新時代のビジネスの秘訣とは?:大成功のポイントアプリから学ぶ

シンガポール拠点でポイントキャッシュバックアプリを展開する「ShopBack」は、これまでに多くの魅力的なサービスを立ち上げてきた。新事業や新サービスのローンチの際に重視すべきポイントは、ユーザーからのフィードバックにあるという。「ShopBack」の経営陣に、成長の秘訣を取材した。
マーケティング EC

新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、東南アジアでは、パニックに近いようなまとめ買いだけでなく、自宅で商品を購入したいといニーズやライブストリームのショッピング、そしてEコマースなど、様々な側面でショッピングシーンが発達した。韓国に最近進出した「Shopback」はコロナ禍においても成長を続けており、毎年9月から12月に開催している祭典「ShopFest」を今年も開催している。

「ShopBack」の共同創業者であり、CEOでもあるHenry Chan氏は、下記のように述べている。

「多くの消費者が年末のショッピングシーズンを楽しみにしているのは、様々なブランドが競い合って魅力的なセールやプロモーションを展開するためである。しかし、年々より多くのオンライン小売業者が参加するようになっており、消費者は時に情報に圧倒されてしまうこともある」。

そこで「ShopBack」は、ブランドと消費者をシームレスに結びつけるためのプラットフォームを構築した。消費者がオンラインショッピングの旅を楽しむための最初のストップとして、「ShopFest」が誕生したのである。

4ヶ月に渡る「ShopFest」には、9月9日や11月11日、ブラックフライデーやサイバーマンデーといった、消費者の消費を促す主要なイベントの日程が含まれている。「ShopBack」は2,000万人のユーザーに提供する価値を高めるために、アプリ内において、倹約家の買い物客の増加をターゲットとした新しい機能を追加した。これらの新しい機能は、消費者がより良い購買決定を下す際に役立つサポートで、「ShopBack」の9つの市場で、2021年内に異なる時期に展開される予定である。

スタートアップの多くが新型コロナの影響をうけて悩んでいる時期において、新しいサービスや新機能のローンチは珍しい。世界的に不確実性が高い時代に、「ShopBack」の新機能が東南アジア9カ国に広がる2,000万人のユーザーに受け入れられると確信しているのには、どのような理由があるのだろうか。

e27は「ShopBack」のチーフコマーシャルオフィサーであるCandice Ong氏とチーフプロダクトオフィサーであるJustin Lee氏に、同社はどのようにして顧客の価値を測定し、どのように製品開発の道筋を形作っているのかを取材した。

1.コロナ禍における消費者行動の変容

パンデミックが発生した初期段階では、Eコマースによる必需品や食料品の販売が全体的に増加した。多くの地域で外出禁止の措置が講じられたため、日常生活の必需品を購入するためにオンラインショッピングを利用するようになったのは、当然の流れだったと言えるだろう。

しかし興味深いのは、消費者は一般的に支出を抑制しているものの、何が生活において必要なのかという考え自体が、コロナ禍においてシフトしていることがわかったとCandice Ong氏はいう。

「消費者が自宅で過ごす時間が長くなるにつれ、家電製品やフィットネス機器、アパレルやエンターテイメント、ゲーム機器やフードデリバリーなどへの消費意欲が高まっていることが判明している」。

「これらの消費は、かつては贅沢品と考えられる傾向があった。しかし人々が自宅で過ごすことを余儀なくされるようになったことで、これらのカテゴリーへの支出が、旅行やアウトドア、エンターテイメントへの支出に取って代わりつつある。支出におけるニューノーマルが現れている」とCandice Ong氏は語った。

例えば、シンガポールだけをみてみても、「ShopBack」ではフィットネスや電子機器などの製品カテゴリーの注文が4倍に急増した。また、インターネットサービスカテゴリー(VPNや対ウイルス製品など)の注文は、第1四半期から第2四半期にかけて約70倍に増加している。

「Facebook」と「Bain & Company」が発表した最近の報告書によると、東南アジア全体で「お得感」のある購買へのシフトが見られているという。調査によると、「価値」を購買上の考慮事項の上位に挙げている回答者が平均で57%にのぼっている。

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Candice Ong氏によると「新型コロナが流行し始めた時、すぐに新しい機能の構築と展開を急ピッチで進めることにした。ショッピング体験をさらにシンプルにすることで、ユーザーがより良い購買決定を行えるようにしたのである。その一つが価格の比較機能である。ユーザーは異なるオンラインストア間で、類似商品の価格を比較できる」という。

