロボットを利用してオープンスペースに消毒剤を散布している。ドローンは熱画像を提供し、感染した住民を認識したり、隔離措置や社会的な距離を保ための規範を実施したりするのに役立っている。また、ロボットは健康意識を高めるメッセージを人々の放送し、人々が感染や社会的距離について学ぶにも役立っている。

コンタクト・トレーシングのためのオープンな調査

新型コロナウイルス感染症が世界最後のパンデミックになるわけではないため、現時点で考えられる遠い未来の状況というのは、始まりに過ぎない。現在は新型コロナウイルスの蔓延をチェックするために、さまざまな先進的な技術革新が広く行われている。コンタクト・トレーシングは、限られた地域における疾病の分布やパターンの監視、そして研究に特に役立つため、政府の関心と投資の対象となっている。

これは医療従事者が感染した可能性のある人に続いてウイルスの主要な担い手となりえる人を特定し、危険な人々を隔離し、ウイルスの拡散を阻止するための方法である。麻疹やHIV、エボラ出血熱を含むいくつかの病気と効果的に戦うために、すでに使用されてきた信頼性の高い検査技術である。

世界中の国が今、新型コロナウイルス感染症を封じ込めるためにこういった技術を使用している。アップルやグーグルなどの組織は自動的に接触を追跡させ、感染の可能性があるユーザーに伝えるためのフレームワークを構築している。

コンタクト・トレーシングは、テストと追跡、そして分離という3段階のプロセスである。テストは最優先事項だが、医療従事者が感染した個人を発見することも重要である。致命的な病気が短期間で蔓延するのを防ぐためにも、接触者追跡は欠かせない。感染した患者を見分けられると、医師はウイルスがさらに拡散する前に、その個体を隔離センターに入れることができる。

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プログラマーたちは信頼性の高い接触者追跡のためのアプリケーションやサービス、フレームワークを開発し、製造するために精力的に働いている。サービスの根幹は、感染が疑われる人に会った個人の一人一人を認識し、伝えることである。短時間で済むと証明されている病気もあれば、侵襲的なものもあります。

コンタクト・トレーシングは技術革新が別のパンデミックに向けた新しい世界秩序を構築するために役立つ手段でもある。そのため特定の管理機関が管理を行い、倫理的な接触者追跡のためのガイドラインを設定することが求められている。

感染症が一度蔓延すると、科学はその感染症がどのように機能するかを分析し、抑制するために適切なアプローチを見つけ、重要な発見をすることが証明されている。間違いなく新型コロナウイルス感染症によるパンデミックも同様に、社会的な距離を取ることが避けられないため、ニーズの再考と方法論の再編成が必要になるだろう。

翻訳元:https://e27.co/how-technology-and-healthcare-can-work-together-in-a-post-pandemic-world-20200703/

記事パートナー
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執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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