インドがどのようにして数億人のインターネット接続を実現したか

インドのネットインフラの成長と変革、そしてそれに伴う数億人の人々の生活の変化について見ていく。
IoT 教育 インド

シータルは家の外の木で作った椅子に座っていた。ワンルームの小さな家のドアは開いていた。そこから母親が「お昼よ」と叫ぶのが聞こえた。しかしシータルは動かない。時折微笑んだり、怒ったりすることもあったが、夢を見ていたわけではない。彼女はビデオアプリでコメディービデオを見ていたのだ。シータルはインドの大都市のいずれかではなく、首都から遠く離れた村落に住んでいる。

シータルの例は特別なものではない。彼女は、インドのインターネット人口を形成する4億5,100万人の月間アクティブユーザーの一人である。そして、この数は増え続けている。実際、インドは世界のインターネット人口の12%以上を占めているのだ。

インドのインターネットトランスフォーメーション

インターネットは、独立国としての70年の歴史の中でトイレよりも早くインド各地に到達した。これにより、「次の10億人」と呼ばれる新しい消費者層が誕生した。この人口にサービスを提供しているのは、スタートアップ企業やレガシー企業によって生み出されたサービスや製品の数々である。

インドの各地でこのようにコネクティビティが急増したのは何が原因だろうか?その答えは、世界で最も裕福な男性の一人であるMukesh Ambaniの深い懐にある。

Ambaniは一度のストライキを通して、インターネットのデータ料金を安くすることで、貧乏人も金持ちも同じ土俵に立つことを可能にした。これを実現したのが、彼の会社である「リライアンス・ジオ」(Reliance Jio)の提案である。ウォールストリートジャーナルのレポートによると、Ambaniは350億ドル以上を投じて、全国で4Gネットワークを立ち上げた。

リライアンス・ジオは、データの安さだけでなく、インド人が最も利用しているアプリであるWhatsAppとFacebookの2つのアプリを搭載した4G技術をベースにした携帯電話をプレゼントした。さらに締めくくりとして、これらの携帯電話にWiFiを走らせた。約7,000万台のジオフォーンが約2年で販売された。

同社の製品と価格設定は、大きく他の通信事業者に影響を与え、AirtelやVodaphoneのようなネットワークプロバイダを押して生き残るために、それぞれのインターネット料金を引き下げることになった。またこれらの企業は、特定の地域でのみ4Gプランを展開していたが、それに対してリライアンス・ジオは、20万以上の村と1万8,000の都市で 4Gサービスを提供することで、それらの企業に勝利した。これは、20万のセルタワーと 15万マイルの光ケーブルによって達成された。

すべてのインドの通信事業者は最終的にデータ料金を引き下げ、多くのパッケージを導入したが、料金の低下により、いくつかの企業は閉鎖を余儀なくされた。ジオが登場した当時、市場には約10社のプレーヤーが参入していたが、現在ではわずか4社となっている。

インターネット新人口

この新しいインフラが整備されたことで、インターネットの普及率は国中で爆発的に上昇した。都市部のエリートが享受した高速で安価なインターネットの最初の爆発的な普及は、今ではゆっくりと農村部に広がっている。現在、高速ネットワークは約3億5,500万人のユーザーにサービスを提供している。Kantar IMRB ICUBEのレポートによると、インドの農村部には2億5,100万人のインターネットユーザーがおり、インドのビハール州とオルリサ州が過去2年間で最も高い伸びを示している。

最近のPwCの調査によると、インドのインターネット人口の大幅な増加に基づいて、インターネットユーザーは現在、初等教育を修了した人の数を超えている。2004年にはインターネットユーザーは2,000万人だったが、2014年には2億5,000万人にまで増加した。同時に、8年生以降の高等教育を受けた人の数は2億人となっている。従来のプラットフォームを通じた教育の成長は直線的であったが、オンライン授業を通じた教育の成長は指数関数的であった。

さらに、インドのデータ料金は世界で最も安いものとなっている。比較サイトであるcable.co.ukによると、インドの1GBのデータは、世界平均の8米ドル以上と比較して、0.26米ドル以下で確保することができる。スマートフォンのコストの低下と安いデータ価格によって、多くのインド人が自分のニーズを満たすための新しいチャネルを手に入れたと言える。今日インド人は、自国のインターネットスタートアップによって作成されたアプリを介して、学び、教え、野菜や衣類を購入し、路上ベンダーで支払い、家庭用品を配達し、ニュースを見て、ビデオを作成し、食事をオーダーしている。

最近インドの路上でよく見かける光景と言えば、QRコードをスキャンしてデジタル決済をしている人たちだ。未来はここにあり、そしてそれは、まだ始まったばかりだ。

言語問題

このように大きな未来が期待されるインドでは、言語の問題を解決しなければならない。13億人の人口のうち、英語を話し、理解できるインド人はごく一部に過ぎない。英語を話すインドのインターネットユーザーは、仕事、クラシファイド、Eコマース、教育など、基本的にすべてのものにアクセスすることができる。一方で、英語を話さないユーザーにとっては、娯楽以外のインターネット製品の質がひどく不安定である。

私たちはこの問題を解決するために「Lokal」を作っている。Lokalは創業18ヶ月のスタートアップで、9億人のインドの非英語圏ユーザーにローカルニュース、クラシファイド、そして日々進化するより有意義なユースケースを提供するための製品を開発している。私たちは最近、Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加し、シードファンディングのラウンドを締めくくった。インドの成長物語において非常に重要なものになるであろう来たる数年間にワクワクしており、インドのインターネットの次の章で役割を果たすのが待ち遠しい。

JANI PASHA

「Lokal」のCo-founder / CEO

Jani Pashaは、インドの9億人の非英語圏の人々に向けたハイパーローカライズされたニュースプラットフォームである「Lokal」の共同設立者でありCEO。同社はY Combinatorの支援を受け、開発を行なっている。


翻訳元:HOW INDIA TRANSFORMED INTERNET CONNECTIVITY FOR HUNDREDS OF MILLIONS

‍表題画像:Photo by Joshua Woroniecki on Unsplash (改変して使用)

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執筆者
武田彩花 / Ayaka Takeda
Contents Writer
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