その他にも、オンラインとオフラインの両方で、ユーザーが「ShopBack」の様々な加盟店パートナーからクーポンを購入すると、魅力的な割引やキャッシュバックを受けられる「クーポン」機能も追加された。加盟店は売上を確保することができるほか、ユーザーはバウチャーやストアクレジットを通じて、お得にキャッシュバックを得ることができる。

さらに「ShopBack」は、新たに「チャレンジ」機能を追加した。同社が設定した特定のタスクや課題をユーザーがクリアすると、ボーナスキャッシュバックやその他の魅力的な報酬を受け取ることができる機能である。

2.ユーザーのフィードバックに価値を見出す

Candice Ong氏によると、上記のような革新的な新しい機能は、新型コロナの拡大によるショッピング行動の変化に対応するためにリリースされた。しかしベースにあるのは、顧客の行動を理解するために活用してきた、データ中心のアプローチだという。

「ShopBack」が構築する機能に関して、アイディアを構想する段階で大きな貢献をしてくれるのがユーザーである。対面でもバーチャルでも、技術チームと製品チームは消費者が望む提案や機能の強化に細心の注意を払っている。

Candice Ong氏は「顧客の声に耳を傾けるというのは、驚くほどシンプルな考えである一方で、忘れられがちなことでもある。ビジネスがどんなに大きくなったしても、クリックやインプレッション、販売といった行動の背後には、必ず人間がいることを忘れてはいけない」と話す。

新型コロナ前には、主要なターゲットユーザーのフィードバックを頻繁に集めていた。ユーザーを製品テストにも招待していた。パンデミックの間は、電話やバーチャルミーティングを通じてユーザーへのヒアリングを継続している。

Justin Lee氏は「顧客からのヒアリングで得たストーリーは、各製品ラインのロードマップを形成する上で重要な役割を果たす」という。

「ShopBack」のすべての製品は、ユーザーからのフィードバックを念頭に置いて作られている。そして供給側の競争状況を考慮する必要もあるため、技術チームと製品チームが新しい製品や機能を導入する最適な時期を決めている。新しい機能が形になり始めると、開発パイプラインへと進み、チーム全体でオペレーションやセールス、マーケティングなどの主要な分野にも目を向けるようにしている。

開発チームは開発スケジュールを把握し、正式な発売前にデモや社内でのユーザビリティテストを実施する。製品開発のサイクルは、機能の規模や開発の複雑さによって大きく異なる。今回追加した新しいバウチャーのような大規模な機能については、通常よりも大人数のチームで開発を進めた。

バウチャーは既存の製品とも密接に統合されていなければならない。そのため複数の開発チームを「タスクフォース」にまとめ、ミッションを達成する必要があった。チームは夜通し作業を続け、開発には週末も含めて6週間を要した。

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Justin Lee氏は「ShopBack」における製品開発の指針として、OKR(目標管理)の力を強調している。OKRはトップダウンの優先事項とボトムアップの問題を統合するための素晴らしい方法だと言う。この手法を採用することで、新機能や製品の改善、成功の定義の仕方のほか、効果を発揮するための変更の目標など、目の前の何に重点すべきかを明確にできる。

3.「ShopBack」の今後の展開

「ShopBack」は現状のままでは終わらない。不確実性の高い時代において、消費者の意見をもとに変更を加えることには、一定のリスクも伴う。だからこそ「ShopBack」のチームは、ユーザーからのフィードバックを細かく分析しているのである。

データには注意が必要である。正しく分析や特定がされれば、メトリクスはきっと素晴らしい洞察をもたらすだろう。だがやりすぎてしまうと、「分析麻痺」のような問題に陥ってしまう。

そこで「ShopBack」では、新たに開始された機能に対する顧客の反応を追跡するためのダッシュボードに加え、ユーザーから直接意見も拾っている。Justin Lee氏は「新型コロナは当社の努力を妨げるものではない。プロダクトマネージャーとデザイナーは、ユーザーから直接フィードバックを募るために、懸命に行動している」という。ユーザーリサーチチームは、フィードバックを収集するために電子メールのアンケートも実施している。

シンガポールを含むいくつかのローカルマーケットでは、「ShopBack」はコミュニティグループを作成した。ローカルチームが直接顧客と関わり、フィードバックを収集できる体制を整えている。Candice Ong氏は「ユーザーからのフィードバックは、ユーザーの痛みのポイントを理解し、解決すべき問題を特定するのに役立つため、私たちにとって非常に重要なものである」と強調した。

翻訳元:https://e27.co/how-shopback-customers-help-drive-the-companys-product-development-journey-20200910/

記事パートナー
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執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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