【偽装防止】ブロックチェーンがハラール食品の認証に活用される理由とは?

イスラム教(ムスリム)の戒律によって食べることが許された食べ物、「ハラルフード」の認証を巡って、食品詐称などの問題が相次いでいる。食品のトレーサビリティーを確保するうえで現在注目されているブロックチェーン技術やスタートアップの詳細を紹介する。
ブロックチェーン 食品 飲食

2020年にマレーシアで発生したハラール食品に関する問題は、同国のイスラム教徒を激怒させてしまった。マレーシアの全国紙は、牛肉がハラルと偽って表示されていただけでなく、肉が牛肉だけでない可能性もあることを明らかにした。

この問題は、おそらくは氷山の一角に過ぎないだろう。今後はより多くの食品問題が世界中で発覚する可能性も高い。

  

  

偽ハラール食肉の正体

マレーシアをはじめ、世界のイスラム教諸国は、一般的に食肉を海外から輸入している。マレーシアのイスラム開発局は、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、インド、日本、ニュージーランド、パキスタン、南アフリカ、米国の食肉加工工場にハラール認証を与えて、認証を受けた食肉を輸入している。

今回の問題で発覚した偽ハラール肉は、コロンビア、中国、ウクライナなどの国から輸入された。そして、偽装されたハラールのロゴがついた包装が施されていたという。販売業者は密輸業者と手を組み、検疫をパスしていた。さらに、馬肉やカンガルー肉、あるいは汚染された低品質の牛肉や病気にかかった牛肉が、ハラールのロゴが入った高品質の食肉製品として再パッケージされていたという。

今回の問題は、簡単に言えば、偽造のデザイナーズブランドと同じようなものである。ハラルフード詐欺に関しては、40年ほど前から発生していると指摘する人もいる。

  

  

食品不正に対抗する、新たなテクノロジー

食品不正問題は、世界的に見ても新しくはない。中国や米国などの国々は、以前にも同様の問題に直面していた。

食品詐欺は、私たちが農家や生産者から直接食品を購入しなくなり、食品サプライチェーンに関与するプレーヤーが増えたことが原因の一つと考えられる。私たちが食品を消費するまでには、少なくとも6つの関係者が食品サプライチェーンに関与していると推定されている。農家、食品生産、食品加工・包装、貯蔵、卸売流通、そして最後にスーパーマーケットなどの販売業者である。

そこで現在、食品詐欺に対抗する技術として注目を集めているのがブロックチェーンだ。これはビットコインに使用されている技術としても広く知られている。

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ブロックチェーンは、基本的には多くの当事者に分散された分散型台帳であり、暗号技術で保護されたすべての取引を記録する。データが1つの中央システムによって保存されるのではなく、複数の当事者にまたがって保存されるため、ハッカーがデータを変更することができないメリットがある。

ブロックチェーンを使用することで、食品業界では、様々な食品の出所を追跡できるようになる。そのため偽のラベルを使用したとしても、もともとの生産地や生産状態すれば、認証が取れるようになるだろう。

  

  

ハラール市場に参入するグローバルスタートアップ

過去にはトレーサビリティの確立によって、労働条件が改善され、人身売買が激減した事例もある。かつて数々の有名食品ブランドは、自社の製品が極めて劣悪な労働条件の下で作られたものであると社会に広まった際に、消費者から大きな反発をうけていた。

そして現在では、ハラール市場に参入するグローバルスタートアップも増えつつある。2018年に事業をスタートしたスタートアップ「OneAgrix」は、食品詐欺の問題の解決に向けたソリューションを提供している。彼らは、ブロックチェーン技術と食品のDNAトレースを使用して、ハラール食品、農産物、栄養補助食品のマーケットプレイスを展開している。

CEO兼創業者のDiana Sabrain氏は、マレーシアの食肉スキャンダルが発覚するかなり前から、食品のトレーサビリティとハラールの問題を指摘していた。「アグリフード分野は、まだまだ先進技術を利用できていない分野の一つである」(Diana Sabrain氏)。

同社は世界中の多くのハラール認証機関と協力して、食品のハラール認証の信憑性を確認するとともに、製品が豚肉やアルコールなどの非ハラール含有物に汚染されていないことを確認するための試験所を設置している。

OneAgrixの創業者たちが特に工夫したのは、スタートアップを立ち上げるタイミングだった。Sabrain氏は以前「Halalop」とのインタビューで、3年前は今のようにテクノロジーが利用できる時代ではなかったと語った。そのためすぐには市場に進出せずに、人脈を作ったり、どの技術を統合するかを調べたりしながら、着実にプラットフォームを構築していたという。

調査会社「Dinar Standard」の報告書「世界のイスラム経済の現状」によると、世界のハラール食品の市場規模は、2019年には19億人のイスラム教徒たちによって、1兆1700億米ドルの支出にまで膨らむと予想している。

今回のスキャンダルから学ぶべきことは、マレーシアは食品サプライチェーン、特にハラール食品分野でブロックチェーンを利用する時期が来ているということだろう。市場は十分な規模であるため、他のスタートアップの参入も多いに期待したい。

  

  

翻訳元:https://e27.co/how-blockchain-can-help-combat-ongoing-fraud-in-the-halal-food-industry-in-sea-20210105/

記事パートナー
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執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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